#44 師匠
~レレ カザ:冒険者ギルド~
「はい、紹介状、いってらっしゃい。」
「おう!」
ワットに紹介状を渡すとワットは歯を思いっきり見せながら笑いつつネカネ達の方へ振り向く。
「うっしゃぁ!! いくぞぉ!! 今日も思いっきりぶっ飛ばすッ!!」
「どうせあんたまた考えもなく突っ込むんでしょ? ちょっとは自重しなさいよ。」
「あぁ? 俺がそんなに馬鹿に見えるってのか!?」
「「うん!!」」
「同時に言うなッ!! 流石に傷つくぞ!? おぉい!!」
リィナやネカネに馬鹿にされながら嘆くワット、そんな相変わらずな三人を手を振りながら見送っているうちに三人はギルドから出ていく。
「最近妙に落ち着いてるよね~♪ レェレ♪」
「・・・。」
相変わらず変なタイミングで茶化しに来るルッカに慣れてきた自分にうんざりする。
「ハァ・・・。」
あきれ気味にため息を漏らしながらカウンターの脇の減らず口女に視線を移す。
「茶化してる暇あったらあんたも仕事行ったら?」
「あたし、『残り物には福がある派』だからね♪」
「あっそ・・・。」
どうせ私を茶化したいと思ったらテコでも動かないのがこの女というのは数年の付き合いでよく知ってる。
適当に聞き流すつもりで書類にペンを走らせる。
「やっぱウルドが旅に出てから寂しかったりする?」
「今の状況見てそんなこと言えるの?」
「だぁってさ? パッと見、無理してるみたいな感じだし。」
「あんたの思い込み。」
「そ~お? じゃ、良かった♪」
そう言ってルッカは依頼の掲示板の元へ行こうと一歩を踏み出すが止まる。
「?」
何こいつ?
「気が向いたら夜に酒場でも来な? 愚痴ぐらいは聞いたげるから♪」
吐き捨てるように言いながらルッカは掲示板へ再び歩を進めた。
「・・・。」
全く。
相変わらず、おせっかいなんだから。
けど・・・。
「ハァ・・・。」
頬杖を突きながら溜め息をつく。
ルッカの言ってることはムカつく程当たっている。
「あのバカ・・・今どうしてんだろう。」
つい愚痴が漏れた。
~メロ 邪教団アジト~
「ッ!!?」
ウルドさんが指輪を取った瞬間に感じたのです!!
魔覚で探知しなくても分かるのです・・・!
ウルドさんの魔力・・・凄いのです!!
あまりに近すぎるせいでどんなに巨大な魔力か分からないけど、今にも自分が押し出されそうな強力な力を感じるのです!!
これって一体・・・!
「ルタ、少し休んでろ。」
「もう・・・遅いよ、お兄ちゃん。」
ウルドさんがルタに言うとルタは呆れながら魔法を解くのです。
「ハァ・・・悪かったよ。」
無理をさせたことに謝ってるみたいだけどそれどころじゃないのですッ!!
「「「「お”お”ぁ”ッ!!」」」」
「ウルドさんッ!!」
炎が無くなったのを良いことにグールの群れが入り口から思いっきり押し寄せて来たのです!!
「ハッ。」
それをウルドさんは鼻で笑うと・・・。
「ッ!!?」
ウルドさんの頬に青い光の筋・・・!
もしかして・・・!
「失せろォッ!!!!」
先頭のグールを殴ったのです!!
しかも殴られたグールは思いっきり吹き飛ばされてその勢いでグールの群れが一気に押し戻されたのですッ!!
「上昇・・・!」
さっきのウルドさんが私を助けたときに見せたあの時の・・・やっぱり、見間違いじゃなかったのです!!
「雷光 剣 放出」
「え!!?」
グールの群れが怯んだ隙にウルドさんが魔法を詠唱!?
まさか・・・!
