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大和撫子さまのお仕事  作者: 小茶木明歌音
第四章
218/346

知の一族のお嬢様の目的




 騒動から数時間経ち、月がぽっかりと浮かぶ夜を迎えた「夢幻ノ夜」の店内は……。




「はいっ! では御注文繰り返させて頂きますっ!」


 美月が元気良く注文を取れば、


「はい、二番テーブルさんの枝豆できたよー。運んでおくれー」

「おい、次は五番テーブルの注文に取りかかれ」


 厨房で肇と砕条が引っ切り無しに動き回り、


「二番テーブル運びまーす。天海君は四番テーブルにビールと大和酒よろしく」

「は、はい」


 星矢と天海が店内を縦横無尽に駆け回る。


「みんな頑張って~」


 身体が丈夫でない諷花は働き回る全員に声援を送る。


 諷花を含め、気を失った客達はあれから間もなく目覚め、女給達も復活した「夢幻ノ夜」の店内はすっかり活気が戻っていた。

 客もひっきりなしに出入りし、今宵も大繁盛だった。


「いや~っ! 楽しいわ~! ウチ、一遍ウェイトレスさんの仕事してみたかったん!」

「そ、そうか……俺はもうごめんだ……」


 楽しそうな美月の一方で恥ずかしがり屋の天海はげっそりである。


「……ところで、美月」

「ん?」

「その……紅玉先輩は大丈夫だろうか? その……」

「大丈夫やで。誰が傍にいると思っとんの?」


 仁王のような憤怒の形相で怒っていながらも、その金色の瞳からは紅玉を想う優しさに満ち溢れていた。

 だから、美月は蘇芳に任せて出てきたのだ。


「蘇芳さんがおれば紅ちゃんは大丈夫」

「……そうか」


 天海がほっと息を着いたその時だ。


 突如店内で黒い渦が現われる。

 即座に臨戦態勢に入る美月と天海だったが、渦を巻いて現れたのは地獄の門だった。

 そして、扉を開けて出てきたのは幽吾だ。


「ゆ、幽吾先輩……!」

「どないしたん? 急に現れて」

「ああ、驚かせてごめんね。すぐ退散するから」


 幽吾はそう言って笑顔を消すと、数歩歩いてその者の前に立つ。


「お嬢ちゃま」

「だから、その呼び方止めてって……」

「……あざみ、面貸せよ」

「…………」


 怒りの声を露わにする幽吾に、天海も美月もハラハラしてしまう。

 客達も何事かとざわめき出す。


 あざみは溜め息を吐くと立ち上がった。


「あーあ、おっさんのせいで酒は不味いし、帰れないし、挙げ句幽吾に捕まるし、最悪」


 あざみの言葉に金剛がニッと笑う。

 その笑みを見て、幽吾は金剛の意図に気付く。


「……金剛さん、もしかしてわかっていて」

「このお嬢様が何をしたかまでは、おいたんの異能ではわからんけどね。何かに呼ばれた気がしてこの店に来たわけだからな」


 金剛の異能――それだけ聞いて幽吾は全てを察した。


「相変わらず有能ですね。その『直感』の異能」

「どうも」


 そして、幽吾は冷たくあざみを睨むと言った。


「……あざみ、来い」

「はいはい、行きますよ」


 あざみと幽吾が門の中へと入ると、地獄の門は閉じ、店から一瞬にして消えてしまったのだった。


 訳が分からず首を傾げたままの天海と美月に金剛が言う。


「ほらほら、店員さん。キビキビ働け。ついでにお酒おかわりね」

「あっ、は、はい……!」

「大和酒追加~!」


 パタパタと慌ただしく去っていく天海と美月を見送りながら、金剛は最後の一口を飲み切った。




*****




 地獄の門の向こう側はどこまで無続く真っ暗な闇だった。

 幽吾の背中を見つめながら、あざみは言う。


「それで、こんなところまで連れてきて何の用?」

