↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つき英雄と嘘の妹 ~リメイク版~  作者: 野良犬タロ
プロテア編
56/72

#55 激励


~バンズ カザ~


「ワット殿もウルド殿とパーティーを組んだことが?」

「そうなんッスよ! でもあいつ、俺の前で力隠してて! 斥候(スカウト)だからって隠れてチマチマ攻撃するだけでぇ!」

「あの時は上昇(ライズ)や魔法が使えるなんて夢にも思わなかったよね~♪」

「そうそう! あいつ、出来るんならちゃんとやれって思ったよ!」

 ギルド案内される道中、ワット殿とリィナ殿の間に挟まれながら世間話のようにウルド殿の話を聞いた。

 正体を隠すために自分の力をあまり使わずに仕事をしていた事ももちろん気になったが、何より彼らの距離感だ。

 世界を救い、町を救った英雄であったにも関わらず、ワット殿たちが話す彼に対する話はそんなものを微塵にも感じさせず、ただの何気ない友人との日常を話すような感じだった。

 よほど彼はこの町の住人達に親しまれていたんだろう。



「あ、ココっす! 冒険者ギルド!」



 ワット殿が足を止めると少し大きな建物に出た。

 それを見て目的地に着いたのが一目瞭然だった。

「ここが冒険ギルドか・・・。」

 王都の警邏で見た事はあったが、何やら新鮮な感覚だった。

 外で見たことがあるだけで入った事はなかった。

 その場所にこれから入るとなるとなんだか奇妙な気分だからだ。

「ほら、見とれてないで早く入りますよ。」

「!!」

 エレノアは言葉で私を急かしながら先にギルドに向かって歩を進める。

「う、うむ。」

 何とか落ち着き払ってギルドへ歩き出す。

 エレノアが手慣れた様子でギルドのドアを開けるとコロンコロンと小さくも音のあるドアベルの音と共に扉が開かれる。

 ギルドの中にはいつもテーブルが並んでいた。

 そのテーブルに座っている者たちは皆、あまり高価そうなものではないが鎧やコートをつけており、各々で剣や弓、槍など様々な武器を背中や腰に装備していた。

 おそらくは皆冒険者なんだろう。



「失礼いたします。」

「「「「!!」」」」



 エレノアがメガネに指を添えて一声あげると、ギルドの冒険者たちはこぞって視線を集める。

「ヘイヘイヘーイ! 見ない顔だねぇ! あんた新しい冒険者か何か?」

 露出が多めの弓を背負った女が一人、エレノアに絡むように目の前に歩いてきた。

「・・・って言うわけでもなさそうだけど、ふーん??」

 女はエレノアを舐めるように下から上を見渡して観察した後、私も少し見てから視線をエレノアに戻す。

「偉いとこの騎士様?」

「王都プロテアより参りました。王属近衛騎士団第四師団のものです。」

「ふーん、『王属近衛騎士団』・・・まさか実物拝めるとはね。」

 女は目を細めて鋭くエレノアを見定める。

「何か?」

「あーいや別にぃ? で? そんなお偉い騎士様達がこんなギルドになんの用?」

「所用あってしばらくこちらの町に滞在させていただきますので、挨拶に回っていたところです。同様の用件でギルド長にも一声挨拶をしようと思っていました。」

「ふーん・・・で、あんた達は?」

 女はワット殿達に視線を向ける。

「なぁに言ってやがんだ! 俺らはこの人たち案内してたんだよ!」

「いや、道案内してたのほぼ全部私だし、あんたとリィナ、団長さんと駄弁ってただけじゃん。」

「シーッ!! ネカネちゃんシーッ!!」

「ふーん・・・。」

 女はネカネ殿と私とワット殿達を順番に見る。

 先程から妙に念入りな観察をしているようだ。

「うん、まぁワットがそこまで心許してんなら大丈夫かもね♪」

「ルッカ!! あんたまで!!」

 私達への警戒を解くルッカと呼ばれた女にネカネ殿は食って掛かる。