「雷獣牙襲ッ!!」
「!!?」
ウルドさんが前方に向けた剣から巨大な雷が虎のような顔になって現れて飛び出したと思ったら、通過したグールの群れを跡形もなく消し飛ばし、そこには何も残らなかったのです・・・!
「す、スゴい・・・!」
思わず声が漏れたのです・・・!
「何言ってんだ、これからだろ?」
「へ? ッ!!?」
私が呆気に取られる暇も与えずにウルドさんは飛び出していくのです!!
「オラァァッ!!」
私を背負ったままウルドさんはグールの群れに飛び込み、目にも止まらぬ速さでグールを何体も斬り刻んでいくのですッ!!
上昇を使った全力の私でもこんな芸当、不可能なのです!!
「「「う”ぁ”ぁ”ッ!!」」」
「ッ!!」
周りのグールが一気に跳びかかって来たのです!!
けど・・・!
「雷光・・・」
ウルドさんは魔法を詠唱しながら飛び上がったのです!!
アジトの大部屋の天井は、家ひとつなら簡単に入りそうなかなりの高さなのに、それでも天井ギリギリまで飛び上がったのです!!
「剣 座標 先端 爆散」
空中で敵が襲って来ない内に魔法を完成させると・・・!
「炸裂放電ッ!!!」
着地と同時にウルドさんが剣を地面に突き立てると、雷が周りに散らばるように飛んで行ってグール達を吹き飛ばしたのですッ!!
「ッ!!?」
同時に異変が起きたのです!!
「あッ!!」
ウルドさんの剣の刃が先端から根元まで粉々に砕けたのですッ!!
「う、ウルドさんッ!!」
絶対ヤバいのですこれッ!!
「あーあ、武器屋のおっちゃんには悪いことしたかな?」
「そ、そんなこと言ってる場合ですかッ!!?」
剣が無くなったらグールを斬れなくなるだけじゃないのですッ!!
さっきからウルドさん、魔法の媒体に剣を使ってたのですッ!!
だから剣が無くなったら魔法も撃てないのですッ!!
「どうするんですかッ!! 剣が無い状態で
「あ? 剣ならいくらでもあるだろ?」
「へ?」
変な事を言われて何が何だかわからない内にまたウルドさんは走り出したのですッ!!
「ちょっと!!」
思いっきりグールに向かって走り出したのです!!
剣も持たずにいくらなんでも無謀ですッ!!
「ちょっくらごめんよッ!!」
「へ?」
そう言うとウルドさんは飛び上がって・・・。
「ぉ”ぁ”ッ!!」 「あ”ぁ”ッ!!」
「通りまぁすッ!!」
「えええぇぇぇぇ!!?」
グールの頭を踏み台にしてグールの群れを跨ぐように突破したのですッ!!
「たッしッかッこの辺ッ!!!」
グールの海を足場が途切れるまで走り抜けるとウルドさんは跳んで数歩空中で走るように足をバタつかせてから着地したのです!
そして・・・。
「な? あったろ? 『剣』。」
「!!」
着地した先で剣を拾っていたのです!!
確かこの場所って・・・さっき偽アルトがゴロゴロ転がって武器スタンドにぶつかって剣をぶちまけた場所なのです!!
私、すっかり忘れてたのにウルドさん、覚えてたんですね・・・!
「雷 剣 接続」
「!」
ウルドさんは剣に手を添えるとまた魔法を詠唱し始めるのです!
すると・・・!
「雷光刃」
「ッ!!」
雷の轟音と共に剣が雷を纏い始めたのです!!
「これって・・・!」
私がカザに着く前に見たあの時の・・・!
「『エクスデュラン』なんて御大層な聖剣じゃなくて悪かったな。『閃光の剣』は、残念ながらただの剣・・・。」
「「「う”あ”ぁ”!!」」」
「!!」
ウルドさんが話してる途中にグールが数体襲い掛かってきたのです!!
だけど・・・!
「「「あ”あ”ぁ”ッ!!」」」
ウルドさんが剣を振るうとグールたちは一斉に雷の電熱で焼き切られて一斉に真っ二つになったのです!!
