第11話『私ですか?私は……』
第11話『私ですか?私は……』
エスターテ杯とは、年に二度ある魔法師専行の学生向けの魔法競技大会のことだ。
因みに『エスターテ』とは『夏』と言う意味だ。
一応もう一つの大会の名称は『インヴェルノ杯』、冬と言う意味だ。
一般的にエスターテ杯は三年間の集大成であり、三年生にとって最後の大会であり、魔法協会側に対してアピールする為の大事な大会だ。
一方、インヴェルノ杯は同じ大会であるがどちらかと言うと新人戦と言った方が適切だ。
内容は簡単、各学校代表者五人選抜による団体戦だ。
もちろん魔法使用ありの、全身全霊を掛けた戦いだ。
流石に殺しは無しだが、ケガを負う事も勿論あるし、何より本来は参加しなくても魔法師になること事態は確定している。
それでも出ようとするのは自分実力を協会側にアピールする目的もあるが、学校の代表としての自覚や責任感あっての事だろう。
現にエスカレーター式で余程の問題を起こさない限り魔法師にはなれるが、競技大会で優秀な成績を収めた生徒には協会側もそれなりの待遇をしてくれる。
そんな大会に、
「本気で出ようと思っているんですか?」
「ええ」
ハッキリとした返答が帰って来た。
冗談ではない、正気の沙汰じゃない。
普通科の高校に在学の生徒は大きく分けて二つに分けられる。
一つは魔法師専行の学校を受けたが落ちた者。
知り合いで当てはめると委員長が当てはまる。
もう一つは魔法師に興味がない、もしくは魔法師専行の学校の入試基準を満たせなかった者だ。
前者は言わずもがな、後者は、Cランク又はⅮランクの者。
俺や智樹がこれに当たる。
つまり会長が言いたい事に対し、
「無謀ですね」
そう言うものの。
「知っています、ですが」
城之崎先輩はその顔に似合わない不敵な笑みを浮かべ、
「だからこそ挑んでみたいんじゃないですか、エリートと呼ばれる人達の中でも特に選りすぐりのエリート達が出揃う大会。そんな彼らに一泡吹かせたい、そう思いませんか?」
「…………」
「優秀な自分達の為の祭典、そう思い込んでいる人達にどこにでもある普通の学校の普通の生徒が勝利したらさぞかし協会側も驚くことでしょうね」
普段と何ら変わりない笑顔で、何ら変わりない口調でとんでもない爆弾発言をした。
「……一つだけ聞かせて下さい、城之崎先輩の魔法ランクは幾つなんですか」
「私ですか?私は……」
「どういう事だ……」
その日は「考える時間が欲しい」と言って抜け出してきたが、俺は城之崎先輩に対しての見方を改める必要性を感じた。
まずは整理しよう。
最初は普通校が大会に出られるのかだが、これに関しては問題ない。
これはあくまで競技大会なのだから参加するだけなら問題ない。
ランクに関してもそうだ、魔法師専行の学生は全員がBランク以上の魔法が使える者しかいないが、一般の学校はその限りではない為、Dランクも出場出来る。
それでもやはり、魔法競技大会故にCランクはまだしもDランクが出たら大会をバカにしていると他校や観客からブーイングを飛ばされても致し方ない。
それにしても……
「あの執着心は何だ?何故城之崎先輩は何故普通校での出場にこだわる……」
引っかかる事は多い、疑問も多いし、不信感も感じている。
だが一番は最後にした質問、その答え。
『私ですか?私はSランクですよ』
DからまであるS魔法のランクにおいてSランクとは文字通り最強のクラスであり、推薦枠で軽々と魔法師専行の学校に入ることが出来る唯一の領域。
それ故に思う。
何故エスターテ杯に出ようなど考えている人物が、しかもSランクと言う才能に選ばれし者の称号を持っているのに何故。
「何故普通校に入学したんだろうか」
その理由が全く分からなかった。




