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大和撫子さまのお仕事  作者: 小茶木明歌音
第四章
201/346

秘密の報告会




 紅玉誕生日の宴から数日後、今日も今日とて十の御社では水晶が紅玉に尻を叩かれながら仕事をしていた。

 本日は空と鞠が揃って休暇で御社不在だったので、朝から紅玉の怒鳴り声が響き渡っている状態だ。まあ、空と鞠がいても、紅玉の怒鳴り声は響いているのだが。


 まあそんなこんなで、水晶が朝から泣きながら書き上げた御札を紅玉は全て確認し、ようやっとにっこりと笑って頷く。


「はい、今日の仕事はこれでおしまいです。お疲れ様でした」

「ふみゅう……! ちゅかれた……!」


 水晶は机の上に倒れ伏した。


「では、明日も頑張ってくださいね」

「うみゅ~~~鬼ぃ~~~」


 そんな姉妹のやり取りを蘇芳が微笑ましく見つめている。


「……蘇芳さん、最近頬が緩み切っているね」

「っ!?」


 ボソリと呟かれ、慌てて隣を見る。

 隣に立つのは本日の日番の男神――闇に溶け込むような薄墨色の長い髪と茜色の瞳を持つ日暮(ひぐらし)だ。

 さらにもう一人――真っ直ぐで艶のある紺碧の長い髪を持つ男神の月影(つきかげ)も、瞳を閉じたまま口元を綻ばせている。

 蘇芳は咳払いをしながら己の修行不足を猛省した。


「し、失礼した。職務中にニヤニヤと……」

「僕は一向に構わないんだよ? 大いに紅ねえに見惚れてニヤニヤしてくれても」

「ひっ、日暮殿……!」


 その横で物静かな月影も小さく頷いていて、ますます恥ずかしさが込み上げてくる。


 その時だった。窓から烏が入りこんできたのは――。


 蘇芳は表情を仁王のものへと変えると、すぐさま水晶と紅玉を守る為に前へ出て、臨戦態勢を取る。

 紅玉も水晶を抱き寄せ、二人の男神も烏を睨みつけた。


 しかし、羽根を撒き散らして現れたのは良く知った人物だった。


「やあ」

「幽吾さん……!」


 紅玉はほっと息を吐き、男神達も警戒態勢を解除する。

 しかし、蘇芳は未だに表情を仁王のものにしたままだった。


「幽吾殿! このような訪問は困ると何度も言っているだろう!」

「あー、ごめんごめん。時間が無かったから、つい。でも、ちゃんと門から入っているし、朝陽(あさひ)さんと真昼(まひる)君の許可は貰っているよ~」

「だからといって窓から入ってくるのは無作法だと――」

「あー、はいはい。反省しまーす」


 絶対反省する気が無い、この男。


「わたくし、お茶を淹れてきますね」

「紅殿、こんな不法侵入者に茶など……」

「そうそう、お構い無く~。ああ、でも、できれば緑茶よりあっまーいロイヤルミルクティーが飲みたいな。できればアイスで~。んでもってお菓子もつけてくれると、もう最高!」

「図々しいぞ!」


 怒鳴る蘇芳の一方で紅玉はころころと笑う。


「構いませんわ。ついでに全員分のお茶も用意して参りますわ」

「ああ紅殿! 俺の分は気を遣わなくても!」

「いってきまーす」


 紅玉はそう言って出ていった。

 すると、幽吾は水晶達の方を向く。


「さてと、報告会といきましょうか」


 あまりにも唐突な訪問の理由に蘇芳は溜め息を吐く。


「何もこんな仕事の合間でなくとも」

「仕事の合間じゃなきゃ無理なんだよ~……あのお嬢ちゃま、紅ちゃん並みの仕事中毒でしかも人使い荒くて……扱き使われるこっちの身にもなってほしいよ、まったく……今だって鬼神君に僕の変装してもらって誤魔化して来たんだから」