「俺が魔法で強化しただけの、『ただの剣』だ。」
ウルドさんが言葉を吐き捨てると同時にグール達の身体はボタボタと地面に落ちていったのです。
「ッ・・・!」
思わず涙が出てくるのです・・・!
「うッ・・・うぅッ・・・!」
あぁ・・・やっぱり・・・!
やっぱり、間違ってなかったのです・・・!
この人が・・・!
この人こそが・・・!
「う”ぅ”・・・あ”ぁ”・・・!」
「あ”ぁ”・・・お”ぉ”・・・!」
「あ!!」
グールがまた地面から大量に湧いてきたのです!!
「チッ、キリがねぇな。」
「ッ!!」
ウルドさんは上昇で跳び上がると近くにあった高い櫓の上に飛び乗ったのです!!
「あ”ぁ”・・・!」
「う”あ”ぁ”・・・!」
グールたちは櫓の下に張り付くけど登ってこれないみたいなのです・・・!
「・・・。」
「!?」
ウルドさんは目を閉じると米嚙みに剣を持った手の指を当てて集中するような恰好になったのです!
「ウルドさん・・・?」
もしかして魔覚に意識を集中してるのですか?
で、でも・・・!
「ウルドさん、魔力は部屋中に充満してるんですよ!? そんなことして何を・・・!」
「お前、あれが何の魔力か分かってるか?」
「へ?」
「恐らくあれはこの部屋中で奴に命を吹き込まれたグール共の魔力だ。」
「そ、それがなんなのですか!!」
「分からねぇか? これだけの数のグールに命を吹き込める魔力だ。 奴の魔力は相当なもんだろう。」
「だ、だから何です!!」
「魔覚に集中してみろよ。」
「え?」
何を言ってるのですか?
「いいから!」
「は、ハイです・・・!」
とりあえず意識を集中すると・・・。
「!!」
あの部屋中に魔力が充満してる状態は変わらないけど、その中にすごく濃い魔力を感じるのです!!
部屋の中心の、向かって私たちが居る部屋からちょっと離れた辺りに一つ、真っ黒い炎のような魔力を感じるのですッ!!
「これって・・・!」
「そういうことだッ!!」
ウルドさんは櫓から跳躍して跳び上がったのです!!
着地地点は・・・!
「お前だぁぁッ!!!!」
さっき強い魔力を感じた地点なのです!!
「え!?」
けどそこには特別に何か居たわけでもなく、ただグールの群れが居ただけなのです!!
「ッ!!!」
それでもウルドさんはグールを数体、雷の剣で斬り払うのです!!
すると・・・!
「え!!?」
斬り払ったグールのうち一体の女グールから何かが飛び出して宙に逃げたのです!!
「これ・・・!」
宙に浮かぶそれは赤黒い炎だったのです!!
しかもそこに目がついており、不気味に開かれた目は睨み付けるようにこっちを見ていたのです!!
もしかしてこれがウルドさん達の言ってた・・・『死吸の亡者』なのですか!?
「よぉ、待たせたな。かくれんぼは終わりだッ!!」
ウルドさんは容赦なく飛び掛かって死吸の亡者にとどめを刺
「ッ!!?」
そうとした瞬間だったのです!!
死吸の亡者の様子がおかしいのです!!
目が中心から横に亀裂が入ったかと思うとそこから口が現れて開いたのです!!
牙がいっぱいのその口は大きく開くと・・・!
「キョォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!!」
甲高く恐ろしい叫び声を上げたのです!!
「くッ!!」
流石にこれはウルドさんも予想外だったみたいで音の波動のようなものに押されて怯んだのです!!
しかも・・・!
「な、なな!!?」
「「「あ”あ”ぁ”ぁ”!!!」」」
グールが物凄い勢いで死吸の亡者に吸い寄せられるように集まっていくのです!!
グールを寄せ集めて肉の団子みたいな塊になった死吸の亡者は・・・!
