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メタモルフォーゼス  作者: 新町 東
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第22話『分かりました。協力させて頂きます』

第22話『分かりました。協力させて頂きます』


「来てくれたのね、平賀くん。そこに席掛けて」


「失礼します」


 既に座っている小鳥遊先生と向かい合う様に並べられていた椅子に座った。


「さてと。まずは忙しい中来てくれてありがとうね、平賀くん」


「いえ、それは別に構いませんが……先生」


 周りを見渡して一言。


「お一人なんですね?」


「どういうこと?」


 俺の予想としては他にも強面な先生を配置して圧力を掛けてくるもんだと予想していた。


 しかし部屋の内部には小鳥遊先生一人。正直言ってしまえばたった一人、それも新任の若い女の先生だけでは迫力に欠けている。


 説得する事を容易と捉えられているのか? 


 それとも何か切り札があるのか?


 気を引き締めて本題を切り出す。


「先生の要件は予想できています」


「え、そうなの?」


 俺の言葉に対し狼狽えて、そして申し訳なさそうな小鳥遊先生。


「ハッキリと言います。お断りさせてください」


 俺は座ったまま深く頭を下げる。


「……そうよね、聞かなくても分かっていた事だもの」


 小鳥遊先生は目を伏せる。だが、


「すいません、ですが先輩たちを裏切ることは出来ないんです」


 そんな俺の言葉に、


「え? 何のこと?」


 そう返された。


 何か雲行きが怪しくなってきた俺は確認を取る。


「え? 先生の頼み事って『エスターテ杯』を辞退して欲しいって言うものじゃないんですか?」


 それを聞いてポカンとしていた小鳥遊先生だったが、首を横にブンブン振ると、


「それは誤解よ、私がお願いしたいのは個人的な事」


 どうやら俺が危惧していたことはただの杞憂でしか無かったみたいだ。


「そうだったんですね。これは失礼いたしました。こちらの早とちりで」


「別に気にしないで。平賀くん達にとってはそっちの方が大事な事なんだから」


「一応お聞きしておきたいのですが『エスターテ杯』についてどう思っていますか?」


「他の先生方から聞いたよ。出場しようとしてるらしいね」


 小鳥遊先生は先程とは違い、明るい声で聞き返して来た。だからこそ、


「止めようとはしないんですか?」


 ここで聞いておく必要がある。そう判断した。


「私は先生としても、個人的にも応援したいと思っているけど?」


 素直にそう言われた。


「他の先生方もそう。最初の頃は問題視されてた方もいたみたいだけど今じゃそんな事言う先生は殆どいないわね」


「意外でした。学校側はもっとこの件に対し危機感を感じているものかと」


「学校側が感じている危機感なんて、生徒会の人数が足りていない事位じゃないかな。他の先生が城之崎さんに、『出場しないけど生徒会には入りたい』って生徒がいたら入れてあげて欲しいと進言したみたいな事は聞いていましたし」


 マジかよ。まさかの学校公認処か学校が応援していたとは。朝月高校半端ねぇ。


「なるほど。どうやらこちらが勝手に誤解していたみたいですね。では先生」


 一安心し、ほっと胸を撫で下ろしてから仕切り直す。


「個人的な相談とは一体何でしょうか?」


「その事なんだけどね、実は…………」


 その内容を聞かされる。その内容に俺は思わず声を出してしまう。


「そこまでやらなくてもよくないですか?」


「でもね、きっと関心ある生徒は多いと思うのだけれど」


「それに関しては間違いありませんが一般校でそこまでする必要も……」


「それも理解してるんだけどお願い!! そこを何とか!!」


 必死になって懇願する小鳥遊先生。


 先生がやろうとしている事は決して無意味ではないがこの学校においては重要視されていない事。


 と言うかまず前提として生徒に頼む事柄ではまず決して無い。


 普通に考えればお断り案件だが、


「分かりました。協力させて頂きます」


 これは一つのチャンスだ。


 これに興味を持たせることが出来ればもしかしたら新メンバー獲得のチャンスに結び付くかもしれない。


 可能性は低いが、その低い何かですら手繰り寄せなければ可能性にすらならないのだ。


「本当に!! ありがとう!!」


 先生の顔に満面の笑みが零れた。




「さてと、何にしましょうかねぇ?」


 先生と打ち合わせをしていたらとっくに生徒会の活動時間を過ぎていた為に、その日は帰ることにした。


 智樹はどうやら用事があって一足先に帰っていたらしい。


 帰宅後、家族で夕飯を食べ、風呂に入り、自室に戻ると先生の頼み事を成功させるべく、行動を開始した。


 俺にはその経験は無い訳だが、まぁ何とかなるだろうと言った楽観的観測の元作業を進めるのであった。


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