 あの幽吾が青い顔をして言う程なのだから、よっぽど忙しいようだ。

 そして、どちらかと言えば線の細い幽吾と、筋肉隆々の鬼神の体格は、あまりにも正反対で、影武者には大分無理がある。


(これはすぐにバレるな)


 どうやらあまり時間はないようだ。

 それでもせっかく捻出してくれた時間を無駄にするわけにはいかない。


「報告、お願いしてもいい?」

「勿論だよ」


 そして、幽吾は報告していく。




 「謎の女」に関する情報はまだ掴めていないこと。

 矢吹の呪いが聖女や萌のものと同じであったこと。

 矢吹と萌の呪いの術者は同一人物である可能性。

 那由多が神子の「御社籠城」に加担していた事。

 那由多の愚行の動機が「神の御告げ」を受けたからという事。


 「謎の女」が神である可能性が出てきた事……。




 報告を全て聞いた蘇芳は、あの日の朔月隊と同じような表情をして聞いていた。


「……何かの間違いでは?」

「……那由多は神を病的に崇高し、神の花嫁になりたがっていた神狂い。そんな彼女が行動を起こす動機は神様に関与すること他ない。それに……彼女は嘘を吐いているように見えなかった」


 幽吾にはっきりそう言われてしまえば、蘇芳は言い返す言葉が見つからない。


「何よりも今まで説明がつかなかった現象が、神が関与していると考えると全て辻褄が合う……朔月隊ではそんな意見も挙がったよ」

「……萌が遊戯街の地下牢から脱出できたことや、萌を刺したあの黒い呪いの事か?」

「その通り」


 どんどん重たくなっていく空気の中、幽吾は二人の男神の方を向いた。


「だけど、僕ら朔月隊の結論は――それでも神様を信じる、でした」

「…………」

「…………」

「無礼を承知でお尋ねします。あなた方、神は、自らの意思で人殺しに手を染める事ができますか?」

「…………」

「…………」


 しばしの沈黙の後、日暮はにっこりと笑った。


「フフフ、紅ねえにも同じ事を聞かれたよ。なるほど、そういう事情があったんだねぇ」

「……紅殿が?」


 ずっと一緒に働いていると言うのに、そんな素振りを一切見たことがなかっただけに蘇芳は驚いてしまう。


「十の御社の神には一人残らず全員に聞いているはずだよ。あと、親しい間柄の神にも聞いていたと思うよ」


 いつの間に――と蘇芳は驚くばかりである。

 そして、相変わらず働き過ぎである、と。


「……幽吾君は僕が何の神か知っているかい?」

「『時』の神様、ですか?」


 日暮はにっこりと笑う。


「僕は『夕』の神。夕方を司る神で、『時』を司る神々の端くれさ。僕みたいな存在自体が曖昧な存在はそもそも神になり得ない存在だ。それでも、人が『僕という存在』を信じ、人が『僕という存在』に祈ってくれる事で、僕は神として存在を保っていられるんだ」


 日暮は茜色の瞳を妖しく光らせながら、はっきりと告げる。


「そんな人を裏切るような愚行、己の存在を否定したのと同じだよ」

「……そうですか。疑って申し訳ありませんでした」

「いいんだよ。実際には罪を犯す神もいるから、そうとは限らないだろうしね」


 しかし、日暮の答えに幽吾は思わずほっと息を吐いていた。


「俺も、日暮と似たような事を答えた」


 静かにそう告げたのはもう一人の男神の月影だ。


「そもそも神が罪を犯せば、間違いなく神界から天罰が下る。そして、末路は消滅。輪廻転生の環から外れ、魂自体の永久の消滅だ」


 消滅――それを聞いた蘇芳は思わずゾッとした。


「重い、ですな……」

「罪を犯せば、相応の罰を受ける。人も神も。当然の報いだ」


 然も当たり前のようにそう答えた月影の言葉に、蘇芳は思わず身体を震わせる。


(罪を犯せば、相応の罰を受ける……)




