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大和撫子さまのお仕事  作者: 小茶木明歌音
第四章
204/346

蝕み続ける胸の痛み




「失礼する」


 そう言って蘇芳が部屋から出ていくのを見送った後、紅玉は来客用の茶を用意していた時の事を思い出していた――。







 幽吾の要望の茶を作る為、茶葉を入れた沸騰した湯に牛乳を入れていた時の事だった。伝令役の小鳥のひよりがパタパタと飛んできたのは。


「あら、ひより?」

『アザミからデンレイです! デンレイです!』


 ぴよぴよと鳴くひよりの頭を指で撫でて、紅玉は伝令を取る。


「もしもし、紅玉です」

「やっほ~。紅、元気~?」

「先日お会いしたばかりではありませんの。こちらは恙無く。あざみは?」

「まあね。うまくやってるつもり。今は昼休み中なの」

「あら……随分と遅い」


 時刻を確認すれば、もう御八つ時だ。

 そろそろ十の御社の住人達が本日の間食について騒ぎだす時間帯である。

 紅玉は保存庫に入れておいた全員分の焼き菓子を取り出して並べ出す。


「大体これくらいになるわよ。いろいろやっていると」

「忙しくても、ご飯はしっかり食べてくださいましね」


 その内の一つを盆に乗せると、牛乳が大分ぐつぐつと煮立ってきている事に気付く。


「そうそう、紅に聞きたいことがあるんだけど」

「はい、何ですか?」

「あんた、好きでしょ? 蘇芳のこと」

「はいっ!?」


 突然の事に動揺し、紅玉は火を止める時宜を見誤ってしまう。慌てて火を止めたので、幸い大事には至らなかったが、危うく煮立った牛乳を吹きこぼしてしまうところだった。


「せ……せーふ……!」

「先輩に恩返ししたいとか言いつつ、結局は傍にいたいだけじゃないの? 恋する乙女め」


 大きく息を吐く紅玉を余所に、あざみは紅玉の敏感な部分を刺激していく。


「な、なんで、急にそんな……!」

「ん~? この間、取っちめてやろうとも思ったけど、時間なかったし、ふと今日思い出して、問い詰めてやろうと思って。それに突然の方が反論できないでしょ?」

「う……」


 効果は抜群だ。

 紅玉は冷静さを装いながら、熱々の鍋を氷水に浸して、牛乳を冷やしていく。茶葉が煮出しているので、茶葉の良い香りが漂い、心が安らいで……。


「で、どこまでいったの? キスくらいはした?」

「そっ、そんな破廉恥な事!!」

「破廉恥って。アンタはホントに初心ちゃんね~」


 安らがなかった。ちっとも安らがない。鍋はどんどん冷えていくというのに、顔はむしろ更に熱々になっていく一方だ。


「そ、それに……蘇芳様には灯ちゃんという心に決めた方が……」

「え……そうなの?」

「はい、そうです。蘇芳様が好きなのは、灯ちゃんです」

「ふぅん……」


 鍋に軽く触れると、まだ熱が籠もっており、もう少し冷やした方が良いと思いながら、紅玉は氷をもう少し足していく。


「……紅、辛くないの?」

「え?」

「灯って……元二十七の神子……すなわち『藤の神子乱心事件』の首謀者、神域史上最悪の神子の藤紫のことでしょ」

「っ!」

「そして、アンタは彼女の無実を証明し彼女を探す為に神域にいる……大好きな幼馴染の為……蘇芳の為に」

「…………」


