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メタモルフォーゼス  作者: 新町 東
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第56話『見慣れない靴がある』

第56話『見慣れない靴がある』


「時間がありません」


 放課後、いつもの様に生徒会室に集合した俺たちであったが城之崎先輩の口から零れた言葉は余りにも重く圧し掛かるのだった。


「今日が四月の二十八日ですからメンバー探し終了の期限まであと二日です」


 現状を鑑みるに、これ以上のメンバー獲得は非常に厳しいものがある。


 一年生には殆ど声を掛けたし、最近では少ない望みをかけて二・三年生にも声を掛けていたのだが結果はこの有様。


「このままでは非常に厳しい戦いが強いられることになるでしょう」


 何せ戦えるのは柄巻先輩に、間仲くんに、栗山さんの三人だけだ。


 俺と智樹はあくまで人数合わせであり、戦う事になっても勝つつもりはない。


 つまり三本先取のルールで一本も落とさない事が唯一の勝ち筋である。


「せめて後一人いてくれれば大分楽になると思うのですが……」


 そう願う柄巻先輩の気持ちもよくわかる。


 敗北主義のような考え方ではあるが、一回までなら負けられると言うのは多少ではあるが気が楽になる。


「そういえば平賀くんと広田くんはあの九条くんと一緒にお昼ご飯食べてるけど彼は駄目なんですか?」


 同じクラスであるため例のイチャイチャ現場も目撃している栗山さんからの質問。


「確かに九条もCランクだけどどうも忙しそうでな。主に家事が」


「でもよ和俊。そういやあいつ手伝いくらいならとか言ってなかったっけ?」


「確かにそう言ってたけど現状じゃ手伝って貰うことは無いと思う」


「あーそう言われちまうとそうだわ。あいつがメンバー勧誘してる現場とかただのカツアゲにしか見えないもんなぁ」


 外見はあれだけど実はかなり優秀なんだよなぁ九条の奴。それだけに残念だ。




「…………」


 結局今日もダメだった。


 正直な所、学校に在籍する生徒ほぼ全員に頼んだと言っても過言では無いがそれ故に、今更になって手を挙げてくれる者はいないと思う。


 重い雰囲気の中どうにかして光明を見つけたいと頭を回すがそれは見えてこない。


 そうして今日も解散となり、いつもの様に智樹と帰路に着く時だった。


 校門前でギッシリと中身の詰まったスーパーのビニール袋を両手に合わせて四つ持っている九条の姿が見えた。


「ん? どうしたんだ九条こんな時間に?」


「野暮なこと聞いてやんなよ和俊さんよぉ。恋人様と一緒に帰ってあげようとする彼氏様の優しさだろ」


 眉間にしわを寄せて小指を立てる智樹に、


「いや、待っていたのはおまえたちの方だぁ」


「俺たち? 何の用だ?」


「改めて謝罪しようと思ってなぁ。昨日は本当にすまなかったぁ」


 深々と頭を下げる九条。それを見て俺たちは、


「気にすんなよ、別にあんなの大したことじゃねぇよ」


「智樹の言う通りだ。それにほら、そんなことがあっても何だかんだつるんでいられるのが」


 俺は九条の肩を掴み体を起こさせて、


「友達ってやつだろ」


「……そうかぁ、そうかそうかぁ…………」


 何かを納得したように呟くと、


「俺の欲しかったものは、ここに在ったんだなぁ」


 普段とあまり変わっていないはずなのにそれはどこか、救われた様な表情であった。




「今日のご飯はな~にっかなぁ~♪」


 いつも通り帰宅し、いつも通り九条家のドアノブに合鍵を差し込み、


「くーちゃんたっだいまー」


 といつもの様に帰宅を告げるが、そこで違和感に気付く。


「見慣れない靴がある」


 宇佐美の物でも九条の物でもない靴が二足。


「お客さん? くーちゃんに?」


 考えながらリビングに向かうと、


「よぉ、宇佐美」


「おじゃましてるよ宇佐美さん」


「あれ、広田くんと平賀くんじゃん。どうしているの?」


「その事なんだけどな……」


 事の経緯を話し始めた。




「なるほどなるほど、つまりこの二人がいるのは先日のお詫びで……」


「あぁ」


「その上でくーちゃんは生徒会に入って平賀くんたちの手伝いがしたいと」


 宇佐美さんはキッチンに立つ九条に自分に言い聞かせるように確認を取る。


「あぁ、だから今まで見たいに七海の面倒を見てやれなくなることも多くなってくるからなぁ」


 それでと九条が話を続けようとしたが、


「……七海、なんでお前が泣いてんだぁ?」


「だってあの自分の事よりも私の事ばかり優先するくーちゃんに友達が出来てしかも、力になってあげたいって言ってるんだよ!!」


「……」


「こんなの応援するしかないじゃん!!良いよ!!私に構わず好きなことしたらいいよ!!家事だって私も頑張ってやってみるから!!」


 ぼろぼろと涙をこぼしながらも力強く九条の後押しをしてくれる宇佐美さん。


「ありがとよぉ、七海」


 素直に礼を言う九条。


 だが、


「安心しろぉ、おまえがしっかりと家事が出来るようにたっぷりと仕込んでやるからなぁ」


 その顔は『その言葉を待ってましたと』言わんばかりの凶悪面だった。


「「「ヒィッ!!」」」


 その顔は思わず宇佐美さんだけでなく俺と智樹まで悲鳴を上げてしまうほどだったのだった。




 何だかんだあって俺たちは九条と言う最高の戦力を仲間に加えた。


 とりあえずCランクの魔法を使えるメンバーが4人揃った。


 あと一人は俺か智樹が人数合わせで参加すれば大会には出れる。


 ただでさえ薄かった首の皮が本当に一枚で繋がった感がある。


 なら後やることは簡単。


 ひたすら特訓を積み上げる。


 その為に俺たちは、


「海だァァァァァァァァ!!」


 城之崎家が持つ別荘を訪れたのだった。




作者:ようやく働き始めたので投稿間隔が伸びがちになると思います。ご了承ください。


追伸:2020年3月14日に加筆修正しました。

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