 思い出すは、幼少期の記憶――。

 盾の一族の真の力を覚醒させる為に、狭い牢獄に閉じ込められ、無理矢理磔にされ、祖父と父に殺されかけたあの日の事――我を失い暴走し化け物となった己が祖父と父を八つ裂きにしたあの日の事――。




(……俺も、いつか報いを受けるのだろうか……)


 身が引き裂かれる程の強い痛みと苦しみを味わって死ぬ事になるのだろうか……思わずそんな事を考えてしまう。


「ところで、幽吾君は朔月隊内だけであろう極秘情報をうちの神子に話してしまっても構わないのかい?」


 日暮からの質問に幽吾は「う~ん」と首を捻る。


「まあ本当は駄目なんだろうけど、蘇芳さんと晶ちゃんだし、まあいいかなって」

「えっ」

「えっ」

「隊長権限で許可ってことで」

「えっ」

「えっ」

「朔月隊の誰にも報告していない件だけど」

「えっ!?」

「えっ!?」


 そんなのでいいのか? 朔月隊隊長の幽吾よ。

 蘇芳としては紅玉に黙っていて欲しい件もあるのでむしろ助かるのだが、真面目一辺倒故に罪悪感が湧いてくる。


「まあまあ、気にしないでよ~。そうだな……お詫びとお礼を貰ってると思っておいてよ」

「……お詫び?」

「……お礼?」


 蘇芳と水晶は心当たりがなく思わず首を傾げるが、幽吾は心内の読めない表情でにっこりと笑うだけである。


「さて、ここからが本題で~す」

「うみゅ……今までのが前置きだと……?」

「神様の関与は限りなく低いと仮定して――」

「うみゅ、容赦なく話を進めていくな」


 時間は限られているのである。


「次の『謎の女』と思われる容疑者を考えてみたんだ。そして、思い出したんだ。先月の頭、蘇芳さんが言っていた事を」

「先月の頭……」


 先月の頭と言えば、地獄の入口で辰登の記憶から矢吹の呪いの紋章を引き摺り出した日だ。

 そして、幽吾にあの事を打ち明けた日でもある。


「まさか……!」

「……そう、神子である晶ちゃんの結界を破壊する程の力を持つ、桜色の神力のあの方さ」


 この世の美しさと愛らしさを詰め込んだような可憐な少女。桜色の柔らかそうな長い髪と大きな苺色の瞳を持つ大和皇国皇族神子の至高の姫君――桜姫のことである。


「……そう、すーさんからあの話を聞いていたのね」

「まあね」


 萌が桜色の神力が宿る札を使って、雛菊の結界を破壊した事だ。


「それで、ここしばらく桜姫の動向を観察してみた」

「……その結果は?」

「残念だけど、な~んもなし」


 その答えに蘇芳は思わず落胆してしまう。


「敢えて言うなら鬼のように働いてらっしゃるよ。自分の名誉を取り戻そうと、真面目にきっちりとね、何せ那由多の件だけじゃなく、妖怪先祖返りトリオの契約破棄の件で随分と恥をかかされたからね~、紅ちゃんに」

「紅殿は悪くない」

「うん、まあそうなんだけど、何せ皆の愛されお姫様ですから。一部皇族神子様からも随分とご不興を買ってしまったみたいだよ、紅ちゃんは」

「とんだ八つ当たりじゃないか」


 沸々と皇族神子への怒りが湧いてくる。


「でも、あの那由多を神子に推挙していた事や、萌も桜色の神力を持つ者と関わっていたという話がある以上、桜姫を全く無視するわけにはいかない。もうしばらく様子を見てみるよ」