「だぁいじょうぶだって! ワットバカだけど、人を見る目はあるからね♪」

「おぉい! お前までバカ呼ばわりかよ!!」

「「だってバカじゃん!」」

「二人で言うなッ!! 泣くぞッ!?」

「あの・・・。」

「ああ! 受付ならあっち!」

 エレノアが割り込むように聞くとルッカ殿は軽返事で親指を使い大部屋の奥を指差す。

「!」

 するとそこに受付らしきカウンターがあり、女性が一人腰掛けていた。

「ありがとうございます。」

「ん。」

 ルッカ殿は先程と同じ軽返事で手をひらひらさせながら、自分の席に戻ろうと踵を返す。

「おいルッカ、いいのか?」

「何が?」

 ワット殿が何故か急に引き留める。

「ああ!」

 リィナ殿も何かを納得したように手をポンと叩く。

「そういやいっつもレレからかってんのにやけにすんなりどっか行くじゃん!」

「それはもうやった!」

「ああ・・・。」

「なる。」

 ルッカ殿が軽く答えるとワット殿とリィナ殿は同時に納得する。



「レレ・・・?」



「?」

 突如エレノアが一声上げる。

「どうした? エレノア。」

「い、いえ、行きましょう。」

「う、うむ・・・。」

 気になるがこれ以上脱線してもしかたないので指示された通りの場所に行き、受付のカウンターの前に立つ。

「いらっしゃいませ!」

 受付カウンターの女は愛想よく私たちに挨拶をする。



「カザ冒険者ギルドへようこ・・・そ?」

 ギルドの受付はなぜかエレノアを見て目を丸くする。



「ハァ・・・。」

 エレノアは何故か私の隣でため息をつく。

「エレノア先輩!!?」

 受付の女性は声を上げて立ち上がり、エレノアと視線を合わせて凝視する。

「やっぱり此処の職員、あなただったのね。まさか此処に移って来てるとは思わなかったわ。」

 エレノアはいつもの口調とは少し砕けた感じの話し方でレレと言う受付の女性に呆れ気味に言葉を返す。

「はい!! カザでずっとギルドの仕事をしてみたいって思ってて、夢叶なったんですよ!!」

「ってことはカウルさんも此処で働いてるの?」

「そうです! ギルド長やってます! ま、まぁ、事務員は私だけですけど・・・。」

 レレ殿は楽しそうに自らの身の上話をする。

「先輩はどうしてここに来てるんですか? 王宮の事務職に抜擢されたって聞きましたけど。」

「あぁ・・・んッ、ん。」

 レレ殿が聞くと、エレノアは苦笑いを浮かべながら咳払いをする。

「あれから騎士団の補佐官に抜擢されてね。」

「騎士団の補佐官!!? 大出世じゃないですかッ!!」

「まぁそうだけど・・・いろいろ大変よ?」

「それでもすごいですよ!!」

「あぁ、あはは・・・。」

 目をキラキラとさせるレレ殿にエレノアは乾いた笑いを漏らす。

「まぁ今回はカザの警備を王様に任命されて、カザの警備で私はその付き添い。」

「え・・・? そ、それって・・・!」

 レレ殿は目を丸くする。

「そう、確か冒険者のア・・・ウルドさんだったっけ? その人が王様に直に頼んだらしいの。」

「そっか・・・。」

 途端にレレ殿は無表情になり、片手を口元に当てて視線を逸らす。

「あいつ・・・元気にやってるんだ。」

「レレ?」

「あぁいやッ!! なんでもありませんッ!!」

 エレノアが聞くと何故かレレ殿は慌てて声を荒げる。

「それよりこちらは?」

「ええ。騎士団の団長で私の上司のバンズ団長。」

「はい! カザで冒険者ギルドの受付をやらせてもらっています、レレといいます! 先輩がお世話になっております!」

 レレ殿は、私に深々と何度もお辞儀をする。

「レ、レレ殿か・・・。」

 私は一歩前に出る。

「エレノアと知り合いのようだな・・・。」

「はい!! 王都の冒険者ギルドで一緒に働いてたんです! 新人だった頃にいろいろ教えてもらえました!」

 愛想よく私に笑顔を向けてくるレレ殿。