「……とぼけたって無駄だよ。鷹臣(下衆)が吐いたからね……」


 振り返った幽吾は強張った表情であざみを見ると言った。



鷹臣(下衆)に紅ちゃんを襲わせたのは、君だね……あざみ」


 幽吾のその言葉に、あざみはニヤッと笑うだけだった。




**********




 時は遡る事、約半月前――。

 各御社や各部署の神子管理部職員との面談を終えたあざみが、幽吾だけを帰し、鷹臣だけを残らせた後の事だ。


「さてと、勤務時間外まで残ってもらって悪いわね」

「……それで、話ってなんですか?」


 身に覚えが全く無い鷹臣を余所に、あざみは引き出しから書類を取り出す。


「……中央本部人事課所属、仮名、鷹臣。正環十九年一月七日生まれ。現在、三十二歳。本名、小野寺豊。父は某大企業の重役。母は専業主婦。兄弟はおらず一人っ子。某私立大付属学校の幼等部から在学。大学までその付属大に通う。そして、太昌七年神域管理庁入職。おーおー、見事な箱入りお坊ちゃまだこと」


 ニッと笑ったあざみに鷹臣は眉を顰めた。


「……勝手に人の個人情報調べて、何ですか?」


 鷹臣の指摘を無視して、あざみは書類の二枚目を確認する。


「アンタのお母さん、八大準華族の『豊の一族』の出身だったのね~。『豊の一族』は『知の一族』の分家……要は、アンタはアタシの遠い親戚」

「…………」

「家督はアンタのお母さんの妹さんが引き継ぐ事になったから、アンタのお母さんは嫁がされ、八大準華族とは無縁となった。だけど、アンタのお母さんはよっぽど華族に戻りたかったんでしょうね~。アンタに『豊』って名付けたのもその未練の現れでしょ?」

「…………」

「だから随分とママに甘やかされて育ったみたいね」


 あざみは眉を顰めて睨みつけるように言った。


「某私立大在学中、所属していたサークル内で同大学在学の女子大生相手に強姦したとして、アンタとアンタの友人数名は容疑者として告発される。しかし、証拠不十分という事もあり結局不起訴。だけど、この件に、アンタのお母さんが関わっていたみたいね……腐っても『知の一族』の分家の生まれ……ほーんと、悪知恵ばっかり働いて困るわね」

「……………………」


 鷹臣は何も話せない。顔色がどんどん悪くなっていく一方だ。


「ちなみに神域管理庁に入職してからも女性問題が常に絶えず、挙句大きく取り沙汰にされず有耶無耶になることがほとんど。まあ、それも悪知恵の働くママのおかげですかね~~?」

「……それが?」

「……は?」

「それがどうした? そんな昔の事、今更掘り返したって……法律上、俺は無実だ」


 開き直る鷹臣に一周回って感心してしまう。


「まあそうよね~……強姦事件は不起訴になっちゃったし、最近の女性問題も大体お金で解決しているみたいだし……」


 しかし、あざみは躑躅色の瞳を妖しく光らせ、ニンマリと笑う。


「じゃ、お金で解決していないやつはどう?」

「…………は?」

「アンタ、三年前に起きた娯楽管理部による誘拐事件に関与しているんでしょ?」

「――っ!?」


 あざみの台詞に鷹臣は思わず動揺してしまった。

 そんな鷹臣の反応にあざみは楽しそうにニヤリと笑う。


「あははっ、わかりやすい反応をありがとう~。でも、たかがこれくらいで顔に出るようじゃ『豊の一族』でも落魄れ扱いね」

「な、んで、そんな事を……?」


 動揺を隠しきれない鷹臣に、あざみは己の躑躅色の瞳を指差しながら言った。


「アタシの異能について教えてあげる。その名も『罪科の首輪』……罪を犯した人間や心に悪意を抱える人間の首にまーっくろな首輪が見えるっていう能力よ……そして、アンタの首にも見えるわよ。まーっくろな罪の首輪」