「よろしく頼む」


 しかし、そうは言っても根本的な問題の解決には結局至っていないのが現状だ。


「しっかし、那由多は一体どうやって神から御告げを受けたんだろうね~?」

「直接、会っているのか?」

「そうらしいよ。『御主人様』だの『旦那様』だの言っているから多分男神なんだろうけど、神様は見た目綺麗過ぎるから女神である可能性も否定できないし……」


 話を聞いて、ふと思った事を水晶は口にした。


「うみゅ……もしかして違う神だったとか?」

「違う神?」

「例えば邪神。あれも堕ちたとはいえ、神様の端くれでしょ? あとは鬼神とか?」


 水晶の言葉に「ふむ」と納得しつつも、幽吾は言う。


「邪神は邪力におかされた神でいわば狂暴走状態だから、あの状態で御告げができるとは思えないな~。鬼神君達は地獄の住人だから、神様っていうよりは鬼だし……」

「うみゅ、別に神様の名前がついていなくてもいいの。ううん、いっそ神様じゃなかったのかも」

「……神様じゃない?」

「うみゅ。要は見た目が綺麗で神秘的で神様っぽいの。那由多が神様だと勘違いする程の存在」


 その言葉に蘇芳はハッとする。


「幽吾殿!」

「え?」

「『式』はどうだろうか!?」

「あっ……!」


 幽吾が心当たりある顔をする一方で、水晶は首を傾げたままだ。


「『式』? 『紙人形』のこと?」

「……いや、それとは違って、皇族や四大華族の間で相伝される術の一種なんだ」

「へえ~~……どんな術?」


 その質問に幽吾は困ってしまう。


「う~~ん……『式』は秘術だから、あまり人にはお見せしたくないんだけど……」

「お口にチャックするから見せて~~」


 困った挙句、結局幽吾は術式を展開していく。


「絶対誰にも言わないでよ」


 そして、真っ白な装束に身を包んだ幽吾の「式」が召喚される。


 その瞬間、水晶は目を剥いた。


「確かに『式』を神様だと思い込んだ可能性はあるかもね~。うちの『式』は大分神秘的な見た目だけど、萌の式は随分化け物っぽかったからな~」

「だが、やはり気配は紙人形とは一風違うからな。一度那由多に『式』を見せたらどうだろうか?」

「そうだね。そうしてみるよ。あっ、ちょっとごめんね。顔見せて」


 そう言って幽吾が『式』の顔を覆っていた布を捲ると、そこには作られたような美しい顔があった。


「……うわ、君……随分と綺麗な顔をしていたんだね……」


 しかし、水晶の耳に幽吾の言葉は入ってこない。

 ただひたすら目の前の『式』から目を離せないでいる。

 そして、何故か真っ白で作られた美しさを持つ『式』が、真っ黒にしか見えない。


 真っ黒くて、ドロドロした何かが、自分に向かって手を伸ばす。ニタリと不気味に笑いながら――。


「これなら那由多も神だと勘違いするかもな」

「そうだね……だけどそうなると、容疑者が本格的に……」

「……神子?」


 最初に水晶の異変に気付いたのは日暮だった。


 顔面は蒼白。呼吸は荒く、冷や汗まで掻いているようだ。


「水晶殿、いかがされましたか?」

「神子?」

「晶ちゃん?」

「ぁ……っ……はっ……ぁぁ……っ」


 みな、水晶の声をかけるが、水晶は返事をしない。できない。視点が『式』に定まったままだ。


「ぃぁ……っ……あっ……」


 ふわりと真っ白な装束を纏った『式』が水晶の目の前までやってきたその瞬間、水晶の視界は黒一色に埋め尽くされた。


「いやああああああっ!! 来ないでええっ!! 来ないでえええええっ!! やだっ!! やだあっ!! やだああああああっっっ!!!!」

「神子!?」

「晶ちゃん、どうしたの!?」

「水晶殿!?」


 大声を上げて激しく取り乱し、椅子から転げ落ち、床を這って泣きながら水晶は逃げ惑う。