「そ、そうか。早速で悪いのだが・・・。」

「ハイ! どのようなご用件でしょう!」

「・・・ッ。」

 私は生唾を飲み、両手でレレ殿の手を取り・・・。



「結婚してくれ。」



「え・・・?」

 私の一言にレレ殿はポカンとする。

「え”?」

 それを見ていたエレノアもギョッとする。



「「「「ええええええ!!!!???」」」」



 ワット殿達他、周囲の冒険者たちも私たちを見ていたようで一斉に声を上げた。

 だが、私にはそんなものは関係ない。

「あ、あの、えと・・・!」

 突然の求婚に驚いたのだろう。

 だがその困った顔も、可愛らしく、美しかった!



~レイド 道中~


「・・・ハァ。」

 さっきの冒険者の連れ名前はメロだったか?

 そいつと一緒に子供たちを馬車に乗せたまま、俺は物思いに耽る。

 というか考え込むことがあった。

 さっきの冒険者連中のルタとか言う女に応急処置受けていた時だった―――



―――「ねぇ。」

「あ?」

 ルタは俺の腕に包帯を巻きながら声を掛けて来た。

「思ったんだけどさぁ。」

「なんだよ?」

「『この馬車を襲撃してきた敵を見かけて助けに来た』って言ってたけどさ・・・。」

「あ、あぁそうだよ。」

「でもさ?」

「?」

 一瞬だが、ルタの口の広角が上がる。



「それ、タイミングよすぎない?」



「ッ!!」

「もしかしてさぁその襲ってきた敵ってさ・・・。」

 一気に血の気が引く。



「あなたが連れてきたんじゃないかな?」



「・・・!」

 汗が一筋、頬を伝って流れた。

「そんなわけ

「なぁんてウソウソ♪」

「痛ッ!!」

 包帯を巻いた腕を軽く叩かれるが傷口から痛みがビリビリと腕を駆け巡った!

「助けてくれた恩人に邪推なんてしないしない♪」

 そう言いながらルタはスッと立ち上がる。

「おい、どうした?」

「メロにか・せ・い♪」

 懐からロッド状の小さな杖を出し、ウインクしながら教えてくるルタ。

「あ、ああ・・・。」

 考えてみりゃ当然、あんな小さな見習い同然の女の子にあんな奴らの相手させたら危険だ。

「行ってきま~す♪」

 ルタは馬車から飛び出して走っていく。

「・・・。」



 何故かその姿が楽しげに見えた―――



―――「・・・。」

 ルタの言っていた事はズ(・)バ(・)リ(・)当(・)た(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)。



 そう、すべての元凶は俺だ。



 メロのやつがこんな人形みたいになって、それでウルド達が仲間内で仲違いしてしまったのも、俺が原因だ。

 意気揚々とエルマの街を襲った友人たちを討伐しにギルドから飛び出した時だ―――



「くそッ!!」

 ただでさえ一体でも戦闘力が馬鹿みたいに強いのに、それが何十体も街を襲っていた。

「ギャアアァッ!!」

「やめてぇぇッ!!!」

 町の人たちを守ろうと必死に戦いはしたが全然歯が立たず、町中が阿鼻叫喚の地獄に変わっていた。

「助けッ、うわぁッ!!」

「グゥゥ・・・!」

「ッ!!」

 住人の男が右から声をかけるが、突如降ってきた獣人に押さえつけられて捕まってしまう!

「おい、今助けッ・・・!」

「グゥッ!!」

「ッ!!?」

 獣人がこっちを見る!

「グウウゥゥ・・・!」

「・・・!」

 獣人は俺たちを睨んでいた・・・!

 その眼からは『邪魔すれば分かってるだろうな?』と言う意思がありありと伝わってきた!



「グアアアァァッ!!」

「助けてぇぇぇぇッ!!! あガッ!!」

 助けを求めて来た男の脳天に斧が無慈悲に振り下ろされた!



「たず、げッ! がぁッ! あぐッ!」

「うッ・・・!」

 惨たらしく殺される男からつい視線を逸らす!

