第14話『それは私のせいです』
第14話『それは私のせいです』
城之崎先輩は暗い表情をしたまま俯いてしまう。
「『シュレッケン襲撃事件』か……」
その事件の事なら、『シュレッケン襲撃事件』の事なら俺も知っている。
シュレッケンとは、国際魔法テロリスト集団の中でもトップクラスの危険性を持つ者達だ。
所属メンバーの中には元魔法師やSランクの魔法を使用できる者まで居るとのこと。
それがこの町に大規模な襲撃作戦を仕掛けて来たのだ。
その結果魔法師と市民を合わせ、多くの死傷者を出してしまった最悪の事件と今でも語り継がれている。
目的は判明していないと世間には公表されたものの、人々の間では様々な憶測が建てられていた。
城之崎先輩は再度昔を語り始めた。
その時私は、母親と兄の三人で近くのショッピングモールまで買い物に出かけていました。
するといきなり爆発音が響き渡り、辺りは大混乱となりました。
聞こえてくるのは人々の悲鳴と絶叫。
兄は混乱する私と母の手を引き、その場から逃げ出しました。
そしてある程度の所まで逃げた時兄は、
『逃げ遅れている人を助けてくる』
そう言い残して今まで来た道を戻って行きました。
そしてそれが兄の最後の言葉となったのです。
「…………なるほど、確かに辛い話です。ですがそれはお兄さんがそうなってしまう可能性を知った上で、自分の意志でやった事です。それを協会側に恨むのは間違いじゃないですか?」
「ではその時、協会所属の魔法師はどうなっていたか知っていますか?」
「……殆どがシュレッケンにより打倒されました」
「…………そうです、本来は誰よりも魔法を熟知し、鍛え上げ、市民を守る為にその力を行使しなければならない人達がいとも容易く一人、また一人と倒れて行きました。彼らが強く、シュレッケンを容易く殲滅出来ていればもっと多くの人々を救えたはずなのに……兄も生きていたかもしれないのに……」
悔しそうに唇を噛みしめ、拳を強く握る。
「そして事件を終わらせたのは当時の陰陽学園生徒会メンバーであり、多くの現役魔法師をも打ち破ったシュレッケンの幹部。その殆どをたった一人で倒した猛者。平賀くんのお兄さん、平賀和昌さんです」
そういえばそうだ、あの事件は兄貴の名を世界に知らしめる最初の事件だった。
「それだけではありません、あの事件では関係の無い多くの人が誰かを助ける為にその力を行使しました。ランクなんて関係ない、魔法師なんて関係ない。相手が自分よりも強くても関係ない。私の兄もそんなヒーローの一人だったのです。ですが……」
城之崎先輩の目元に涙が浮かぶ。
「やっぱり悔しいじゃないですか!!私が自慢に思っていた兄がずっと憧れていた人達がこんなにも情けないなんて。これならば肩書きも力が無くとも勇敢に立ち上がった一般市民の方がよっぽどヒーローじゃないかと。シュレッケン相手でも自分に出来る事を命を懸けてやり遂げようとした兄の方がよっぽど……よっぽど!!」
「……」
俺は何も言えなかったが城之崎先輩が言いたい事は理解できた。
「つまり城之崎先輩はランクに関わらずとも弱い人達の為に戦えるのであれば魔法師の資格があってもおかしくは無いと言いたいわけですね」
「そうです。流石にDランクの人は成れないのも致し方ないと思いますがCランクは魔法が使える訳ですから除け者にされる筋合いは無いと思います」
確かにそうだ、DとCに決定的な差はあれど、CとBの差は大した差ではない。
ランクにおける差は、高いほど長時間使い続けることが出来る点と、高いほど希少性の高い魔法を持ち合わせている可能性の高いと言うこの二つだ。
一つ目は文字通りなので説明を省くが、二つ目に関しては意外と重要だ。
Cランクの魔法はありがちな物が多いが、Sランクの魔法はその殆どがオンリーワンな上に高い質を兼ね備えている場合が多い。
かと言ってCランクでも珍しい魔法を持っている者もいればSランクでも平凡な魔法を持っている者もいる訳だ。
因みに兄貴はSランクだが非常に平凡な魔法だ。
あの兄貴が使わなければ至って平凡な魔法のはずだ。
と、若干脱線したが俺が言いたい事はCランクが魔法師でも何ら問題ないという事だ。
実際にCランクが採用試験で受かって魔法師になった例もあるらしい。
「確かにそれであればむしろCランクに専門校への入試資格を与えないのは納得出来ないと」
「と言うか何故Bランク以上でなければならないのかを問い正したい所です」
言い分は理解できたが、肝心な事がまだ分かっていないのでそれを追求することにした。
「……城之崎先輩が教会側を良く思っていない事は判りました。ですがそれがどうしてエスターテ杯に繋がるのですか?」
「それは…………」
「それは私のせいです」
ずっと黙っていた柄巻先輩が声を発した。
「柄巻先輩のせい?」
「私の父は魔法師だったんです。ですが仕事中の事故の影響で第一線を退くことになりまして、その意思を継ぐために私は魔法師を目指しました。ですが……」
「それが佳澄はCランクだったのよ」
「はい、それでも諦めたくなかったので採用試験でなるしかなかったのですが余りに高い壁だと加奈子から教えられたのですがやはり諦められず、どうしたらよいものかと考えた所加奈子に言われたんです『エスターテ杯にでて優勝すれば箔が付くんじゃないか』と」
そういう事か。
確かに自分よりも上のランクの人間に埋もれたままただ試験を受けるよりも『Cランクだけどエスターテ杯で優勝しました』と言う箔があれば負けない処か他の人々よりも確実に一歩前に出れる。
一歩出る出ないの差はこの場合において非常に大きいと断言できる。
だからこそ言わねばならない。
「お二人の考えは理解しました。だからこそ言わせていただきます。城之崎先輩、あなたのやろうとしていることは正直、メチャクチャです」