 それでも視界は黒一色。真っ黒。

 恐怖に心が支配されていく。


「やだあっ!! やだやだやだやだやだやだやだやだやだあっ!!」




 少年が頭から血を流してその場に倒れた。

 助けようとその少年に手を伸ばそうとしたが、その手を黒くドロドロとした醜い何かに捕らわれて、口を塞がれ何処かへ連れていかれた。

 助けを呼びたくても声が出せない。暴れもがいても小さな身体で敵うはずもなくて。

 怖くて、怖くて、怖くて怖くて怖くて怖くて、泣き叫んだ。


 そして、黒いドロドロとした醜い何かの腕が鋭い刃に代わった瞬間、身体を貫かれたのは――……。




「助けてえっ!! てっちゃん!! お姉ちゃんっ!!」




 ふわりと花の香りが水晶を包み込んだ。


「はい。お姉ちゃんはここにおりますわ」

「お、ねえ、ちゃ……?」


 抱き締めるぬくもりが、柔らかさが、香りが、声が、漆黒の髪が――紅玉であると主張する。

 ふわりふわふわと、紅玉は水晶の白縹の髪を撫でていく。


「……おね、ちゃん? おねえちゃん……」

「はい。貴女のお姉ちゃんですわ」

「おねえちゃん……っ……おねえちゃん……っ……!」


 目の前の存在にぎゅっとしがみつく。

 瞳から涙が溢れて止まらない。

 恐怖がみるみる消えていく。


「大丈夫です。大丈夫ですわ。お姉ちゃんはちゃあんとここにいますわ。貴女の傍にずぅっと。だから、怖くなんてありませんわ。ねっ?」

「うわああああああああああああっ!!!! わああああああああああああっ!!!!!」


 やっと得られた安心感に、水晶は大声を上げて泣いたのだった。





<おまけ:姉と弟と妹>


 ただ道を歩いていた時の事だ。


「おねえちゃあ」


 妹が己の制服のスカートの裾を引っ張ってきた。


「はい、何ですか?」

「あしょこ、おーでおーでしてりゅの」


 そう言って、妹は何もない空間を指差した。

 姉は妹が指差す先を見るが、やはり何もない空間だ。誰かが居る気配もない。


 すると、すぐ傍にいた弟が即座に動いた。


「姉貴、行くぞ」

「てっちゃん?」


 そう言って、弟は妹の手を握り、自分の背中を押した。


「あれはちょっとヤバい。絶対そっち見るな。ショータローの手を離すな」

「っ!」


 そう言われ、姉も妹の手を握り、自然と早歩きになる。


「助かりますわ。わたくしには全く分からないのですもの」

「分からない方がいいぜ、こういうのは。まあ俺もちょっとずつ見えなくなっているみたいだけど」


 生まれた時より妹は目に見えぬ何かを惹き付ける体質だったようで、良いモノにも悪いモノにも好かれてしまっていた。

 そんな妹を守ってくれたのが、姿見えぬ何かを敏感に感じ取る弟だ。

 この弟には感謝してもしきれない。


 何せ自分には全くそういうのが見えも感じ取ることもできないのだから。


 しばらく先まで歩いたところで、ようやっと足を止めて、弟は後ろを振り返った。


「よかった。追いかけてこないっぽい」

「てっちゃん」

「あ?」


 姉は少し下にある弟の頭を撫でた。


「いつもありがとうございます。守ってくださって」

「……っ……」


 照れているのか、弟の耳が真っ赤に染まっている事に気付き、思わず姉は微笑んだ。


「ぎゅってしてもいいですか?」

「なっ! 俺をいくつだと思ってんだ!?」

「わたくしにとっては、てっちゃんはいつまでも可愛いわたくしの弟ですわ」

「うるせぇっ! 黙ってろ!」

「おねえちゃあ、しょーちゃあ、ぎゅう~~」


 そんな妹も弟も愛おしくて、姉はまるごと抱き締めたのだった。


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