「ッ!!?」
不気味な光に包まれたのです!!
「・・・?」
光が収まると・・・!
「あ・・・あぁ・・・!」
目の前の光景に目を疑うのです!!
「チッ、往生際の悪い・・・!」
ウルドさんは『それ』を見てうんざりしたように舌打ちするのです。
目の前には爛れたような汚い皮膚に覆われて、所々骨が露出していたけどそれは間違いなく・・・!
「ギシャアァァァァォォォォッ!!!!」
それは間違いなくドラゴンだったのですッ!!
「ギヤァァッ!!」
「ったく。」
ドラゴンは荒々しく声を上げながら尻尾で薙ぎ払って来るけどウルドさんは上昇で跳んで回避しながら距離を取ったのですッ!
「隠れきれないって分かってグール寄せ集めて鎧にしたってとこか。」
「ウルドさんッ!」
「なんだ?」
「私は此処に置いて行くのですッ!」
「はぁ?」
「このままだと邪魔になっちゃうのですッ! それに、グールに囲まれて無いから置いても大丈夫なのですッ!」
「・・・。」
ウルドさんは黙り込むのです。
けど私、全然変なこと言ってるわけじゃ
「断る。」
「え!!?」
なんでですかッ!
どう考えてもその方が・・・!
「言ったろ? 『お手本見せてやる』って、出来るだけ近くで見ないと損だろ?」
「そ、それは・・・!」
欲を言えばそうですけど・・・。
「心配すんな。」
そう言ってウルドさんは笑いながらドラゴンに視線を移し・・・。
「こんな奴、片手で充分だ。」
自信満々に構えたのです!!
「・・・!」
何故かその言葉が全然無謀に聞こえなかったのです。
特に理由も、どうやって戦うのかも分からないのに、凄く信じられる・・・不思議なくらい安心出来たのです!!
「ギシャアァァァァッ!!」
ドラゴンはまた襲いかかって来たのです!!
「シャァァァッ!!」
大きな口を開いて私達に噛みつこうと迫って来たのです!!
それをウルドさんは・・・!
「おらよッ!」
ドラゴンの口の上顎を横殴りに蹴り跳ばして牙の向きを無理矢理変えて捌くのですッ!!
その瞬間・・・!
「ッ!!」
ドラゴンの爪が私達に迫っていたのですッ!
完全に顔の向きを逸らされてるのに狙いが正確なのですッ!
「ほッ!」
けどそれをウルドさんは難なく反応して剣で爪とかち合わせて弾き、軌道を私達から逸らすのですッ!
「ギヤァァッ!!」
「ッ!!」
ドラゴンはまだ諦めて無かったのですッ!!
ウルドさんが着地すると同時に逸れた身体を更に回転させながらまた尻尾で凪払って来たのですッ!
「チッ!!」
舌打ちしながらウルドさんは跳んで回避
「ッ!!?」
した瞬間ですッ!!
「なッ!!?」
ドラゴンが天を仰ぎながら大きく息を吸い込むのですッ!!
何か吐いて来る気なのですッ!!
マズイマズイ、マズイですッ!!
今師匠は尻尾を跳んで躱して空中、避けられないのですッ!!
「雷光 剣 放出」
「!!?」
ウルドさん、また魔法を!!?
「ゴハァァァッ!!」
「ああッ!!」
ウルドさんが魔法を唱えきるより先にドラゴンが紫色の霧のようなブレスを吐いてきたのですッ!!
けどそこへ・・・!
「雷獣牙襲ッ!!」
ウルドさんが前方に向けた剣からまたさっきの雷の虎が解き放たれたのですッ!!
虎はドラゴンの胴体にぶつかるのですッ!!
けどドラゴンは思ったように怯まず、ブレスをやめなかったのですッ!!
このままじゃ喰らってしま
「え?」
いつの間にかブレスの射程外に私達の身体は逃げていたのですッ!!
「・・・あ!!」
背後から受ける風で気づいたのですッ!!