「っ!!??」


 鷹臣は慌てて首元を隠したが、時はすでに遅い。


「かつて皇帝陛下に使えていたアタシのご先祖様の中にも同じ異能を使えた人がいて、その異能を使って皇族に近づく黒い思惑を抱える邪な人達を排除したらしいわ。いやあ便利な力よね」


 楽しそうににっこりと笑うあざみを、鷹臣は青くなって睨む事しかできない。


「そして、その首輪を通して、その人間がどんな罪を犯してきたのか一瞬で分かるわけ」

「っ!!」


 あざみは躑躅色の瞳を光らせて、鷹臣の首輪を見た――瞬時に頭の中に鷹臣の罪が流れ込んで来る。


「三年前の皐月に現世で起きた女性や少女が突如失踪した事件。被害者は共通として皇宮駅までの目撃情報はあるが、その後の消息は不明。唯一捜索していない場所が神域管理庁管轄内のみ」

「……やめろ」

「警察は水無月に神域管理庁に行方不明人物の情報を公開し、解決の為の協力要請をする」

「やめろ……っ!」

「神域管理庁……特に中央本部、神子管理部、神域警備部は犯人探しを重点的に行った。アンタもその一人だった。そしてアンタはその要請からわずか数日後、ひょんなことであっさりと犯人を見つける」

「やめろっつんてんだろ!!」


 しかし、あざみは止めない。


「犯人は娯楽管理部部長の最低最悪のゲスのおっさん。己の異能と神域管理庁職員の地位を利用して、現世から自分の好みの女性や女の子を誘拐して、己の欲望を満たしていた。本来であれば、発見したアンタが犯人の確保及び報告をしなければならないところを……アンタはそれを握り潰した」

「黙れえぇっ!!」

「あろうことか、犯人と共に誘拐された被害者を『玩具』にして遊んだ。何せ女遊びの激しいアンタにとって、欲を発散するだけでいい存在は見返りを求める女の子達と違ってリスクも何もない。アンタにとっては利益しかないわね~。挙げ句被害者は犯人の異能で起きたことはぜーんぶ忘れてしまう。まあなんて楽な後処理」


 「バンッ!!」――激しい音を立てて机が叩かれる。

 見れば鷹臣が焦った表情であざみを睨みつけていた。


「証拠を……証拠を出せよっ!! 首輪かなんか知らねぇけど、そんな推測じゃなくてちゃんとした物的証拠を出せよっ!!」

「……証拠ねぇ」


 あざみがパチンと指を鳴らせば、それは現れる。朱に近い橙色のふわりと揺らめく人形のようなモノ――式だ。

 そして、その手に持つのは少し土の被った木箱だった。

 その木箱に鷹臣は目を剥くしかなかった。


「はい、ご苦労さん。やっぱり身近な所に埋めていたのね~」


 木箱を開けると中に入っていたのは、たくさんの一斤染の小さな石だ。

 あざみはその石を鷹臣に見せつける。


「はい、これが証拠。どう? 満足?」

「な、んで……?」

「えっと、『記憶操作』だっけ? 死んだっていうゲスオヤジの異能。記憶を消したり、記憶を抜き取ったりすることができるヤバイ異能。消された記憶を戻す術式は開発されていたけど、抜き取られた記憶の方はどうやっても元に戻せなかったというアレ。まあそりゃそうよね。記憶そのものがなきゃ元には戻せないわよね~。で、これが抜き取られた記憶の石」

「何でお前がそれを……!? それは処分したはず……!」

「はあ~なるほど。この記憶の石が入った木箱を埋めたのはやっぱりアンタってことね。これが重要な証拠になるからって」


 自ら犯行を認めてしまっている発言をした事に、鷹臣は今になって気付き、狼狽えてしまう。


「ついでにイイこと教えてあげる。証拠を処分するなら絶対見つからないようにやりなさい。自分の行動範囲内で処分しちゃ意味ないでしょ。そんでもって埋めるだけじゃ足りないわ。灰になるまで燃やしなさい。あるいは粉になるまで砕き潰して海に投げ捨てるとか。尤も、そんな事したとしてもアタシがどんな手段使ってでも見つけ出すけどね」