「おいッ!」

 相棒のウィッツが腕を掴んで声をかける!

「この町はもうダメだッ! 逃げるぞッ!」

「あ、ああ!」

 そうだ!

 いくら町守れば特別報酬が出るとは言っても死んだら元も子もない!

 仕方無いか・・・!

「くそぉッ!」

 ウィッツと一緒に走って町の外を目指して逃げる!



「ハァ・・・ハァ・・・!」

「ハァ・・・ハァ・・・!」

 町を出てしばらく走るが・・・!

「ガァァウアァァッ!!」

「くそッ・・・!」

 奴ら、想像以上にしつこいし全然距離が離れない!

 しかも段々追い付いてきてる、このままだと追い付かれるッ!

 どうすりゃ・・・!



「チクショォッ!」

 ウィッツがボウガンの矢を放った!

 矢は三体の獣人の内の先頭の一体に飛んでいく!

 だが・・・。



「グゥッ!」

 獣人は横にずれて回避した!



 やっぱり下手に戦って勝てる相手じゃ

「グァァッ!!」

「!!?」

 ウィッツに一体が飛び掛かるとウィッツが構えていたボウガンに手を掛ける!

「う、うわぁッ!!」

 更には腕を掴まれ、引きずり込まれる様に取り押さえられる!!

「ウィッツッ!!」

 相棒の名を叫ぶが・・・!



「グガッ、ゲッ、やめ、あぐ・・・!」

「ッ!!」

 相棒は頭を鉈や斧で殴り潰されていた!



「・・・!」

 本能で分かる!

 ウィッツはもう助からない!

 そして助けに入れば俺も死ぬッ!

「うわぁぁぁぁッ!!」

 情けない声をあげて逃げた!

「ひぃぃぃッ!!」

 今にも泣きそうな気持ちを押さえ、後ろも気にせずただ奴らから逃れたい一心で走り続けた!

「!!!」

 目の前に何か・・・あれは、馬車!?

「おい!! なんだお前!!」

 突然現れた俺に驚いて馬車の騎手の兵士っぽい男ががなり立てる!

 だが関係ない!!

「な!!?」

 騎手の男が視線を上げる!

「!!」

 その視線の先に何があるのかもう分かってる!!

 その瞬時の状況理解が更に恐怖を駆り立て、俺は叫んだ!!

 

 

「助けてくれえええぇッ!!」



ーーー俺は最低な男だ。


 街の人を助けもせず、無惨に殺されていく相棒の命も救えず、若い冒険者見習いにいらぬ罪を着せてしまった上で生き残ってしまっている。

「ハァ・・・。」

 思わずため息が出る。

 もうやめよう冒険者なんて。

 心底わかった。

 俺には冒険者をやる実力も度胸も器もない。

 こんな俺が冒険者をやるなんて無理だ。

「・・・ん?」

 前方から何やら高速でこちらに向かって走ってくる奴らがいた。

 よーく目を凝らしてみてみると・・・。



「ゴブリンライダー・・・!」



 矮小狼(ドワフウルフ)に乗って槍を持っているゴブリンライダー二体がこちらに向かって走ってきていた!!

「くそッ!!」

 町の外を歩いていたらいずれ出くわすだろうと思っちゃいたがめんどくせぇ・・・!

 俺はすぐ様馬車の先頭から降りて背中からロングソードを抜いて構える!

「ギギィッ!!」

 ゴブリンライダーが矮小狼(ドワフウルフ)の走る勢いに乗りながら槍を構えて突き出す!!



「来いやぁッ!!」

 俺は咆哮して攻撃の瞬間に備える!



 あの時の獣人たちには手も足も出なかったが、ゴブリン程度に遅れを取る俺じゃねぇ!!

 ゴブリンライダーが今にも俺に向かって槍を突き出そうとした瞬間・・・!



「氷(グラス) 剣(エペ) 放出(ホレッシ)」

「?」

 魔法の詠唱の声が聞こえた。



 だがかまわずロングソードを横に振りかぶって構え・・・!

「おらあぁッ!!」

 咆哮とともに奴らの槍の間をすり抜けて思いっきり横に剣を振るう!!