後ろに下がったからですッ!!
多分さっきの雷の虎ですッ!!
大砲みたいに凄い威力の雷の虎を撃った事によって来る反動で身体が後ろに吹き飛ぶのを利用してブレスの射程外に逃げたのですッ!!
ウルドさん、咄嗟に考えて・・・!
「ッ!」
ガタンと音が聞こえて音のする方を見ると、明かりのために立ててあった燭台が倒れて居たのです!!
多分ブレス攻撃の範囲にあったものです・・・!
しかもその燭台、ドロドロに溶けて形がおかしくなってたのですッ!
もしかして、ドラゴンのブレスで・・・!
「いやぁ、当たらなくて良かったなぁ。」
ウルドさん、全然ビビって無いのです。
「・・・!」
なんかこんな死と隣り合わせの場所に凄く慣れてるみたいなのですッ!
それにしても・・・。
「こいつ・・・!」
人の十倍はありそうな程デカい図体の癖に隙が無いのです。
「ッ!」
また奴は振りかぶりながら息を大きく吸い込んだのですッ!
「ガアァァァァッ!!」
ドラゴンはさっきの毒のブレスを吐きながら、突撃してきたのですッ!!
効果はさっき見せられて喰らったらヤバい物だって分かるだけに恐ろしい攻撃ですッ!!
それが迫るだけでも身体がすくみそうなものなのに・・・!
「へッ!」
ウルドさんは一切怯えた様子もなく毅然と構えるのです!!
「業火 杖 放出」
「「ッ!!?」」
声に気づいて後ろを見るとルタが魔法を詠唱していたのです!!
杖の先からは赤い光が渦巻いてて今にも撃つ準備が整えて居たのですッ!!
「ナイスだルタッ!!」
「えッ!!?」
それに気づくとウルドさんはあろうことか、前に走りだすのですッ!!
あのヤバいブレスに飛び込むなんていくらなんでも・・・!
「爆炎榴弾ッ!!」
「ッ!!?」
ルタが放った大型球体の炎が私達の頭上を通過すると、追い越して行き・・・!
「ギギッ!? ギギャアアアァァァァッ!!!」
目の前に、まるで隕石でも落ちるかのように斜め気味に落ちていくとブレスを吐いていたドラゴンの口に入り、爆発したのですッ!!
「ギィヤァァァァッ!!」
口の中に爆発物を喰わされたドラゴンは炎を吐けなくなるほどに苦しみながらのたうち回るのですッ!!
「オラお留守だぜッ!!?」
こうなることを分かってたかのようにウルドさんは懐に飛び込み、ドラゴンの喉元に剣を突き立てるのですッ!!
「雷光 剣 座標 先端 噴射」
そのまま魔法を詠唱すると、ただでさえ雷を纏って光っている剣が更に光って・・・!
「雷神掌撃ッ!!」
途轍もない雷の爆発がドラゴンの首元を突き抜けて噴射したのですッ!!
「ギガ・・・ガ・・・!」
ドラゴンは断末魔を上げる暇もなく首を落とされたのです!!
「え!?」
そんな光景を見る間もなく、何故かウルドさんが私を背負ったまま後ろに跳んだのですッ!!
「うわッ!!」
何故かドラゴンが振るってきた爪が私たちの前を通過したのですッ!!
何が起こってるのか分からずに目の前の光景に視線を戻すと・・・!
「・・・!」
なんと、ドラゴンが首を失ったまま上体を起こして仁王立ちしていたのです!!
「なんでですか!? 首を落としたのに・・・!」
「別におかしくねぇだろ。」
「え!?」
ウルドさんの言葉に呆気に取られる間もなくドラゴンが振り下ろした爪をウルドさんは剣で受け止めるのです!!
「こいつはドラゴンの姿をしただけの『死体の鎧』。」
「ッ!!?」
すかさずドラゴンが体をずらして振るってきた尻尾の攻撃に、ウルドさんは爪を弾き飛ばして跳んで回避するのです!!
