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メタモルフォーゼス  作者: 新町 東
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第8話『なるほど!! 理解したぞ!!』

作者:ようやくここまで来れたな

和俊:と言うと?

作者:この次の話から第一章の開幕だ

和俊:それはいいがちゃんと書けよ

作者:……はい

第8話『なるほど!! 理解したぞ!!』


「まず最初に説明するのは魔法の源、正式名称は無いけど仮命で魔素と呼ばれる物。その条件についてね」


「条件?」


「そう、まだまだ不明な点を多く持つ魔素だけど判明している事柄だけでも、掻き集めればそれなりの情報になるわ。そうして導き出された条件の一つが、『使った魔力は時間が経てば回復する』というものよ」


 この条件は魔力研究の最初期から存在したものであり、まだメタモルフォーゼス自体が発見されておらず、魔力がただ手の平の上で輝いていただけの時代から知られていた事だ。


 当時行われたいくつかの実験の中に、『魔力は無限なのか?』を調べる内容の物があった。


 方法はいたってシンプル、複数の男女にずっと魔力を放出し続けてもらうだけだ。


 その結果として判明したのは使い続けると徐々に魔力が小さくなっていくと言うものと、魔力が小さくなるにつれて体調が悪化する傾向が観られた事。


 実を言えば魔力放出時間にも差が生じられた為に、個人差がある事は判明していたのだが、当時の研究者からすればそれ自体は些細な事柄だった。


「時間が経てば回復する、と言う事は、見方を変えればその時間の中で行われている事の中に回復するための『何か』が存在しているという事になるの」


 今の母さんの説明の例題を挙げるとするならば、魔力の源である魔素の正体は『空気中に含まれている物』である、通称『空気説』等と言われる最有力の説だ。


 その説が正しいとすると、回復するための『何か』とは『呼吸である』と断言できるからだ。


 まぁ、未だに空気中から魔素を見つけることが出来ていないせいで結局のところ『説』止まりなのだが。


「そこでお母さんは思ったの、『何か』とは『食事』なんじゃないかって」


 母さんは身を前に乗り出す。


「食物を体内に入れ、栄養を吸収する。その過程のどこかで何かしらの栄養素が魔素に変わることで魔力の回復がおこなわれるのではないかというのがこのレポートに書いてある事なの」


 それを聞いた和美が「ハイ」と手を挙げ


「へぇ、じゃあ今食べてるカレーも、もしかしたら魔素の更に元となる栄養が入っているかもしれないって事?」


「そういうことになるわね、それでもしこの説が実証に成功した場合どうなるか? はい、和俊」


「……母さん、ここで俺に振るの?」


「感想含めて聞きたいかなって」


満面の笑みの母さんと、期待した表情を浮かべている和美と、なんだかんだやはり理解していない兄貴がこちらを見てくる。


「えっと、もしもを前提とした話をするならば解かりやすい物からにしようか。まずはその栄養素が多く含まれている物、仮にカルシウムが魔素の元だとしよう。その場合だと、カルシウムを多く含んでいる食べ物を摂取した方がより短時間高能率で回復できるようになる」


「その場合だと牛乳や煮干し辺りが適切な食物になるわね」


「そうだな。それに魔法師にはカルシウムを多く含んだ栄養バーみたいなものが支給品として渡されるようになったりするかもしれないな」


「それだけじゃないわ、もしかしたら幼い頃からより多くのカルシウムを摂取する事で魔力のランクがより高いランクになりやすくなるもしれないの」


 ここまでの説明で和美は「へぇ~」と理解しているようだが、兄貴はイマイチピンと来ないようだったので


「兄貴、要するにだ、小さい頃からいっぱい牛乳を飲むと強くなれるかもしれないって事だ」


「なるほど!! 理解したぞ!!」


 ドヤ顔を決める兄貴だが、どう考えても浅い部分しか理解出来ていないように思える。


「でもすごいよね、流石お母さんだよ」


「全くだ、凄いぜ、母さん!! もうこれが確定でいいんじゃないか!!」


 そんな二人を見て「ふふっ」と笑った後、母さんは、改めてこちらを向き


「じゃあ次はこの説の致命的な欠点について教えて貰おうかしら」


「「えっ?」」


 母さんの言葉に揃って疑問の声を漏らす和美と兄貴に対し、俺は自らの意見を言葉として出した。


「この説の致命的な欠点は今までに『魔素の正体が栄養である』と言う説が挙がらなかったことだ」


「えっと、どういうこと?」


「もし仮に、魔素の正体が栄養であるならば、もっと早い段階で見つかっていておかしくないって事だ。そうだよね母さん?」


「正解」


 そう一言だけ口にすると小さく拍手した。


「過去に実験の過程で魔力の使い過ぎで倒れた人がいたんだけど、検査の結果、原因は疲労によるものだったんだ。もしも栄養であるならばこの検査時に栄養失調と判断される可能性が高い。なんせ本来ならば体の維持に使われるはずの栄養分まで魔力酷使の影響を受けて魔素生成に回してしまえば足りるはずの分が足りなくなるのは当たり前の事だ」


 それに正直な所、魔法師御用達の必須アイテムが栄養剤とか嫌過ぎる。


「そこなのよね」


 母さんも苦笑いを浮かべながら言葉を続ける。


「確かに、少量の栄養から多くの魔素を作れると言うのであれば日頃の食生活で十分カバー出来るだろうし、どの栄養素が体内で魔素に作り替わっているのかもこれから調べれば発見する事が出来るかも知れない」


「そうだな」


「でも正直、千差万別の力を秘めた魔法の源が『実はただの栄養でした』ってのは腑に落ちないと思わない?」


「そうかな? 俺は、魔力自体は誰にでもある力なんだから誰にとっても当たり前の『何か』が魔素の正体だと思うけどなぁ。だから栄養でもおかしくないと思うけど?」


「確かにそうかも知れないわね……よし、決めた」


 母さんは立ち上がるとある事を宣言する。


「当面は『栄養素説』で研究を進めてみることにするわ、貴重な意見ありがとう、和俊」


「いいんじゃないかな、俺も色々考えておくよ」


 と、ひと段落着いた所で、その日の夕食を終えた。


 因みに、いつの間にか父さんは食べ終えて自室に戻っていた。


 一家の大黒柱なのに完全に空気扱いだったのは正直可哀想であった。


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