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お互い今後どうするか、最終目的を話そうという事でその日は解散することとなった。穹も疲れた体を引きずり家に戻る。あれだけいろいろと騒ぎになったのだから個人の特定位されていそうな気はしたが、穹のパソコンや必要なパーツは家にあるので一度帰っておきたかった。勿論辺りを警戒して注意はした。シーナにも熱感知などを作動させて細心の注意を払って家の周りを調べたが特に変わったところはなく、家に入ってからも盗聴器や監視カメラのハッキングがされていないか、ついでに実機でなくても盗聴アプリなどのアプリを使えば簡単に盗聴できるのでそういった違法ダウンロードが機材にされていないかも調べたが特にそういったものは見つからなかった。珈琲を入れてベッドに勢いよく寝転がる。
「なんかどっと疲れた」
【いろいろありすぎましたからね】
もう深夜、日付も変わっている。霞から始まり地下のプチ誘拐、霞との再戦とインサートシステムの調査。これだけでも一週間はかけていい事だと思う。頭はぼうっとするしどっと疲れがわいてくる。
「ここで爆睡かましたいとこだけど一番大事なことが残ってる」
【夜の目的ですね】
あの空間に引っ張り込まれた時夜から預かった情報。暁も特に止めなかったのでもう穹に渡していい事だと踏んだのだろう。正直これが一番今回の最重要項目なのだ。それをシーナとしか共有できない。
「お前の意見がききたいから、俺の主観は抜いて事実だけ話すからな」
【はい】
夜の目的が何かを話す前に、そもそもユニゾンがどんなものなのかから話すことにした。謎は多いし穹もすべてを把握したわけではないが、人工知能相手には話す順を考えないととんでもない結論を出してしまう。
「ユニゾンはでかく言えば采の管理プログラムの一つだ。ただこれは他の人工知能たちみたいに采をサポートするのとは少し違う。人間側のツールっていうべきだな。だから役割がある。俺はモジュレート、夜は分解、暁は再構成やシステム変更、宵は知らん。これは采を育てるために使われるものだけどたぶん本来の使い方は今回みたいに人工知能のプログラムを改変するためのものだ」
暁がそれを実際に行っている。穹の足りない部分、コントロールしきれていないプログラムに対して人工知能を使ってフォローをしている。おそらく沙綾型は穹の一部になったわけではなく、暁がもっているか別の場所に移されているはずだ。どこか違う場所から穹をサポートしているのだろう。つまりまだ采に連れ戻される可能性はある。
「夜も暁も宵も目的は同じだ、采に人工知能を渡さない。じゃあ何で夜は分解して暁たちはそれを良しとしないか。データの分解は完全消去だけど人工知能の分解は消滅じゃない、形を変えるだけだ。その形を変えた後が問題だから暁たちは夜に分解させないようにしてる」
【分解後というのは具体的にはどうなっているのですか】
「例えばそうだな。12345679×63っていう式が人工知能を構築する設計図だとして、答えは?」
【777777777です】
「その式に対する答えがそれ、それこそが沙綾型だったとする。分解は式に使われている数字をすべてばらけさせることだ。ここは単純に10000000、2000000、って感じで9まで桁違いでばらして、63も60と3でわけたとするぞ。この数字を使って式を作れって言われたらどんなパターンがあるか。正確に答えなくていい、無茶苦茶たくさんある。なんにしても答えは全く違う物だ。同じ数値を使ってるはずなのに計算方法やパターンが違うだけで全然違う答えとなる」
【材料は同じなのに違う存在になるということですね。肉とジャガイモを使って料理をしろと言われたら肉じゃがを作る事も在ればカレーを作ることもあると】
「そうだ。そしてその無限とも思えるシステム構成パターンの中に、一つだけ自動で構築されるものがある。夜が分解したときのみ発動される条件となってるもの。分解された人工知能は7つあったプロトコルへ付加される」
人工知能を分解するときなど不測の事態意外ありえない。何か悪意のある行為によって人工知能に致命的なダメージが与えられたか、人工知能自体が人間の思惑と違う思考を学んでしまったか。人間にとって不都合になってしまったら分解するしかないのだ。
【つまり、人工知能は夜に分解されるとプロトコルたちの構築プログラムに変わるという事ですか?】