「本体はあの黒い火の玉だ。首を落とされようが動けたってなんら不思議じゃない。」
「?」
ウルドさんはゆっくり前へ歩きだしたのです!
頭を落とされて尚も立っている不気味なドラゴンに向かって、まるで散歩でもするかのように・・・!
「ッ!!」
ドラゴンの爪がまた襲い掛かってくるのです!!
「けど・・・。」
ウルドさんは上体をずらして回避すると同時に振るってきた爪の向きと逆向きに雷の剣を振ったのですッ!!
ドラゴンの腕に刃が当たると雷の電熱に焼き切れてあっさりと腕が斬り落とされたのですッ!!
「奴の切り札は頭部から吐き出される『毒ブレス』。」
ドラゴンが諦めまいともう一本の腕で引き裂こうとしてくるけど同じようにウルドさんは避け様に腕を斬り落としたのですッ!!
「それがない今となっちゃ・・・。」
「ッ!!?」
両腕を失ったドラゴンは最後の手段とばかりに体を横回転させて尻尾で薙ぎ払って来たのですッ!
けど、ウルドさんが振り上げ気味に雷の剣の刃を当てると、あっさりと斬り飛ばされて宙を舞ったのです!!
「もうこいつは終わりだよ。」
ゆっくり歩きながらドラゴンの前に立つとウルドさんはドラゴンの胸元に剣を突き立て・・・!
「雷光 剣 座標 先端 噴射」
先ほどと同じ魔法を唱えて・・・!
「雷神掌撃ッ!!」
雷の爆撃を放ったのですッ!!
すると・・・!
「ギキィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッ!!!!!!!!!!」
貫かれた雷の爆撃に巻き込まれていた黒い火の玉、死吸の亡者が雷の光に包まれて断末魔を上げながら塵のように消えていったのです・・・!
「・・・!」
本体を失ったせいなのか、ドラゴンの姿をした死体の身体は崩れ落ちて、ぐちゃぐちゃになって、元が何であったかも分からないような汚い肉の塊になっていたのです!!
「終わったか・・・ぐっ、ぅ・・・!」
「ッ!!? ウルドさん!?」
死吸の亡者を倒したことで気が抜けたのか、ウルドさんは少し崩れて膝を着くのです!!
「だ、大丈夫ですか!?」
「ああ、しばらくやってないことだから疲れただけだよ・・・ハァ・・・。」
「・・・。」
心配をかけないように私に声を掛けながら息を吐くウルドさんを見ながら改めて思ったのです。
やっぱり・・・この人が私の探していた・・・!
~和装の男 プロテア西 荒れ地~
さっきの兄ちゃんに教えてもろた通り、僕は西の門からプロテアを出て、巨大な折り鶴に乗って空を飛んでいた。
これは式神の力を応用した僕専用の乗り物、作り方は内緒や。
「にしても・・・。」
胡座をかいたまま両袖に腕を突っ込みながら腕を組み、物思いに老ける。
確か西の門から出る言うとったけど、この先には町も何もない。
門の近くの人が言うとったな。
聞く限りやと誘拐した側は誘拐した娘を出汁に使うて連れに何か用があるっていうとこやろう。
けど、待ち合わせの場所を指定したんやったら何か遠目からでも目につくような分かりやすい場所のはず・・・。
けど上空から探してもそれらしき物は一向に見えへん。
「・・・こらしくったかなぁ?」
もうちょっと情報収集してから行くべきやったかな?
宛もなく飛んでると・・・。
「んん?」
骨で作られたかのような禍々しい建物が前方に現れよった!