「お前、どうやってそれを!?」

「簡単よ。神術のエキスパートに、物を探す神術をちょっと教えてもらっただけ~」


 鷹臣の頭に、地味な顔の眼鏡をかけた二十二の神子のへらりとした笑顔が思い浮かんだ。


「あとはアンタの行動範囲をローラー作戦しただけ。そしたらあっという間よ!」

(これが……四大華族……! これが、知の一族……!)


 絶句してしまう鷹臣を、あざみは冷たい視線で睨んだ。


「本家なめんな」


 そして、あざみは一斤染の石を手に取った。


「さてと、この抜き取られた記憶の石は誰の記憶かしら~?」

「やめろぉっ!!」


 鷹臣が手を伸ばすより先に、あざみは石の中を覗いていた。




 暗い部屋だった。見えるのは布団と畳。何かから必死に逃れようとする縛られた両手。

 ぱらりと畳の上に散らばるのは毛先だけが漆黒に染まった一斤染の長い髪。

 パタパタと畳の上に零れ落ちるのは記憶の持ち主の涙。


「ハハッ! ユキ! 男のくせにホント女みてぇだな、おめぇ!」


 楽しげだが肌が粟立つような気持ちの悪い声が響いた瞬間、視界が大きく反転する。

 そうして見えたのは、鷹臣の歪んだ笑いだった――。




 見た光景に、あざみは気持ちの悪さしか残らなかった。思わず眉を顰めて鷹臣を睨みつける。

 その鷹臣はあざみの式に巻き付かれて身動きが取れなくなっていた。


「……アンタも最低のゲス野郎ね」


 しかし、こんな状況下になっても鷹臣はニタリと笑った。


「俺をどうするつもりだ? 今更訴えたって何の意味もない。何せユキは俺の事を忘れて今は明るく元気に暮らしている。その記憶を元に戻したところでトラウマを思い出させるだけで何の意味もねぇ! つまり! 俺は! 誰からも訴えられない! 俺を訴える人間の記憶はここにあるからな!」

