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コンティニュー!―ボタンひとつで崖から落ちる、僕らの「非」日常的なお仕事―  作者: 伊丸圭介
第一章:伝説の幕開け、のち、絶望のサービス残業
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プロローグ:電源が切れている間の、僕らの平和

「なあ、もし自分が、知らない誰かの指先に人生を握られているとしたら、どう思う?」


ミルクティー色の髪を揺らしながら、そうたは言った。


そして、自分で自分の質問に答えた。


「そんなの、最悪に決まってるだろ。自分の意志で右に曲がりたいのに、無理やり左の壁に激突させられるなんて、まともな神経の奴が考えることじゃない」


「だよな。でも、それが俺たちの日常なんだ」





ここは、とある家庭用ゲーム機の中に広がる世界だ。画面が真っ暗な間、つまり『電源が切れている時間』、俺たちは驚くほど自由で、驚くほど退屈な時間を過ごしている。


伝説の勇者……つまり俺たちプレイヤーキャラクターは村の広場で居眠りをし、ラスボスであるはずの魔王は城のベランダで洗濯物を干している。狂暴なモンスターだって、この時間はただの「牙の長い大型犬」みたいなもので、尻尾を振って日向ぼっこをしているんだ。



でも、ひとたびあの音が響けば、状況は一変する。



『ボーン ボーン』という、あの、心臓に悪い、内臓に響くような時計の音。



電源が入った合図だ。


その瞬間、俺たちの体からは「自由」という名のOSがアンインストールされる。


モンスターはプログラム通りに牙を剥き、僕たちプレイヤーキャラクターは、画面の向こう側の「ご主人様」が握るコントローラーの言いなりになる。



崖から飛び降りろと言われれば、どんなに高い崖でも全力でダイブする。わざと狂暴な犬に食われろと言われれば、マヨネーズでもかけてほしいと願う間もなく噛みつかれる。


画面上では「GAME OVER」という赤い文字が出るだけの、あっさりとした出来事だ。


でも、実際に崖から落ち、実際に噛みつかれる俺たちにとっては、それはもう、笑えないレベルの地獄だった。





そして、今日もまた。あの音が聞こえた。



『ボーン ボーン』



「来たぞ。仕事の時間だ」


そうたは、自分の意思とは関係なく立ち上がった。

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