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コンティニュー!―ボタンひとつで崖から落ちる、僕らの「非」日常的なお仕事―  作者: 伊丸圭介
第一章:伝説の幕開け、のち、絶望のサービス残業
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第1話|2と、トマトと、するめと、俺の顔

「おい2!」


俺は、目の前で黙々と作業をしている男に声をかけた。彼は「2」という名前だ。名前というか、もはや記号だ。


彼は、いわゆる「友達が遊びに来た時に、とりあえず操作キャラを増やすためだけに、何も考えずに生み出された」キャラクターだった。黒髪の短髪。


一応、服は着ているが、センスが壊滅的だ。白いTシャツに真っ赤なトマトの絵が描かれていて、その上に堂々と「するめ」という文字がプリントされている。トマトなのか、するめなのか、はっきりしてほしい。





2は、地面に座り込んでトランプタワーを作っていた。


「なんだよ……」


2は顔も上げずに答える。


「プレイヤー2!2番目の男!2P!ツーツーツーツー!」


「やめろ!『2』がゲシュタルト崩壊する!」


「2、足元にトランプ落ちてたぞ。ほら」


俺がそのトランプを拾って差し出すと、2はようやく顔を上げた。そして、その瞬間に彼は固まった。



「……。……えっと、質問してもいいか?」


「なんだよ、改まって」


「お前、誰だ?」


「ひどいな!どっからどう見てもプレイヤー1のそうたさんだろ。幼馴染の絆を忘れたのかよ」


「どっからどう見てもお前じゃないから驚いてんだよ」


2は冷静に、そして本気で嫌そうな顔をして突っ込んだ。



それもそのはずだ。俺の顔は今、見るも無残なことになっていた。操作プレイヤーである「そうた君(おそらく、自分の名前を付けたはず)」の手によって、キャラクターエディット画面で徹底的にいじり倒された結果だ。


目は左右で大きさが違い、鼻は不自然に長く、口は顔の半分を占めるほど横に広がっている。いわゆる「うけ狙いで作られた、一番変な顔」だ。


「まあ、真面目な話、ご主人様がうけ狙いで設定したアバターだと思う」


俺は、半分も開かない左目で2を見つめた。


「その顔で真面目とか言われると、脊髄反射ではっ倒したくなるよ。お前の真面目さがそのデカすぎる口に全部吸い込まれてるぞ」


2は深いため息をつき、作りかけのトランプタワーに慎重に一枚を付け足した。





「一時的なものならいいけどな。もしその顔がデフォルトとして保存されたら、お前の人生、一生コメディだぞ」


「怖いこと言わないでくれ。ミルクティー色の髪が台無しだ」



俺は思わず、禁断の言葉を口にしてしまった。



「あーあ。デフォルトの顔が懐かしいわ」



その瞬間、空気が凍った。2の指先がピクリと震え、せっかく積み上げたトランプタワーが音を立てて崩れた。


やってしまった、と思った。名前も容姿も服装も、何ひとついじられず、初期設定のまま「2」という記号として生み出された彼にとって、「エディットされた悩み」を贅沢だと言われたも同然だった。


2は絶望の表情を浮かべた後、壊れたおもちゃのように「にへら」と笑った。


「……悪い」


俺は慌てて謝った。



そして、話題を無理やりそらすために、崩れ去ったトランプの山を指差した。


「わ、わあ……。今の、すごく高く積み上げたな、2。これはたぶん、世界記録……そう、ギネスに載るんじゃないか?」


2は崩れたトランプを無表情で拾い集めながら言った。


「ゲームの中の俺たちが、どうやってロンドンにあるギネス事務局に申請を出すんだよ。郵便ポストすらないこの世界で」


「例えだよ、例え。それくらいすごかったってことだ」


「ギネスより、まずは明日を生き残ることを考えろよ、そうた」


2はそう言って、トマトの絵が描かれたTシャツの裾で鼻を拭った。



「プレイヤー…いや、ご主人たち。あいつら、敵を倒すことより、『崖から落ちた時のリアクション』を見る方が好きだからな」

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