「アレかな?」
思わず顔がにやけてもうた。
~ウルド 邪教団アジト~
「さて、と・・・。」
とりあえずしんどくなったからメロは降ろす。
「ウルドさん、あの・・・!」
「後にしてくれ。」
メロの言いたいことは察するが今はそれよりもやることがある。
「・・・。」
さっき立て籠っていた小部屋の方角を見ると・・・。
「・・・あッ!」
相手も俺に気づく。
偽アルトだ。
「・・・。」
「ヒィィィッ!!!」
俺が黙ったまま歩を進めて近づくと怯えながら頭を抱えながら縮まり込んで防御姿勢を取る。
小部屋から出てきてるあたり、現場の一部始終を見ていたんだろう。
で、目の前に居る俺が何者なのか、この様を見れば理解してるのは一目瞭然だ。
「ご、ごごご、ごめんなさいぃッ! 申し訳ございませぇんッ!! あなた様が本物だったなんて露知らず、で、でで、出来心だったんですぅッ!! 許してくださいぃッ!!」
「・・・。」
目の前に立つと偽アルトはその姿勢のまま手を地面について土下座姿勢になって謝りまくる。
まぁ、そりゃそうだよな。
モノマネ芸人にとって一番怖いのは『御本人様との初顔合わせ』って相場は決まってるからな。
「・・・。」
「ヒィッ!!」
目の前で剣を突き立てると音にビビったか、偽アルトはビクッと身体を震わせる。
「・・・。」
別に剣でこいつをどうこうしようってわけじゃない。
その証拠に俺は突き立てた剣を杖代わりにして腰を下ろし、座り込む。
「顔上げろ。」
「ごめんなさいぃぃひぃぃッ!!」
「・・・。」
偽アルトは必死に謝るのに全力で顔を上げる気配はない。
ったく・・・。
「別に怒ってねぇよ。」
「へ?」
俺の言葉が意外だったか、偽アルトは顔を上げてポカンと呆気に取られた顔を俺に晒す。
「俺さ、『英雄』とか呼ばれるの嫌いだったんだ。柄でもないし、大したこともできなかったのに周りが無責任に囃し立ててさ・・・だからあんたが勝手に俺の名前使おうが、騒ぎ散らそうが、どうでも良かった。」
「えぇっと・・・?」
怒ってない俺に偽アルトは困惑混じりに苦笑いを浮かべる。
「けどな?」
「け、けど?」
「もう懲りただろ?」
「え??」
俺の言葉の意味を理解できてないみたいで、偽アルトはまたもポカンと間抜けな表情を見せる。
ったく、能天気な奴だな。
「変な女に捕まったり、拷問された挙げ句酷い目に逢わされたり、首突っ込んだ先で戦えもしないのに、あんな化け物に襲われたり・・・この先同じことやってたら何度も同じ目に遭うぞ? 命がいくつあっても足んねぇだろ。」
「・・・!」
分かりやすく説明してやると、偽アルトはサングラスで此方からは見えにくい目をカッと開く。
ようやく自分の間抜けさに気づいたみたいだ。
「まぁ真似される身としては、無関係・・・って訳でもないからさ? やっぱそれで人死にが出るのは、俺としても後味悪いし・・・。」
苦笑いを浮かべつつ視線を逸らして言いながら自分が馬鹿に思えてくる。
自分の名を語りながら好き勝手してた奴相手にこんな事言うのは自分で言うのもアレだがお人好しが過ぎる。
けど・・・。
「アルト様ぁ・・・!」
そんな馬鹿な俺のクソ台詞を慈悲深いとでも思ったのか、偽アルトは滝のように涙と鼻水を垂れ流す。
「そういう呼び方やめろ。あー、ちなみに今は 『ウルド』って名乗ってんだ。だからそっちで・・・。」
「ウルドの兄貴ィ・・・!」
「兄貴って・・・まぁ、それでもいいや・・・。」
「けど俺何の取り柄もなくて・・・冒険者としてうだつも上がらなかったし・・・。」
「・・・。」
なるほどな。
他人の名誉に縋るには動機としては充分だな。
けど『何の取り柄も無い』?