 ようやっと冷えた牛乳を氷の入れた硝子の杯に注いでいく。茶漉しで茶葉を濾しながら。


「いいえ、あざみ……これは……自分の為なの」

「……自分の為?」


 完成した紅茶五人分を盆の上に乗せると、氷が硝子の杯にぶつかってカランと鳴る。


「わたくしは灯ちゃんを救いたくて、蘇芳様に幸せになって欲しいの。ですから、これはわたくしの我儘……全部わたくしの為なの」

「…………」


 あざみは少し黙った後、尋ねた。


「例え、その想いが報われなくても?」

「…………ええ」

「…………」







「…………」


 そんなあざみとのやり取りを思い出しながら、紅玉は蘇芳とのやり取りも思い出していた。


 何か話したそうにしているのに視線があった瞬間、気まずそうに視線を逸らしてしまった蘇芳。

 跪いて頭を深く下げて何度も謝罪を重ねていた蘇芳。

 一向に顔を上げない蘇芳と視線を合わせる為に強引に顔を上げさせれば、そこには酷く思い詰めて凛々しい眉を思いっきり下げた情けない表情をした蘇芳の顔があって――。


(ああああもうっ!! あの方はどうしてあんなに可愛らしいのっ!?)


 水晶が寝ており、女神達も同じ部屋にいる為、思いの丈を叫ぶ事が叶わず至って平静を装っているが、拳は震えるほど握り締めているし、顔は真っ赤だ。


(わたくしの為だなんて言われた日には怒れないに決まっているではありませんのっ!? ああもうっ! なんて狡いっ! 狡いっ! 狡いっ! 狡い人っ!!)


 叶うのなら水晶の枕を分捕って、その枕に拳を何度も打ち込みたいところだが、そんなことできるはずもない。なので、至って平静を装う――身体が震えるほど悶えてはいるが。


(落ち着きなさい! わたくしっ! 勘違いをしてはいけません! 自惚れるなんて以ての外! わたくしなんて秀でたところが何一つ無い凡庸な女なのですよ!? 思い出しなさい! 蘇芳様だって――……)


 思い出すのは、「大事なことは隠さないで」と言った後の蘇芳の瞳――ほんの一瞬揺れた金色の瞳。


(嘘を吐いてまで、わたくしに隠し事をしているではありませんの……)


 それを思った瞬間、紅玉は一気に冷静になった。

 同時に感じるのは胸に突き刺さる痛みだ――三年前のあの日から蝕み続ける……。







*****







 それは、三年前の秋の宴での光景――仲良さげに向かい合う二人の姿だ。


 頬を微かに赤く染めて俯く蘇芳と、そんな蘇芳を見つめて楽しそうに微笑んでいる己の幼馴染である元二十七の神子の藤紫の。


 二つに結った藤紫色の美しく長い髪と透き通るような青紫の瞳を持ち、儚げな印象が守ってあげたくなる庇護欲を誘う藤紫は、とてもとても可愛い自慢の幼馴染だ。

 そして、深くも鮮やかな蘇芳色の髪とキリリと勇ましい金色の瞳を持ち、仁王のように精悍でありながら非常に整った顔立ちの蘇芳。


 そんな二人は並べば並ぶ程、非常に良く似合いであった――思わず衝撃を受けてしまう程に。




 何をそんなに楽しそうに笑っていらっしゃるの?

 二人で何をお話されていたの?

 いつからそんなに仲良しでいらっしゃったの?


 取り留めのない疑問が溢れて、ドクドクと心臓が嫌な音を立てていく。

 モヤモヤとした不快な気持ちが心を埋め尽くしていく。




(……こんなの、嫌です……っ!)