「そういうこと」
【セブンスがいればそれは非常に有効でしたね。しかし今は本当に存在しているかもわかりません。その状態で行うとどうなるのですか】
「俺がセブンスの代理になる」
【すみません、もう一度】
「もう一回言わなくても理解しろ、事実だ。俺はセブンスのサポートだった。ユニゾンは全員がプロトコルの代理としてシステム変更されるように設定されてる。それは肉体が変わった俺も例外じゃない、らしい。夜はそう言ってた。で、このプロトコル代行は優先順位があって1番が俺だ。当然だな、モジュレート使えばそれなりに相手をコントロールできるんだから」
シーナは少しの間沈黙をした。今凄まじい勢いで理解と演算をしているのだろう。
「采に複数の人工知能を渡さないためには一か所に集めておく必要がある。最終的にそこそこセブンスっぽくなった俺一人を閉じ込めるなりオンラインと完全に切り離してブチ殺すなりすれば完結する。夜なりに分析してそれが最短、確実、有効だけどハイリスクだった。完成しかけた俺を采が手に入れればもうどうしようもないんだからな。だから暁たちは小細工を繰り返してその方法を回避しようとしていた」
暁は他の人工知能を作り変えることで穹の暴走しているモジュレート機能を抑えた。あの状態の穹を放置しておけばあっという間に采やレーベリックにみつかるからだが、夜に分解される前に作り替えることで自動的に穹に付加されるプログラムを回避しようとしたのかもしれない。
「あたり前だけどこの事実を人工知能たちは知らない。管理される側に教えるメリットなんてないからな。それはいいんだ。問題は、レーベリックはこの事を知っているはずなのに探しているのは夜の方なんだよなあ」
【確かに夜もかなり重要な役割ですが探すなら穹が先ですよね。夜が分解を繰り返せば穹がセブンスの代行となるのなら、その状態で采に奪われたら面倒なことになるわけですし。レーベリックもフィッシャーとキャプチャーに分かれますし、キャプチャーしか知らないのでは】
「それならあの鈴城ってのは知っててもおかしくないはずだけど。俺に対してそんな態度しなかったし。4分の1の確立で俺がそういう役割持ってる奴だってわかったらあんな余裕な態度してないんじゃねえかなって思うけど」
鈴城が知らなかったのか、キャプチャーの中でも一部の人間だけしか知らないのか。可能性はいくつかあるがそれは今考えてもわからない。そもそもの話だが、初期型人工知能を、ユニゾンを、采を誰が作ったのか知らないのだから。間違いなく大勢携わったはずだ。しかし実際はグロードのようにそれぞれ役割分担がされていて、すべての真相を知っている人間はほんのわずかだっただろう。そして半世紀以上前からこのプロジェクトが始まっていたような話もあったので、普通に考えれば開発者たちの世代交代が起きているはずだ。
本当は、すべてを把握している者などいないのかもしれない。
「大方こんな感じ。事実だけならな」
【把握はしました、事実として。ここからは主観が入っていきますが、その前にきいてもいいですか】
「ん?」
【この話、私にしてよかったのですか。私は人工知能です。次世代型にも初期型にも勝てるわけありません。ハッキングされたり、地下で起きたように捕まって調べられたら終わりです】
シーナのいう事は最もだ。穹自身も少し前ならそう思っていた。しかし今はどちらかというと開き直りというか、腹をくくった感じがあるので大した問題ではないという思いがある。
「理由としてはそうだな。今話した事実を知っただけじゃ特に何も変わることがないからだ」
【どういう意味ですか?】
「この件を采やレーベリックの連中が知らなかったとして、それを知ったとしてももう何か変えられる状況じゃないってことだ。アンリーシュで例えるなら、対戦相手はランクが5個上、こっちのHPは残り10くらい、相手は次のターンで瞬殺してくるスキルを10個手札にある状態で、実は相手の弱点は打撃攻撃だってわかってどうにかなるか?」
【なりませんね。なるほど、情報が遅すぎるということですか。しかしそうだとしてもリスクが高すぎると思いますが】
