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一番星は追放された宮廷魔法使いに恋をする  作者: 海野豹香


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風邪っぴきの追想


「ゲホッ...ゲホッ...」


どうやら師匠が風邪を引いたらしい。最近は毎晩ろくに寝ずにアストラリスについて調べているようだ。彼の部屋はいつにもまして古い書物が山積みになっている。


「あー!また起きて本を読んで...ちゃんと寝てください!しっかり休まないと治りませんよ」


私は師匠から本を奪うと、彼を布団でぐるぐる巻きにした。


「ゲホッ...返せ。こんな風邪、放っておいても治る」


師匠の言葉を無視して窓を開けて換気をし、さっき作ったお粥を運んできた。


「師匠、ちゃんと食べてください」


私はお粥を一口スプーンで掬って差し出す。師匠はいじけた子どものようにそれを食べた。期せずも「あーん」してあげたみたいになって、私は引っ込みのつかない手でもう一口食べさせてあげた。なんだか子どもの世話をしているみたい、と違和感に笑っていると師匠が恥ずかしそうに顔を背けた。


「師匠も風邪を引いたりするんですね」


私がクスクス笑っていると、師匠は「今日の修行は中止だ。感染(うつ)るからお前はもう帰れ」と私の手からスプーンをとった。


「フフフ、私、生まれてこのかた風邪を引いたことないんです!だから全然大丈夫ですよ!師匠は食べたらしっかり寝てください」



ステラが洗濯をしてから戻ると、ルーカスは言いつけ通りベッドで寝ていた。お粥の皿は綺麗に空になっている。ステラは寝ている彼を起こさないように、お皿を下げてから散らかった部屋を片付ける。


「う...」


寝ているルーカスが少し苦しそうにうなされていた。悪寒がするのか体を小刻みに震わせている。


「だいぶ熱が高いわ...」


ステラは別の部屋から毛布を持ってきた。ルーカスに毛布をかけようとしたとき、彼が突然ステラの腕を引く。


「きゃあっ」


そのままベッドに引き摺り込まれ、ステラはびっくりして目を見開いた。


「...う...ステ...ラ?...しばらく...このまま、で...」


どうやらルーカスは熱で意識が朦朧としているようで、ステラをがっちり抱いて離さぬまま寝てしまった。


「もう...こんなことされたら、ドキドキしちゃうよ...」


真っ赤な顔のステラは、ルーカスの力強い腕に抱かれて身動きが取れないままだった。



----------



「どこだよ...ここ...」


深い暗闇の中でひとりぼっちの少年が彷徨う。

どこに行けばいいのか、行くあてもない。

苦しい、寂しい、悲しい...誰か助けて。


そんなとき、目の前に一欠片の小さな光が現れる。

あれは、(ステラ)ーー?




夢を見ていたルーカスが目を覚ます。あたりは真っ暗な夜になっていた。汗をかいたシャツが重い。


「......夢」


起きあがろうとしたとき、自分が何か温かいものを抱いていることに気づいた。


「...うぅ...起きたんですか、師匠...」


ステラが腕の中でモゾモゾと動く。咄嗟に彼は寝たフリをした。


「まだ寝てる...」


ステラはルーカスの首筋に手を当てると、熱が下がったのを確認した。


「...好きになってはいけない」


彼女の呟く声が聞こえた。まるで己に言い聞かせるような言葉だった。そのまま彼女はベッドから出ると、キッチンへと向かったようで料理をする音が聞こえてきた。


熱で意識が朦朧としていながらも、自分がステラにとった言動をバッチリ覚えていたルーカスは、彼女がいなくなった部屋でひとり悶絶していた。


「......マジか」


ルーカスは自分のステラに向ける感情が何なのか、理解し始めていた。












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