「ギギャッ!!!」

「ギャァッ!!」

 ゴブリンライダー二体の首が同時に飛んだ!

「へへ。」

 ゴブリンごときに遅れなんて



「氷(アイシクル)弾(バレット)」



「へ?」

 後ろから尚も魔法の詠唱が聞こえた瞬間だった!



「「ギギィ!!!」」

「な!!?」

 いつの間にか左右からゴブリンが飛びかかってきていた!!



「ッ!!?」

 だがちょうど見ていた俺の右側のゴブリンが氷の弾丸に当たって吹き飛ばされる!

「ギャァァッ!!」

「!!?」

 後ろの方から断末魔が聞こえるとちょうど馬車から飛び出していたメロにゴブリンが肩から胸にかけて斬られていた!



「ギギィ・・・!」

「くそッ!」



 ゴブリンたちは俺たちの馬車を囲むのように六体、草場の影から現れた!

「伏兵が隠れて狙ってやがったか!」

 さっきのゴブリンライダーは囮だったのか!

 ゴブリンは悪知恵が働くらしいがホントに質(たち)が悪い!

「チッ・・・!」

 メロと背中合わせに構えながらゴブリンたちの攻撃に備える。

「おいメロ、無理するな!」

 馬車の中にいたメロの状態にはなんとなく察しがついている。

 精神的に堪えすぎてとてもじゃないが戦える状態じゃない!

「・・・。」

「ッ!!?」

 だが、メロはすぐに俺の背後から飛び出してゴブリンに斬りかかっていく!

「ギィ!!?」

 取り囲んでいた状態から油断していたんだろう!

 ゴブリンは呆気にとられてぎょっとしていた!

「ギギャァッ!!」

 その隙にメロはゴブリンの脇腹を斬り裂く!

「ギィ・・・!」

 それを見ていたゴブリンはいきなりの不意打ちに驚いて一歩引く!

 その緩んだ隙をついてそのゴブリンは通り過ぎざまにメロに首をはねられた!

「ギギィ!! ギ・・・?」

 三体目のゴブリンはようやく状況を察して槍を構えるが、すぐに穂先の向かない側面に回り込まれて頭部を真っ二つに切り裂かれた!

「す、すげぇ・・・!」

 まだ子供なのになんて動きしやがる!

「ギギャァッ!!」

「!?」

 俺がメロに釘付けになっていた瞬間を狙ったかのようにゴブリンが一体、槍を向けて飛びかかってきた!

「チッ!」

 間一髪俺はそれを躱す!

「くそッ!」

「ギャァッ!!」

 俺も負けじと剣を振るい、ゴブリンを腹部から斬り裂いた!

「ギェィッ!!」

 残るゴブリンも近くから槍の穂先の狙いを定めて俺に突きかかるが・・・。

「舐めんなッ!!」

 俺はそれをロングソードでなぎ払って一気に距離を詰めて槍の穂先の内側の前まで詰めたあと、剣を脳天から突き刺した!!

「ふう・・・。」

 ようやく状況が落ち着いて改めて戦いを思い返す。

 メロが三体、俺が二体。

 倒した数で俺の負けだ。

「ハァ・・・。」

 全く、こんな歳はも行かない子供に負けるなんてな・・・。

 やっぱり俺は・・・。



「・・・ん?」

 二(・)体(・)と三(・)体(・)・・・?



「・・・!」

 考えた途端に俺の全身から血の気が引く!

「うわああああぁぁぁッ!!!」

「ッ!?」

 叫び声が聞こえて馬車の方を見るとその嫌な予感は当たっていた!



「ギィ・・・!」

 生き残ったゴブリンの最後の一体が馬車の馬に乗り上げて荷台の中を覗き見ていた!!


 

 まずいッ!!

 馬車の中には、無抵抗な子供たちが・・・!

「させるかッ!!」

 すぐに走るが、先ほど奴らから馬車への注意を引き剥がすために離れていたせいで距離がある!

 すぐに助けるには間に合わない!!

