勇者という抜け殻
残り1話
崩れた魔王城の瓦礫の中にそよ風が吹く。
俺は星を眺めて夜を明かしていた。
魔王も魔族も世界を脅かした存在は全て消えた。
それなのに胸の奥には何も無い...。
空を見上げ、ただ喜びを噛みしめたかった。
「終わったんだな......」
口に出してみても実感はない。
魔王を倒せば何か変わると思っていた。
達成感とか...
解放感とか...
喜びとか...
そんなものを想像していた。
それなのにただ空っぽなだけ
家族の顔や友人の顔が脳裏に浮かぶ。
ーーもう会えない。
この世界にもういない....
それは魔王を倒しても変わらない。
魔王城を去り、世界を見渡す。
崩れた五百年前の都市。
焼けた村、崩れた家。
人は生きている。
だが豊かではない。
魔王は倒した。
それなのに....
「救えていないじゃないか......」
思わず呟く。
....益々自分の存在価値が分からなくなる。
自分は勇者だった。
世界を救う存在だった...
だが目の前の現実はあまりにも酷い...。
村を離れようとした時、
「ルスト?」
震えた声で誰かが声をかけてきた。
振り返るとエルダが立っていた。
エルダは「頑張ったんだね」とだけ言い俺を抱きしめた。
「エルダ...俺は生きる意味を見失った...」
「家族も友人も....みんないない....」
「......」
エルダは黙って聞いてくれた。
「そう...」
「...でも私達にできることはまだあるよ」
エルダは村の人達を呼んで伝える。
「彼が復興の手伝いをしてくれるよ。」
俺は一瞬固まり苦笑する。
「...勝手に決めるなよ」
「でも暇でしょ?」
エルダは笑っている。
「君はまた人助けしながら生きればいい。」
「これから勇者じゃなくルストとしてね。」
俺は静かに頷く。
「あっ!」
少年が俺を見て駆け出していた
。
「勇者様だ!」
「村の周りの魔物も魔族もいなくなって村のみんな元気になった!」
どんどん人が集まる。
「あの時はありがとうございました!」
自分が思っていた以上に俺に救われた人間はいたらしい。
その事実に俺は救われた。
しばらく時が流れーー
夕日が沈む中、瓦礫を運び、畑を耕し、家を建てている。
責務は果たされ力のほとんどを失った。
それでも今は五百年前に失った日常がある。
エルダもいる。
村人たちもいる。
皆が前を向いている。
「ルストさん!」
誰かが呼ぶ声が聞こえて振り返る。
自然と足が動いた。
「今行くよ」
その言葉は。
魔王討伐のためではない。
誰かを守るためでもない。
自分で決めた言葉だった。
勇者ルストの旅は終わった。
だが、俺のルストとしての人生はまだ続いていく。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この物語を最後まで見届けてくださった皆様には、本当に感謝しています。
この作品は、無双の爽快感と主人公の泥臭さをあわせ持つ物語を書きたいと思い執筆しました。私の作品を少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
今後はXなどで本作の設定資料や裏話の投稿、別サイトでのリメイク版の投稿などを考えています。
Xアカウント : @naro_NAriS
また、新作としてダークコメディ寄りの作品も構想中です。社会のはみ出し者たちが繰り広げる、少し物騒で少し笑える物語になる予定です。もし興味があれば、そちらもよろしくお願いします。
改めて、本当にありがとうございました。