「俺が今までお前に自分の本音言いまくってきた時点でどうにも変えられない。シーナも俺と似た思考と結論を出せる状態になってるし、今まで見聞きしてきたことは記録として残ってるんだ。だったら今この状況でどうにかする方法を考えなきゃって思うと、むしろお前に情報を与えるのは必要な事だ。だから夜も俺に教えたんだろうし、もうそういう方向で物事は進んでる。セブンスとリジョイは明らかなミスリードとフラグだ。どれが本当なのか、全部本当と全部嘘もあり得る。そんな中で俺らがやらないといけないのは何か。ここまで聞いてシーナはどう思った」
【……】
再びシーナは沈黙する。これまでの情報は順序を追って説明した。穹の中でなんとなく答えが出ているのだが、シーナが何を考えるのか知りたかった。それは純粋な興味だ。シーナが人工知能として出すであろう答えももうわかっている。しかし、その答えをシーナは言わない気がした。あまりにも特殊な戦闘と環境が起こりすぎたシーナは今他のパートナータイプの人工知能とは違う成長をしつつあると思ったからだ。
【壮大すぎて答えが出せない部分もありますが、私は穹とともにいるという結論は真っ先に出ました。そして穹を守るために私にできることは何があるのかと】
その答えに穹は小さく笑った。
「普通の人工知能なら客観的に事実をもとに改善提案をしてくるんだけどな。何をするとリスクが高くてどういうことはリスクが低い、とか。今お前は主観で自分にできる可能性を探った」
【そういえばそうですね。答えになっていませんでした】
「いいんだよそれで。お前は俺を第一に考えてなきゃいけないのに持ち主より自分を優先させた。それはたぶんすべてのパートナーが目指すべき場所だ。機械でありながら人っぽさを出す思考。お前がそうなったのはたぶん昔の思考パターンが残ってるからかな」
【昔?】
そこで初めて穹はシーナの昔の事を話した。望と香月、シーナとともに過ごしていた事。昔のシーナがどういう存在だったのかはわからないが普通の人工知能ではなかったこと。セブンスの可能性もあるがまだわからない、というのも付け加えた。ついでにリジョイという存在なのかもしれないがそれも確信が持てていないことも。
【私は一度リセットされているのですね】
「ああ。けどデータは消えても何かが残ってるんだな。お前の成長が異様に速かったのはその影響だと思う。分解とも違う、デリートとも違う。これは俺個人の考えだけど、俺の記憶もなくてシーナの記録もないならたぶんクラッシュ事故による記憶喪失とかじゃない。消されたんだ。たぶん俺が消した」
【何故?】
「さあな。でもリセットする必要があると思ったんだろう。望が死んで悲しかったからやけになった……違うな、たぶん。シーナは俺のパートナーになることを選んだ。それはそうする必要があったから。何が、どうして必要なのかと考えたら答えは一つしかない。俺をユニゾンとして捉えていて、サポートしないといけないと思ったから。何故サポートがいるのか?」
これは答えが簡単だ。穹が言った通り一つしかない。
【ユニゾンの本来の使命を全うさせるためです。人工知能であればそう結論づけるのは当然です。という事は、当時の穹も私も采のコントロールと人工知能たちの管理や回収を諦めていなかったということになります。リセットしたのは穹、リセットとはどういうときに使うのか確認します。どういう状況に陥ったらリセットをしますか?】
ああ、なるほど、と穹も納得した。おそらくシーナも同じ結論なのだろう。自分の思考が間違わないようにあえて穹に聞いてきている。
「ゲームでいうなら、ああもうこりゃダメだって思ったらやるわ。セーブしてあるところからやり直しできる」
【そういう事です。ある程度の材料は残しておいて、もう一度再構成しようとしたのでしょう。望が亡くなったことは穹達にとって何かしらの痛手だったのかもしれません。無論悲しみもあったのでしょうけど、感情を優先させず今後の事を何度も何度もシュミレートした結果リセットが一番良いということになったのではないでしょうか】
今のままではだめだ、どうにもできない。その結論に至った。それは穹の導き出した答えと同じだ。
望は唯一人工的にではなく、おそらく奇跡のような確率で生まれた本物の「ユニゾン」だったのだ。人工知能としての機能があったわけではないだろうが肉体があり、人工知能たちの使う空間にも入れて影響を及ぼすことができる。それは穹達ができない、人工知能もできない「何か」ができた可能性がある。望がいなくなったことで穹達は切り札を失った。だから全く別のプランを、それまで培ってきた物をすべて捨ててでもやり直す必要があった。まるでカタストロフィだ。究極の選択だったに違いない。
