第51話『どかない』
第51話『どかない』
小学校の頃、俺にはたくさんの友だちがいた。
そして俺はその友だちの殆どを切り捨ててしまった。
休み時間、校庭で一緒に楽しく遊んだ友だちがいた。
俺はそいつを殴る時、そんな思い出を握り潰すように強く、強く拳を握った。
机をくっつけて、一緒に楽しく給食を食べた友だちがいた。
泣きながら『先生に言いつけてやる!!』『おまえには神罰が下る、覚えておけ!!』と叫び逃げようとした奴らを決して逃がさず、『もう二度と神なんてものに縋らない』『宇佐美に謝る』と言う言葉を吐き出すまで叩きのめした。
俺をライバル視して追い付け追い越せと、肩を並べて切磋琢磨した友だちがいた。
もうそいつらは俺と肩を並べてはくれない。
ただ遠くから、まるでいつ爆発するかわからない爆弾を見るようにこちらを見ていた。
「平賀、おまえに何がわかる?」
「……俺には、おまえのした事が正しいとは思えない」
「だろうなぁ。誰だってそう言うに決まってる」
「それでも俺にだってわかる事はある」
「一体何がわかるってんだぁ?」
その問いに俺は答える。
「おまえは宇佐美さんを助けたかったんだろ。だからそんな手段を取れたんだろ?」
「確かにそう思うのも無理はねぇ。だがなぁ、一つ勘違いしてるんじゃあねぇかぁ?」
「勘違いだと?」
ああそうだと口にし、
「俺が牧園やクラスメイトを叩きのめしたのはあいつらのやり方がムカついたからだぁ。当然七海がそっち側にいれば七海だって切り捨てていたぁ。幼馴染だ友達だ親友だと言われて思われていたようだが俺からすれば所詮その程度の関係だったんだぁ。それに」
宇佐美を指さし、
「正直、昔からうっとおしかったんだよぉ。少しばかり悩んでるのを助けてやった程度で友だち面しやがって。牧園の一件の後なんて露骨にそうだろうがぁ。困っていれば助けてくれると付きまといやがって。どうして毎日毎日おまえみたいな奴の為にあれやこれやと働かなきゃならない。自分が出来ない癖にあれをやってくれこれをやってくれと愛想振りまく以外に何も出来ないおまえなんかの為に!!」
怒声は響き渡る。
「九条……おまえ…………」
「これが俺の本心だぁ。だからもう、これ以上言う事は無い。じゃあな、七海。精々元気に明るく周りに媚びでも売って楽しく生きるんだなぁ」
それを言い残すと踵を返し歩き出そうとして……
「ねぇ、くーちゃん」
「……」
「最後に一つだけ聞いて欲しい事があるんだけど良い?」
「……」
「どうして……どうしてくーちゃんはあたしの身の回りの世話をしてくれていたの?」
そんな言葉が発せられた。
「……」
「あたしの事嫌いだったんでしょ? うっとおしかったんでしょ? だったら何でそう言う話が出た時に拒絶しなかったの?」
「……それはおまえがしつこかったからだぁ。魔法名残りが初めて出た頃に比べて諦めの悪さは悪くなったなぁ」
宇佐美はだったら、と口にして、
「くーちゃんが居なくなることをあたしが『はいそうですか』って許すと思う?」
「最初からおまえの許し何ていらねぇだろうがぁ」
「だってくーちゃん言ってくれたでしょ『七海がこれからも多くの物を手に入れられるように俺が支えてやらなくちゃってなぁ』って」
頬を赤らめ、少し恥ずかしそうな表情でそれを告げる。
「あたしね、それがすっごく嬉しくて、そして改めて思ったんだ」
九条の進行方向に走っていき、その目の前に立ちはだかる。そして、
「あたしはくーちゃんが好きなんだ……ってね」
「俺は……おまえが嫌いだぁ」
「知ってるよ。でもね、そんな好きな人が自分のせいで幸せになれない道を選ぼうとしているなんて知って見過ごせないよ」
「邪魔だ、そこをどけ」
「どかない」
即答する。
「あたしはくーちゃんにたくさん助けて貰ったから。だから今度は、居なくなるなんて悲しい選択肢を選ぼうとしているくーちゃんを、あたしが助ける番なんだ!!」
その宣言に九条はため息を吐き、
「退かないのであれば……力ずくで退かすぞぉ!!」
その手に黒いメタモルフォーゼスを作り上げる九条に対し、
「くーちゃんがその気なら、あたしだって!!」
宇佐美も白いメタモルフォーゼスを作り上げ、
「「変身!!」」
二人の声は重なる。
黒と白、二つの光がそれぞれを包み込む。
黒い光の中から現れたのは、赤かった髪と目を黒と紫が入り混じったような色に変え、その背からは同じように黒と紫の混じり合ったオーラを放つ九条の姿。
白い光の中から現れたのは、その目を紅に光らせ、白いグローブを装備した宇佐美の姿。
「平賀くん、広田くん。手は出さないでね!! ここまで来て無関係なんて言えないけど、それでもこれはあたしたちの戦いだから」
「七海、おまえが俺に勝てると本気で思ってんのかぁ?」
宇佐美をその禍々しいオーラで圧倒しようとするが、
「くーちゃんこそ知らないの?」
そう言って不敵に微笑むと、
「恋する乙女は無敵なんだよ!!」
堂々とそんな宣言をしたのだった。




