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第一節「浮かされる思考」

熱こそあるが、寝転んでしまえば暇なものだ。

動かなければ痛みや(だる)さもほとんど無く、思考もはっきりとしている。


腹はそれなりに空いてきている。

今朝は食事を増やす要望をし損ねた。

だが、今後悪化して吐き気が来るかもしれないので、難しい。


衣擦(きぬず)れが気にかかるほど、極めて静かだ。

足音すらごく稀に、扉越しに聞こえるのみ。

人払いを頼んだのは自分だが、この部屋の廊下は元々人通りが少ないと見える。


無理もない。

教室で聞いた話の捉え方が確かなら、ここは天宮(てんきゅう)で、

割り当てられたこの部屋を過ぎて登れば、天使と神がいる場所だ。

用がある者は殆ど無いだろう。


眠気はあるが睡眠には至らず、眠いと言う感覚だけの意識が浮上している。

目を閉じれば、体を巡る熱を感じる。

しかし、熱さで言えば起きた瞬間が山場だった。

一度でも深く眠ることができれば回復が期待できると、コッパーは経験則からそう考える。


眠りの導入として、この数日のことを思い返してみることにした。

こうして熱が出なかったとしても、いずれその時間は取りたいと思っていたのだ。


さて、何から考えようか?


……そう頭の中で問いかけてみても、

いかんせん……何から取り出せばいいかわからない。

この数日で、この国に着いて思うことが、多くあったはずなのに……


……そうだな、とりあえず手先足先にあるものから、思ったことを並べ立てれば……

そのうち、()()()()()を思い出すだろう。


まず、自分の肌にかかるこれは、毛布だ。

動物の毛でできている、よく親しんだもの。

赤を基調とした濃い色で織られている。


今載っているのは、石組みの寝台。

窓が見える。

石組みの壁に木枠の窓。

木枠は黒く塗られている。

天井に近い方の窓は革張りで、日が透けている。

下は板で覆われていたが、今は開かれてゆるく風が入ってくる。

足元に意識が行けば、朝食の盆がある。

腸詰、野菜の汁物、焦がし麦、乳酪(バター)

まだ片付けは来ていない。

麻布のような貫頭衣を上半身で帯閉めた装束の神下(しんか)が来るのだろう。

その後は神官に話を聞かなければならない。

あの、赤く染められた外套の。


――そうだ、私の()()()()()の大きな一つを思い出した。


この国は小さい。

そして、すり鉢状の地形だ。

つまり、昨日宮からの下り坂から見渡した時見えたのがこの国の全て。

この箱庭のような国の()()と思われる部分は、ほとんど見渡せたはずだ。


毛布を作るための家畜。

家具を組むための木。

染色をする職人。

布をなめす工房。

麦を食べるための畑。

肉や乳を食べるための動物。

国民を潤すための水場。


――――未だ、一つも見かけていない。


……。


……なぜ私は、()()()()()に気付ける?

コッパー視点に戻ってきました。

ここから思考と過去と観察のお話。

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