 だから、紅玉は即行動した。

 こんな朦朧とした不快な思いを抱えたまま、蘇芳とも、藤紫とも、顔を合わせるなんて、二人に対して失礼だと思ったから……。


 だから、真っ先に聞きに行ったのだ。秋の宴が終了した後に。幼馴染の藤紫に。




「あの! 藤紫ちゃん……っ」

「ん? なあに?」


 藤紫はとても可愛く笑ってみせた。白く透き通るような肌を持つ故に、儚げな印象が強い藤紫はやはり可愛い。誰がどう見ても可愛い――改めて思った。


「……え、と……先程、蘇芳様と楽しそうに何を話していらっしゃったの? 少し、気になって」


 少しどころではない。大いに気になる。

 尊敬する己の先輩の今まで見た事のない表情を目にしたのだ。しかもその目の前にいたのは、己の大好きな幼馴染で、しかも嬉しそうに微笑んでいて……。

 仲睦まじい雰囲気に入っていくことができなかった。自分はまさに邪魔者そのものだったから。


 何故それだけでこんなにも胸が苦しくなるのか、何故こんなにも心臓が嫌な音を立てているのか――。




 わからない。

 いや、わかっている。

 だから、わかりたくない。


 だから、否定して欲しかったのかもしれない。




「蘇芳さん? ああ、あの時ね。あのね、綺麗だって褒められちゃったんだ」


 無情にも響いた声に、言葉に、紅玉は氷漬けになった。


「……すお、うさまが……?」

「うんっ! とっても嬉しかった」


 可愛い笑顔で幸せそうに報告する大好きな藤紫が……ああ、やっぱり可愛くて、納得してしまう。


 当たり前だと――。


「……そうなのですね」


 きちんと笑えているだろうか。

 きちんと祝福をしなくては。

 だって初めからわかっていたことではないか。


 自分は凡庸で秀でたものが何一つ無い〈能無し〉。

 藤紫は守ってあげたくなるような可愛らしい選ばれし神子様。


 敵うはずなどないのだ。初めから。


「よかったですね」

「……紅ちゃん」

「はい」


 笑え。

 笑え。

 顔を歪めるな。

 笑え。


 表情筋に必死に命令する。


「ごめんね」


 その言葉を聞いた瞬間、笑う事を忘れて、目を見開いてしまった。

 藤紫は悲しげに笑っていた。


「ごめんね、紅ちゃん……ごめんね」

「ふ、じ……」

「でも、渡すつもりないから」


 それは大好きな幼馴染からの生まれて初めての宣戦布告だった。

 喧嘩なんて今までしたことがなかっただけに、紅玉は狼狽えてしまって――。


「お願い。諦めて」







 この後、紅玉は自分が何て答えて何をしたのか、よく覚えていない。

 だけど、この日に胸を突き刺した痛みが未だにジクジクと蝕み続けている……。




*****




 水晶の世話を女神達に託した紅玉は再び己の部屋に来ていた。

 そして、手に取るのは机の上の写真立て。己と己の幼馴染達が写り込む思い出の。


 そうして、その中の儚げな雰囲気が印象的な藤紫こと灯をじっと見つめる。


「……馬鹿ね……わたくしったら……どうして忘れていたのかしら……こんな大切な事……」


 ジクジクと痛む胸をそっと押さえる。

 先程まで嫌な音を立てていた心臓は、いっそ凪いでいるように静かだ。


「蘇芳様の一挙一動にときめいて、勝手に期待をして……わたくしったら何を考えていたのかしら……」


 口から出る言葉は全て自嘲だ。己に言い聞かせるように紡いでいく。


「初めから分かっていたではありませんの。わたくしは秀でたものが何一つ無い凡庸な〈能無し〉……灯ちゃんは守ってあげたくなる神子様……」


 写真立てを握る手に自然と力が込められていく。


「何故わたくしの方が大切にされていると思い込んでいたのかしら……っ!?」


 写真の灯と視線が合う。

 「お願い。諦めて」――その声が蘇る。


「――っ!!」


 胸の中で何かが割れるような音がした。


 その瞬間、紅玉は乱雑に写真立てを抛った。写真立てが音を立てて床の上に落ちた事も気にせず、紅玉は寝台へと飛び込んだ。

 身体を丸めて己の身体を抱き締めた。それでも苦しい程の胸の痛みが治まる気配はない。


(治まれ治まれ治まれ治まれ治まれ治まれ治まれ治まれ治まって……っ!)


