火蓋を切る Ⅰ
ルストが村で魔族と交戦していた頃――
それは魔王城の一室、薄暗い広間にて行われていた。
四天王と魔王による会議だ。
空気は重く誰も軽口を叩かない。
理由は単純、
「勇者、ルスト....。」
魔王が口を開く。
「あまりにも近づきすぎている。」
四天王の内の1人、呪縛のディレも口を開く。
「....魔王軍第1、第2、第3、第4部隊、勇者の手によって全滅しました。」
沈黙。
四天王、最古参、暴力のスティルフィスが呟く。
「主戦力はもう俺達しかいない」
新参、爆撃のヴァレッドが焦る。
「話している場合じゃないでしょう!今からでも止めに行きます!」
黄色い瞳が細くなる。
「待て」
「主戦力に数えられなかった者達が残っている。」
実力が足りない者達、それでも量がある。
「それを全てぶつけるのだ。」
ディレが疑問を投げる。
「ですが魔王様、勇者が真っ正直に戦ってくれるか分かりませんよ?」
だが、
四天王の一人が笑んでいる。
精神魔法を扱う四天王、心操のイルジオン。
「行動の先に犠牲者があればいい....」
静かな声だった。
「情報によれば、勇者は自分の意思で人を犠牲にすることができないようです。」
空気がわずかに動く。
「ほう?」
「――――――――――」
「なるほど...。時間を稼げるならそれでいい。」
「私の力の蓄積が終われば....
理想が叶う...。」
場の空気が静まる。
会議は終わった。
村は守れた。
だがーー
死者が出ている。
俺のせいだ....
もっと早ければ....
もっと迷わなければ....
違う動きをしていれば....
頭の中に何度も悔いが廻る
だが答えは出ない。
村人たちも言葉がうまく出てこない。
「助かった.....貴方がいなければみんな死んでいた...。」
責める意思も慰める意思もない言葉だった。
ただ、喪失感だけが伝わってくる。
「そうか...。」
短く返し、村を去る。
重い空気だけが残っている。
森を抜け、しばらく歩き続けた。
魔王城が近い――
空は暗く、魔力が漂っている。
そして前方には魔族の群れがいた。
何百、何千かもわからない...
道を埋めるように立っている。
....邪魔だ。
無視してそのまま進めばいい...
時間を使う意味はない。
だが――
魔族の一体が嘲笑う。
「無視して進めばいい――
俺達は村を一つ残らず焼き尽くす、それだけだ。」
自分に向いていた憎しみや怒り、
その全てをぶつけるように言葉が漏れる...
「やってみろ...」
魔族達は冷や汗をかいている。
無謀だと分かっていても感情が身体を突き動かす。