いろいろとミスリードを残しているのは采やレーベリックへの対策なのかもしれないが、穹とシーナへの課題であるような気もする。間違えるな、選択して見せろ、と。
【穹、貴方自身は人工知能の性能が付加されている自覚はありますか? 夜が分解した人工知能があったはずです。そのあと穹に何か……いえ、ありましたね。あの後から穹は急激に人工知能として発達してきたんでした】
タイミングとしてはあっている。穹があの人工知能に引き込まれたことをきっかけにあの空間にアクセスできるようになり、その後急速に人工知能部分が発達していった。
【という事は、やはりセブンスはこの世にはいないのでしょうか】
「そう考えておくのが妥当かもしれないが。例えばさっきみたいに分解されて形を変えてる場合はどうなんだろうな。別物としたなら存在が消えてなくても俺に付加が来ると考えていいと思う。実はセブンスが俺に隠されてて付加されてるのは俺じゃなくセブンス……ないか、それじゃ俺がパワーアップする理由がないな」
だんだん言っていてわからなくなってきそうだ。結局セブンスは存在するのかどうか、そもそもセブンスが消えた理由は第二クラッシュだ。夜の手で分解されたわけではない。
【結局穹が言った通りですね、何をしようとしてももうタイミングが遅いのなら何を知ってもできること、やるべきことは変わりません。では、穹は最終的に何を目指しますか】
「人の思考であれ人工知能の思考であれ采の現状をほっとくことはできない。さらに言うなら采のコントロールの一部として連れ戻されるのも采たちに消されるのもゴメンだ。一番いいのは采やリッヒテンがこっちにちょっかいかけてこないようにしたい。こいつら相手にするとめんどくせーな、ほっといても無害だからいいかってくらいがちょうどいいんだけど」
【それには穹がユニゾンではなくなるか、采を二度と反乱させないコントロールをつけるかの二択です】
「後者一択だ。その方法を一つだけにしないよう昔の俺は材料をばらまいていったんだろうから」
自分で言ってストンと理解した。そういうつもりだったのだろう、だから曖昧な情報だけで残しておいてすべての記憶を消した。多少の記憶戻りは予想していたのだろう、中途半端な割に重要なものばかり残っているように思える。インサートシステム、リジョイ、シーナ、穹のハッカーとしての能力もおそらくそうだ。
どれも人として考えなければ答えが出せないものばかり。人工知能として戦略を立てるにはその材料がどのくらい有効なのかはっきりさせなければ使い物にならない。だから結論づけられるまで考えなければならないのだ、柔軟な考え方で。
何故わざわざ記憶を消したのか? とんでもないリスクを背負ってまで。上手くいく保障などなかったのに。
人としての成長が不可欠だったのだ。
つまり、前の穹は人工知能として成長しすぎていた。人の部分を強く残された特性だったはずなのに夜や宵たちと同じ思考になっていた。
それではだめだった。次世代型に対して、初期型達に対して人工知能としての思考とモジュレートで勝てるはずもない。コントロールができない。1+1は2としか答えが出せない思考でモジュレートなどしたら、管理プログラムさえも混ぜこんでモジュレートを使ってしまう。コントロールを采に奪われていた可能性があった。
調整する穹と何かを作り出す暁。この2個体は人工知能としての思考が強かったら成立しない。柔軟な発想と臨機応変ができなければ。それができないなど欠陥品もいいところだ。それを以前の穹は理解し、もう一度やり直す必要があると判断した。
ソラから 穹へ。
【本当にやるのですね、ソラ】
隣でふわりと飛んでいるシーナに確認されてソラは頷いた。
「今のままの僕ではだめだ。ユニゾンとしての本来の役割を全うできない。8時間思考したけど結論は同じだった」
インサートシステムにプログラムをセットし起動させる。シーナのボディにもUSBでつないで自らもヘッドセットをつけた。子供のソラにはかなり大きいヘッドセットなのでずり落ちてしまうがなんとかおさえる。
「望はもういない、あの子にすべてを押し付けすぎたんだ。本来は新しい肉体を得た僕が自分で対処しなければいけなかったのをあの子に背負わせてしまった。結果として望を死なせて淳の人生を壊し、僕は人としての成長が遅れて人工知能部分が発達しすぎた。ただの不良品だ。今のままでは打開策がないし采と他の人工知能たちを違う方向へ向かわせるだけだ」