 短い呼吸を繰り返しながら、痛みを必死に堪えて、己に言い聞かせるように叫ぶ。


「痛みを感じる事すらわたくしには赦されませんわ!!」


 痛いのか、苦しいのか、不快なのか、嫌悪なのか――感情がぐちゃぐちゃになってわからない。わかりたくもない。


 このままいっそ眠って全てを忘れ去ってしまいたい――……。













「獣組ぃぃいいいいっ!!」


 遠くから響いた怒鳴り声に紅玉は瞬時に目を開ける。

 そして、寝台から降りて、騒がしい声が響き渡っている庭園を窓から覗いてみれば、何が起きているか一目瞭然であった。




「今日という今日は絶対に赦さん!! 貴殿らぁぁああああっ!!」


 蘇芳が十の御社問題神と呼ばれる男神三名を憤怒の形相で追いかけているところだった。

 その問題神三名は非常に楽しそうな顔をしているところを見れば、蘇芳は完全に遊ばれているようだ。




(わたくしったら何をサボっていたのかしらっ!? お仕事に戻らなくてはっ!!)


 勤務中に一人で勝手に部屋に閉じこもっていじけてしまうなど情けない上に恥ずかしい。紅玉は慌てて部屋を飛び出そうとした。


『ぴよっ! ぴよぴよっ!』

「ひゃあっ!?」


 突如目の前に現れたひよりに紅玉は珍しく驚いてしまう。


『ヨルからデンレイです!』

「は、はい、出ますわ」


 紅玉は一呼吸を置くと、ひよりを手の上へ導く。


「はい、紅玉です」

『もしもし、紅ちゃん? 世流よ。お仕事中なのにごめんなさいね』

「いえ、大丈夫ですよ。どうかなさいました?」

『……あの……あの、ね……ワタシ……』


 その時だった。




「遊楽殿ぉぉおおおおっ!!!!」




 蘇芳の怒鳴り声が一段と響き渡ったのは。


『ウフフッ、おっきな声。ごめんなさい。お取り込み中だったようね』

「……ごめんなさい、世流ちゃん。野暮用を済ませてからまた連絡しますわ」

『ううん。こっちこそ、ごめんね。じゃあ、連絡待っているわ』


 世流のとの伝令を終了した後、紅玉は感じた疑念に首を傾げた。


(……世流ちゃんの声、震えていた……?)


 しかし、それを考える暇は今ない。

 未だに怒鳴り声が上がり続けている庭園に紅玉は急ぎ向かった。




年内は本日が最後の投稿になります。

少し不穏な終わり方で申し訳ありません……。

来年もどうぞ長い目でよろしくお願いします……!