 だが・・・。



「ギャァァァッ!!!!」



 ゴブリンは叫び声を上げる!

 メロが背後から双剣のうちの片方の一本を背中から胸にかけて貫いたからだ!

「・・・。」

「ギ・・・。」

 メロが剣を抜くと、ゴブリンは糸の切れた人間のように馬車から落下した。

「あ・・・ありがとな・・・。」

 脅威が去った安心感で落ち着いた足取りで歩きながらメロの前まで行って礼を言う。

「メロ・・・お前すげぇんだな。」



「はは・・・あはは・・・。」

「!?」

 何故かメロは笑い出す!



「はは・・・ははは・・・。」

「!」

 よく見ると涙を流していた。

「ど、どうした・・・?」

「また殺した・・・また殺したのです・・・はは・・・はは。」

「・・・。」

 多分さっきの件だ。

 断片的に聞いただけだが、どうやらあの獣人に正気が少し残っていたみたいだった。

「な、なぁ・・・その、げ、元気出せ? な?」

 うまい言葉が見当たらない・・・。

 くそッ!

 格好悪いなぁ・・・!



「かっこいい・・・。」

「え?」

 何故か俺の思ったことと反対の言葉が不意に聞こえてくる。



「メロ姉ちゃん・・・かっこいい・・・!」

 エルマの街の子供たちの家の少年がポロっとこぼすように言葉を吐き出した!

「かっこいいよ! メロお姉ちゃん!!」

 もっと幼い女の子も同じように声を上げた。

「すごいよ! あんな化け物を倒せるなんて!!」

「すごいすごい!!」

 子供たちは大はしゃぎでメロを釣り上げるように歓声を上げる!



「かっこ・・・いい・・・?」



 メロは言葉を理解するかのように子供たちの言うことを復唱しながら顔を上げる。

「そうだよ!」

「かっこいいメロお姉ちゃん!!」

「すごいすごい!!」

 子供たちは純粋な目でメロに声援を送る!

「どうしたメロ?」

 俺は少し違和感に気づいた。

「・・・!」

 メロの眼だ!

 古い人形のくすんだガラス玉のような光を失っていた眼が光を取り戻していた!

「メロ・・・? え?」

 俺が確認する間もなくメロはすぐに立ち上がった!

「・・・ッ!」

 そして剣を両手に掲げて逆手に持ち帰るとすぐに剣を鞘に収める!

 その動きは妙に力が入っていた!

 そしてすぐに俺に視線を向け・・・。



「私・・・戻らなきゃですッ!!」



「メロ? あ!? おい!!」

 そう言うとメロはいきなり馬車から飛び出して、俺たちが馬車で向かう方向と逆の方向へ走り出した!!

「メロお姉ちゃんどうしちゃったんだろう?」

 子供たちがポカンとするが、それがなんとなく俺だけはわかる。

「多分・・・立ち直ったんだな。」

 よくわかんねぇけど、なんだか見ていた俺も清々しい気分になった。

「さ、俺らも行こう!」

 俺は再び馬車の先頭に乗って手綱を軽くしならせると馬が歩き出す。

「メロお姉ちゃんはいいの?」

 子供の一人が問いかけるが・・・。

「ああ、いいんだ!」

 俺は子供たちに目一杯の笑顔を向けて答えた。



「あいつはあいつの向かう場所を見つけたんだ!」



「向かう場所?」

 子供たちはみんな頭にハテナマークを浮かべたように首をかしげていた。

「おじちゃんはどうするの?」

「え?」

「おじちゃんはこのあとどこに行くの?」

「あ・・・。」

 子供たちから不意に嫌ぁな質問が返って来る。

「・・・。」

 正直冒険者なんて続けて行ける気なんてしない。

 だが・・・クソ親父の実家仕事を継ぐ気もない!



「・・・どうしよう。」

 結局俺は途方に暮れた。

 いやぁ、マジでカッコつかねぇ・・・。



~リメイク前との変更点~

・エレノア、元ギルド職員

理由:ちょっと存在感に欠けていたため

・メロのシーン追加

理由:メロが絶望している状態によりプロットが変わったため

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。