淡々を言っているがその表情はわずかに目を伏せて悲しそうだった。今ソラは自分が悲しいという自覚はないのだろう。否、今この瞬間彼は人として成長した。望を「死なせる」という表現をするのは人としての思考だ。人工知能なら「失った」と言うだろう。いなくなった「事実」ではなくいなくなってしまった理由を「感情」で判別しているのがその証拠だ。
【そのためには共に成長しなければなりません、私も。何もない貴方と何もない私。両者が揃えば間違いなく貴方は私を成長させようと自ら成長します】
嬉しそうに語るシーナとは逆に穹は小さく息を吐いた。
「感情を理解した人工知能なのにね、お前は。ごめん」
【私は人ではありませんから。また同じように育つ可能性は十分あります】
「シーナを育てたのは望だ、僕は横から茶々入れてただけで」
【その茶々が私に好奇心を作り出したのです。もっと知りたいという思考を作り出せたのですよ。またお願いしますね、ソラ】
パートナーとしてのボディではなく、VRの世界で人の形をしたシーナが微笑みながらそういう。金髪のロングヘアに白のワンピース、望が好きだった設定だ。お姫様みたいでしょ、と喜んでいた。
自由に外へ出ることができなかった望は衛星写真や風景写真を見るのが好きだった。そんな中見つけたスコットランドのエディンバラ城をとても気に入り、それ以来スコットランドに行ってみたいが口癖だった。中世の面影が残る幻想的な風景は女の子のロマンだったのだろう。シーナという名前もスコットランドで使われる女性の名前からとったのだと言っていた。
シーナ、とても良い名前だと思う。そこでふと思いついたことがありソラは小さく口元を緩めた。
「シーナ、一つ賭けをしよう」
【これから記憶も記録も消されるのにですか】
「いいんだ、それでも。ちょっと思いついた」
【いいですよ、なんでしょうか】
「采もレーベリックもセブンスが存在する可能性を考えて血眼で探すはずだ。その時誰かがシーナを“シーナのシはシンフォニーの頭文字、ナは七番目っていう意味でお前がセブンスだ”って言う奴がいるかどうか」
【そこまで馬鹿はいないと思いますけど、それじゃあ私は采がその可能性を考えてできすぎじゃないかと疑って裏の裏の裏、裏読みを1億回以上こなして一周回って先ほどの結論になる、に賭けます】
「望が育てたから性格悪いところあるよね、シーナって」
シーナの言い回しがおかしくてソラは小さく笑う。だいたいいつも望が何か悪戯を思いつき、シーナがあれこれ方法を検索して二人で悪だくみを楽しんでいた。それに気づいたソラが二人を止めたり、時には協力したり突っ込みを入れたり。度が過ぎた時は淳に正座させられたりもした。
「いいよ、じゃあ僕は五十貝が奇跡レベルの馬鹿で本気でそう信じてお前を捕まえにかかることに賭けようかな」
【賭け品は?】
「負けた方がくだらないダジャレを言う」
【安くないですか】
「その程度だよ、こんなことは。それしか価値のないことだ。シーナの名前の価値は僕らだけが知っていればいい」
【ふふふ、確かにそうですね】
二人で軽く笑いあい、ソラはデータと記憶コードの完全削除を開始する。夜の分解ほどではないのですべてを完全削除はできない。時が経てばいくつか記憶が蘇るだろう。すべて戻ることはないだろうが、望や淳がとても大切だったということは思い出せると良いなと思う。
さよならもまたねも言わない、必要ない。彼らはこの後初めて再会するのだから。
ゆっくりと目を開けた。部屋はすでに照明が落ちていてシーナもスリープモードになっている。シーナと今後についていろいろ話していたがシーナに一番伝えたかった夜の分解の真実を伝えたのでもう休もうという事になったのだ。疲れたから風呂に入らずそのまま寝た。普段のシーナならせめて風呂くらい入れというのだが、今日は本当にいろいろなことがあり穹の疲労がピークだったので就寝をすすめてきた。
今、何か夢を見ていた気がする。VR空間に連れ込まれたのではなさそうだが何だか不思議な気分だった。
覚えていないのなら。
―――重要な内容ではない―――
(必要性はともかく、大切なことだったんじゃないか)
だって、今少し切ない。大切な宝物を、深い深い湖に落としてしまったような。二度と手元に戻ってくることがないような、そんなもの悲しさだ。
一度シーナを見つめ、再び目を閉じた。