良いお年を。



<おまけ:冷たい微笑み>


 蘇芳はバタバタと御社の中を駆け回りながら、孔雀の神の万華を追いかけていた。


「万華殿! 待てっ!」

「待ちません! 蘇芳さんという者がありながら、逢瀬の約束などっ! ああっ! 裏切り甚だしい!」

「一体何を勘違いされている!?」

「蘇芳さん、ボクは神ですよ。全てお見通し、否! 全て聞いてしまったのです! あなたがこの南高君を通して逢瀬の約束を取り付けているところを!」


 万華がそう言って突き出したのは、月のような淡い黄色い羽毛を持つ雀っぽい小鳥の南高だ。可哀相に……万華に身体を握り締められ、青くなって震えている。


「白状してもらいましょう。一体何処の女と浮気をするつもりですか!?」

「浮気などするか!! そっ、そもそも俺と紅殿は、そっ、そういう関係では……っ!」


 しどろもどろになっている間に、万華の手から南高がいなくなっている事に気付き、蘇芳はハッとする。


「ふぅん……だから、他の女に現を抜かしても罪にはならない……そう言いたいのかな?」


 その声に振り向けば、白蛇の神の深秘がニタリと美しくも不気味に笑っている。

 そして、うねうねと怪しく靡かせた長い髪に、南高は絡みつかれていた。可哀相に……その瞳はうるうるとしており、今にも雫が零れ落ちてしまいそうだ。


「ふざけないでっ! 人の心を傷つける行為は最低だよっ!! 傷つけてもいいのは肉体だけだよっ!!」

「肉体も駄目であろう!?」


 被虐思考の深秘の言葉に、思わず真面目にツッコミを返してしまったが、その一瞬の隙に南高がいなくなっている事に気付く。


「ほらほら~! 蘇芳! こっちだこっち!」


 その声に振り向けば、南高を鷲掴みにした白狐の神の遊楽が庭園に出て走り去っていくところだった。万華と深秘もいつの間にか遊楽の後を追って去っていった。


 瞬間、蘇芳の苛立ちは最高潮に達した。


「獣組ぃぃいいいいっ!! 今日という今日は絶対に赦さん!! 貴殿らぁぁああああっ!!」


 蘇芳の叫び声が庭園中に響き渡る。

 そんな怒る蘇芳を遊楽は至極楽しそうに見ながらニヤリと笑う。


「ほらほら、蘇芳! さっさと白状しねぇと、お前の可愛い小鳥ちゃんがどうなってもしらねぇぞ~!」

「遊楽殿ぉぉおおおおっ!!!!」


 蘇芳は必死に遊楽を捕まえようと手を伸ばすが、遊楽はあっさりとかわしていく。

 可哀相に……南高は遊楽に振り回され、すっかり目を回してしまっている。


 それに気付いた蘇芳はハッとして、手を止めた。


「遊楽殿っ!! 南高を離せっ!!」

「誰が離すか! 逢瀬の約束をした相手、誰だか吐いてもらおう!」

「だから、そんな人は――」


 その時だった。真横を一陣の風が通り抜けたのは――。


 気付けば、遊楽が宙を舞っていた……そう、宙を舞っていたのだ。

 蘇芳も、万華も、深秘も、驚きに目を見開く。


 三人の前に立つのは漆黒の髪を持つ大和撫子の紅玉。その足は美しく蹴り上げられ、その手には南高が抱えられていた。


 「ドサッ!」――と遊楽が庭園の芝生の上に叩きつけられ、目をすっかり回してしまっているのを見ると、紅玉は振り返った。


「……次にお仕置きが必要なのは、どちら様です?」

「「大変申し訳ありませんでした!!」」

(土下座はやっ!!)


 蘇芳が思わず驚いてしまう程、万華と深秘の土下座の速さは尋常ではなかった。


 紅玉は溜め息を吐くと、南高を蘇芳に差し出す。


「攫われないよう、お気をつけくださいまし」

「あ、ありがとう……」


 南高が無事で蘇芳はほっと息を吐く。指で撫でてやれば、南高は涙目ですり寄ってきた。思わず顔が綻んでしまう。


「……蘇芳様」

「ん?」

「これからは、ご自身が本当に大切だと思うものだけを、本当に大切にしてくださいましね」

「……え?」


 にっこりと微笑んで一礼をして去っていく紅玉の背中を蘇芳は見つめた。

 しかし、紅玉の胸を突き刺す痛みに蘇芳は気付く事ができなかった……。




 そして、紅玉は、地の上に正座をしている万華と深秘を冷たい微笑みで見下ろすと言った。


「さて、万華様、深秘様、お仕置きは何が良いです?」

「えっ、ボク達もお仕置きを受けるのですか?」

「当然です」

「はいはいっ! だったら僕は、できるだけ! 痛く! そして、遊楽より高く蹴り飛ばして欲しいっ!」

「では、深秘様は本日の夕食まで、そこで正座して反省をしてくださいまし」

「敢えての何もしないっ! ああああっ! なんて甘美なお仕置きっ! 流石紅ねえっ!」

「誰が喋ってもいいと言ったのです? 口を噤みなさい」

「~~~~~~っ!!」

(……紅ねえ、随分と不機嫌のようですね……)


 いつもとは違う冷たさの紅玉の微笑みを見て、万華は少し不安を覚えるのだった。


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