それは大きな勘違いだな。
「え?」
偽アルトの剣に手をかけて抜き取ろうと力を込める。
すると鞘からプシュゥッと空気が抜ける音がして剣が抜ける。
「・・・。」
俺が剣を抜いて眺めている頃には剣が七色の綺麗な光を放っていた。
「兄貴?」
「すげぇよ、あんた。」
「え?」
「桜光石って真空だったら光らないんだろう? 剣に加工するのもなかなか出来るもんじゃないし、真空にする鞘だってどうやって作るのか素人の俺じゃあまるっきり見当もつかない。」
「兄貴・・・!」
「刀鍛冶やってたのか?」
「実家がそうだったんですけど、親父とそりが合わなくて修行中のまま家を出たんです・・・だからこんなの見せかけだけで・・・。」
「いや、こんだけ出来りゃ充分才能だろ!! 自信持てって!!」
「兄貴ィ・・・!」
偽アルトはまた涙を流しながら歯を食い縛る。
「せっかくだからあんたの名前を教えてくれ。」
「え?」
俺の提案に偽アルトは涙が治まってないまま呆気に取られた顔で俺を見上げる。
「ど、どうして?」
「さっきも剣ぶっ壊したし、あんたに仕事頼む事もあるかもしれないからな。その時になって名前も覚えてなかったらカッコつかないだろ?」
「は、はは・・・!」
ふざけ混じりに言うと少し肩の力が抜けたか、偽アルトは笑い声を漏らす。
「・・・ギャバラです。」
「ギャバラ・・・ッ!!」
咄嗟に顔を逸らして口を塞ぐ。
「兄貴?」
「なんでもない・・・。」
笑ってない笑ってない。
俺は全然笑ってないからな!?
「ぷくくく・・・!」
「兄貴!!?」
いやなんだよ『ギャバラ』って・・・!
名前着けた親のネーミングセンスどうなってんだよ・・・!
悪党の三下が顔面殴られた時の断末魔かよッ・・・!
こんな名前着ける親が自分の親だったらグレる自信あるぞ俺・・・!
「ま、 まあとりあえず・・・ 覚えとくよギャ、ギャバ、ラ、くく・・・!」
「酷いッスよ兄貴ぃッ!!」
結局笑ってるのがバレてギャバラに泣きっ面で怒られる。
いや、こればっかしは仕方ねぇだろ!
こんな雰囲気でこの名前は流石に
「お兄ちゃん上ッ!!」
「ッ!!?」
ルタに言われて直ぐ様上を向くと・・・!
「ッ!!」
銀蠍が目と鼻の先まで落下して迫っていたッ!!
「くッ!」
即座に地面に突き立てていた剣を抜いて奴が突き出していたナイフを止めるッ!
だがその瞬間・・・・!
「!???」
銀蠍の動きが不可解だった!!
手を口の下に添え、まるで皿を持つような手で口元に構えていたッ!!
『何してんだ?』と一瞬思考が迷ったのが命取りだったッ!!
「うわッ!!?」
銀蠍が手の平に息を吹き掛けると白い煙が俺の顔面に襲いかかったッ!!
すると・・・!
「ぐぁッ!! かッ!! 目がぁッ!!」
一瞬でそれが催涙性の薬品だと理解できたが・・・!
「ぐがッ!!」
その一瞬の間が既に手遅れだった!
鋭い痛みが背中から襲いかかってくるッ!!
目で見えなくても分かる・・・あいつのピック状の針で刺された・・・!
「て、めぇ・・・!」
「言っただろう?」
「ッ!!?」
針を抜が抜かれるといきなり顔に風が当たり、瞬間、何処のかも分からない壁に激突する!!
「・・・!」
いや、違う・・・!
顔がぶつかったのは地面だ・・・!
「くっ・・・!」
今更自分が倒れた事に気づいて足を動かそうとしたがまるで足が無いかのように機能しない・・・!
麻痺してる・・・待て、意識まで・・・無くなっ・・・!
「リスクの高い仕事はしないと・・・。」
~リメイク前との変更点~
・レレパートにいたランサーとアーチャーをワットPTに変更
理由:見てきた人には分かると思います、流石にマズいですよアレはww




