第27話『それでは皆さん、これより魔力の授業を行います』
第27話『それでは皆さん、これより魔力の授業を行います』
登校直後の教室。自分の席に腰かけ、
「ふわぁ~…………」
俺は大きく欠伸をした。
「お、どうした? 寝不足か?」
声を掛けて来る智樹。
「ああ、ちょっと野暮用でな」
そう言うと俺はカバンから赤いクリアファルを取り出す。その中身は端をホチキスで留めただけの数枚の紙だった。
「なんだそれ。新しい論文のコピーか?」
「いや、違う。だがこれはおまえと無関係な訳じゃ無い。それどころかこのクラス全員に関係ある事だ」
「はぁ? このクラス全員? ますますわからんぞ」
「まぁ、楽しみにしとけって。今日中に分かるからな」
首を傾げる智樹を尻目に、俺はそのファイルを手に教室を出た。
時間は経過して三時間目の授業が終わり、四時間目が始まるまでの五分程度のささやかな休み時間。
「そういえば次は魔力の授業な訳だけど、正直平賀くんは教わること無いんじゃない?」
委員長がそんな事を言って来た。
魔力の授業。本来ならば専門校でしか行わない科目だったのだが、近年の魔法師の活躍や仕事に魔法を用いたりなどの社会への一般進出に伴い、高等学校の教育カリキュラムにおいて必要最低限度の知識を付ける事を政府が義務付けた。
そう言ってしまえば聞こえはいいが月に一度あるかどうかくらいの為に、認識としては道徳の授業程度だ。
流石に専門校ともなれば更に進んだ内容も教わるがうちは所詮普通校。魔力に関する専門の教師は普通校にいないが故に、各クラス担任がその代役を担うことになるのだが正直な所、薄っぺらい教科書を沿うように読み上げるだけの至極つまらない授業内容となるのが普通らしい。
因みに委員長は同じ中学の連中に『委員長』と呼ばれ続けた結果、見事に学級委員長の地位を獲得した。
本人曰く『まぁ、やりたがる人がいなければやるつもりだったし』との事なので彼女の意識の高さには本当に驚かされる。
「まぁ、そう言うなよ。意外とタメになる事教えてくれるかも知れないぞ?」
「一概に無意味とは言え無いけど結局やる事なんて知ってる事の再確認でしょ? それなら平賀くんが教師役した方が色々面白そうな事聞けそうだけど?」
「委員長の言いたい事は理解できるけど、国語科の先生である小鳥遊先生に魔力に関する高度な内容を期待するのは間違いだろ。それでも最低限の事を改めて教えてくれるんだ。こっちも最低限の敬意を払うのが普通だろう?」
「……それもそうね」
「そうだ智樹、少し協力して欲しい事があるんだけどいいか?」
「何だよ、最近のおまえの協力要請は碌な事が無いから嫌なんだけど」
「そう言うなよ。なに、そう難しい内容じゃないさ」
その後智樹に協力を取り付けた所でチャイムが鳴った。
先生が教室に入って来て、
「それでは皆さん、これより魔力の授業を行います」
「皆さんもよく知っているこの魔力と呼ばれる不思議な光。誰の体にも存在するこの力ですが、未だに多くの謎に包まれています」
教科書を手にし、それを読み進める小鳥遊先生。
「ですがこの魔力は私たち人間に魔法と呼ばれる力を授けてくれます。しかし魔法はとても恐ろしい力です。人を傷つけ、恐怖に陥れることが出来るからです。それでもその力は人を守り、人々を笑顔に変える事も出来る素晴らしい力でもあります。この授業では魔法との正しい向き合い方を教えていきたいと思います」
そして先生は授業を進める。内容は以下の通り。
魔法にはランクがある事。
魔法には使える人と使えない人がいる事。
それを差別しない事。
『対魔法犯罪』から人々を守る魔法師と呼ばれる人々の存在。
等々だ。
正直生徒側としては魔力云々よりかは、道徳の授業を聞いている感覚である。
それはさておき案の定この時間で進める内容が終わってしまい、時間が余ってしまっていた。
他のクラスでは自習にしたりするらしいが、このクラスはどうも違うらしく、
「ここまでの内容で質問がある人はいますか?」
質問を受け付けるらしい。だが、
「……………………」
誰も質問はしない。それもそうだ。生徒からすれば知っている事の再確認と道徳心に訴えかける内容であるこの授業に質問何て物は無い。
だがそれは…………、
「先生、質問です」
「はい、広田くん」
小鳥遊先生…………そして俺の読み通り。そしてこれからが、
「そう言えば魔力ってわかんない事だらけなんですよね?」
「そうですね」
「だったら、どうやってランク分けしてるんですか?」
「ちょっと、広田くん。専門の先生じゃないんだからあまり困らせるような事は……」
委員長が小声で智樹を叱ろうとした。だが、
「良い質問ですね。では残り時間で魔力のランク分けに関する説明をしましょうか」
「え?」
委員長の顔が戸惑いを見せているのを尻目に、小鳥遊先生はその手に赤いクリアファイルを持ちながら笑顔でそう言った。
そうだ、これからが魔力の授業の本番であり、小鳥遊先生が俺に協力を求めて来た本当の理由だったのだ。