「訴える人間がいないから、自分は無実だって言うのね……ホント最低の底辺ね」

「なんとでも言えばいい! 結果的に俺は無実だ!」

「あーもー、うるさいわねー」


 こんな男のせいで人生を台無しにされた人達がいると思うと、世の中を虚しいものだと感じてしまう。


 だが、あざみにとってはこの男を利用する絶好の機会なのである。

 だからこそ、ここまで証拠を集めて追い詰めたのだから。


「……鷹臣、アタシと取引しない?」

「…………は? 取り引き?」


 訝しげに睨んでくる鷹臣をあざみは見下ろしながら言った。


「アタシの願いを叶えてくれたら、この記憶の石を今度こそ粉々に砕いて海に流してあげる。二度とこの石が表に出ないようにしてあげる」


 あざみの提案に目を剥きつつも、鷹臣はその提案に乗る他選択肢がない。


「……何をすればいいんだ?」

「アタシが神域に来たそもそも理由は一時的な神子管理部部長になって、神子管理部の立て直しをすることだけど、アタシにはもう一つ目的があるの」

「目的?」

「紅を神域から連れ出すこと」

「紅……? 〈能無し〉か?」


 〈能無し〉という呼び名にあざみは眉を顰めるも、話を続ける。


「あの子はこんな狭い世界にいるべき子じゃない。あの子はとても優秀で有能で全世界に通用する素晴らしい人なの。神子様に仕えるだけの人間にするのは勿体ないわ」

「……俺は、具体的に何をすればいいんだ?」

「簡単な話よ。紅が神域にいたくないと思う程のトラウマを植え付ければいいのよ。お得意でしょ? 女の子にトラウマを植え付けるの」

「っ!?」


 あざみの言葉の真意に気付いた鷹臣は目を剥くしかなかった。

 つまりあざみは、自分を使って紅玉を襲わせようとしているのだから。


 鷹臣はニタリと笑った。


「いいのか? 俺としても願ってもない話だぞ。あの女には興味があったからな。一石二鳥だ」

「……孕ませるのだけは止めてよ」


 あざみがパチンと指を鳴らせば、鷹臣を拘束していた式が消え去った。


 鷹臣は腕を擦りながらニッと笑う。


「驚いたな……まさか部長直々にそんな事を頼まれるとは」

「…………そうでもしないと、あの子は神域から離れないわ」


 あざみの言葉に首を捻る鷹臣を余所に、あざみは面談の時の紅玉の言葉と表情を思い出す。




「……尊敬する先輩に恩返しがしたいの……」


 ほんのり頬を赤く染め、慈しむように言ったその姿はまさに恋する乙女だった。




(紅を神域から引き剥がすには、紅の恋を粉々に砕くしかないのよ……)


 日の沈んだ暗くなった空を、あざみは睨みつけた。





<おまけ:紅子が好きなのは>※紅玉大学時代の話


「えっ!? も、もう別れたのですか?」

「そっ。で、次に付き合っているのが――」

「ま、待ってください。もう次の方とお付き合いされているのですか?」

「そうよ」


 若者達の間で大人気の喫茶店で出されている氷菓を飲みながら、あっさりとそう伝えた大学の同期の友人に紅子は頭が痛くなってきてしまう。


「え、えっと……話がついていかないのですが……」

「アンタ、今いくつよ? ちょっとは男遊びを覚えた方がいいわよ」

「おとっ! あそっ!?」


 紅子は羞恥に一気に顔を赤く染め、言葉に詰まってしまう


「もっ、もうっ! 少しは慎みを覚えたらいかがです!?」

「いいじゃない。学生の内が遊んでいられるのが華よ。社会人になったらこうはいかないわ」


 すると、大きなつり上がった瞳を持つ彼女が楽しそうに笑って言った。


「紅も一度男を知っておいた方がいいわよ! なんなら後腐れの無い良い相手紹介してあげる!」

「けっ、結構です! わたくし、そ、そういうのは、好きになった人にしか捧げたくありません!」

「あ~~も~~ウブちゃんね~~。そんなんじゃ一生結婚できないわよ」

「へっ、変な方とお付き合いをするくらいなら一生独身でも結構ですっ!」

「……頑固ちゃんめ」


 氷菓を飲み切ったところでふと思った事があり、紅子に尋ねる。


「ねえ、紅の好きなタイプってどんな感じ?」

「えっ? ええっと、そうですね…………」


 真面目が故にきちんとした答えを返そうとしているのだろうか。紅子は深く考え込んでしまう。


「そんな深く考えなくてもいいのよ。例えば見た目。芸能人なら誰とか」

「そう、ですね……でも、見た目よりも……」


 ほんのりと頬を赤く染めながら紅子は恥ずかしそうに言った。


「わ、わたくしを一生大事にしてくださるのなら、どなたでも……」

「あ~~、浮気しない一途なタイプね」


 小さく頷く紅子に、ニヤリと笑う。


「そんなヤツ、絶滅危惧種よ」

「そっ、そんなの! わからないじゃないですかっ!」

「ウブちゃんな上に夢見たちゃんね~。ま、頑張りなさいよ。無理そうだったらいつでも言いなさい。いつでも紹介してあげる」

「結構ですっ!!」


 むぅっと頬を膨らませる紅子を見ながら思う。


(きっと紅も想ったら一途なんだろうな)


 似た者夫婦が誕生する予感に、彼女はまたニヤリと笑うのだった。


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