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メタモルフォーゼス  作者: 新町 東
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第41話『だったら必然にしよう』

作者:入れるタイミングがここしか無いと思ったので、九条・宇佐美組の過去編やります。そんなに長くならない予定なのでどうか見逃してやってください。


和俊:前回の最後で修羅場を迎えた俺は一体どうすればいいんだ……

第41話『だったら必然にしよう』


 小学校高学年の時にその女の子は魔法が使えるようになった。


 それは力の大幅な増強。簡単な話が馬鹿力である。


「もっと女の子らしい魔法だったら良かったのに……」


 とはその子が魔法を初めて使った時の感想である。


 しかしその女の子に本当の試練が襲いかかるのはこの後の事だった。




「あれ?」


 それはいつもの様に宿題をしようと机に向かい、プリントと睨めっこしていた時だった。


 手に持った鉛筆が折れてしまったのだ。だがそれは厳密には折れたのではなくまるで握り潰された様な有様だった。


「まだ新品だったのに」


 そう拗ねながら別の鉛筆を取り出すもまたもいともたやすく行われるように折れる。


 その子にはその光景が恐ろしくなったのだろう。


「おとうさん、おかあさん!!」


 両親を呼びながら自分の部屋から出ようとした時だった。


 あまりにも慌てていたからだろうか、ドアノブを回さずに引っ張ってしまう。


「え?」


 バキバキっという音と共に尻餅を着く。そして顔を上げた先にあったのはドアノブとその留め具の付近を、まるで食いちぎられたかのように失った、見るも無残なドアの姿だった。


 音を聞きつけその子の両親が駆け付けた時、さぞ驚いたことだろう。


 壊れたドアとパニックになってわんわんと泣いている娘の姿に。


 そしてその女の子は、自分の部屋に引き籠るようになった。


 その子の両親は一度ちゃんと調べようと専門の機関で体を調べた結果、極めて稀な魔力名残りだという事が判明した。


 その内容は魔法によって増強された力の一部が名残りとして魔法の使用を止めた後でも残り続けているというものだった。


 女の子は明るく元気で、なにより優しい子だった。


 それ故に、その女の子は……宇佐美七海はこの力で友達を傷つける様なことがあってはならないと学校に行くことを拒絶したのである。




「これは学校からのお便り。それでこっちが宿題のプリント」


「ありがとう、安久谷くん。助かるわ」


 黒のランドセルを背負った赤い髪の男の子、九条安久谷は最近ずっと学校を休み続けているお隣の幼馴染の家に学校からの届け物を持って来ているのだが、


「七海、具合でも悪いの?」


 お届け物を受け取った宇佐美の母に聞いた。


「具合が悪い訳じゃ無いんだけどね……そうね、安久谷くんになら教えてもいいかな」


 こうして事情を知る事となった九条は何かを決心するように、


「七海に会わせてもらえませんか?」


 そう口にした。




「七海、入るぞ」


 ノックもせずに当たり前の様に入って行く。その部屋はカーテンを閉め切り電気も点けられていない状態。そして隅に置いてあるベットの上に蹲るようにした宇佐美の姿があった。


「来ないで!!」


 部屋に入って来た九条に叫び、拒絶する。


「なにしてんだおまえ、サボってんのか?」


 拒絶されたことを気にも留めずに話し続ける。


「さっきおばさんから聞いた。魔力名残りのせいで苦しんでるって」


「!?」


「なんでも、物を壊しちまうって聞いたけど?」


 その問いに宇佐美は肩を震わせ、


「そうだよ」


 小さな声でそう呟いた。


「アタシ怖いの、この力のせいで友達を傷つけそうで。鉛筆を折っちゃうみたいにしたらどうしようって……」


「だったら練習しよう」


「え?」


 九条は当然の様に提案する。


「練習すればきっとまたいつも通りの生活に戻れるよ」


「そんなの……」


 無理だと口が動こうとした時だった。宇佐美に近づいた九条はその手を取ると、自分の右手と握手する様に手を握った。


 一瞬、何が起こったのかわからなかった宇佐美だが、それを理解した瞬間に手を引いた。


「何してるの!! くーちゃんの手が潰れちゃってもいいの!!」


「え? でも俺の手は潰れてないよ?」


「今のは偶然だっただけだよ!!」


 宇佐美は泣きながらそれでも叫ぶ。だがそんな姿を見て、


「だったら必然にしよう」


 そう口にした。


「だってこんなの寂しいだろ。家族とも、友達とも、これから出来るであろう恋人とも、自分の子どもとも手を繋げないなんてそんなの駄目だろ!! だから練習しよう。偶然を必然にして、いつかそれを当たり前に変えて。そうしたらきっと今の事なんて笑い話になるから。昔から、そしてこれから出会う宇佐美七海と手を繋ぎたいと思う人全員の代表として俺が練習に付き合ってやるから。もしもおまえの事バカにする奴がいたら俺が守ってやるから。だから!!」


 そっと手を指し延ばし、


「おまえにそんな暗い場所は似合わねぇよ。だから七海が好きな奴らがいる明るい場所に行こう。俺も手伝うからさ」


 まるで日輪の様な笑顔で彼女がいるべき場所への導き手となった。


 それから一週間ほど九条も学校を休み、一緒に力をコントロールする為の練習をし、ある程度形になってからではあったが宇佐美もまた、いつもの様に学校に通えるようになったのだった。

 

 その当時、小学五年生の九条安久谷は頭も良く、運動神経も良く、クラスの中心人物だった彼には多くの友だちがいた。


 優しく気が利く性格で、よく母親の手伝いもしたし、先生からの信頼も厚かった。


 九条安久谷と言う少年は毎日を楽しいと断言で出来る様なスクールライフを送っていたのだった。







――――――――――それが起きるまでは。


作者:こんなにもリア充街道まっしぐらだったはずの九条がどうしてこうなったのか? 過去編ではそこに触れたいと思います。

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