フィアーネ
ーー最悪だ。
目を開ける前から分かる。
また戻ってきた。
何回死ねばいいいんだよ?
……それにしても、
三姉妹、妙に印象に残るんだよな……
最初に浮かぶのは、長女のフィアーネ。
青みがかった白い髪。光を受けると銀色に揺れて見える。
細められた銀の瞳は優しげで、見ているだけで少し安心するような雰囲気があった。
……まあ、俺は初対面なんだけど。
次に浮かぶのは、セリーヌ。
腰まで伸びた黒髪はまっすぐで綺麗だった。
赤銅色の瞳は妙に鋭くて、こっちの考えを読まれている気分になる。
なんというか、
怖い。
いや、美人なんだけど。
そして最後は、末っ子のサーシュ。
淡いクリーム色の髪はふわふわ跳ねていて、小動物みたいだった。
金色の大きな瞳はきらきらしていて、放っておけない感じがした。
……うん。
みんな普通に美人だったな。
ーーそんなことを思いながら、目を開ける。
同じ天井。
同じ空気。
そして、
「ファルク様が目覚められましたぁあああああ!!」
ーーはいはい、同じ声ね。
俺はもうそっちは見ずに視線を下へ向ける。
ベッド。
ーーのふりをしている黒豹に。
巨大な身体がゆっくり上下している。
まだ寝ているらしい。
なんとか降りれないか?
ーー無理そうだな。だってでかいし。
その時、扉が勢いよく開いて3姉妹が駆け入ってきた。
「あー、フィアーネさん、サーシュ、セリーヌさん。」
……だったっけな。
「目が覚めたのですねっ!!」
サーシュが涙目で駆け寄ってくる。
ーーまずい。このまま飛びつかれちゃ黒豹が起きてしまう。
「ま、まて!サーシュ!動くんじゃねぇ!!!」
4人が固まった。
しまった。
俺の素が……直したほうが良さそうだ。
「な、なんて言葉遣いなの!!」
いや、待ってくれ!
「いやそうじゃなくて!」
俺は慌てて足元を指差した。
「見てくださいよこれ!俺、黒豹の上に乗ってるんですって!」
三姉妹の視線が、ゆっくり下へ向く。
黒豹。
セリーヌがわずかに目を細めた。
「……黒豹?」
「そう!しかも俺さっき噛まれましたっ!!」
「ファル兄様が……?」
サーシュの顔が青ざめる。
「俺、もうすでに二回死んでるんですよ。のど飴とこいつのせいで」
「黒豹ね。そして……のど飴?」
セリーヌが眉を寄せた。
「はい。HP2の状態で詰まらせました」
「…………」
「…………っ」
「…………」
……今、セリーヌさん笑った?
「気のせいです」
即答。声に出して聞いていないのに。
……いや絶対笑っただろ。
まあ、普通にダサいからな。
「ファル兄様は、つまり二度お亡くなりになっているということですか?」
「そうだ、サーシュ。で、気づいたらまたここに戻ってた」
するとセリーヌとフィアーネが顔を見合わせる。
……やっぱり不思議な雰囲気がある。
「あの……私たち、お兄様をお守りできるかもしれません。」
「……え?」 意外すぎて間抜けな声が出た。
「……えっと、セリーヌさんとフィアーネさんが?」
「さん?」
フィアーネがきょとんとする。
「何を言っているんですか、お兄様」
今度はセリーヌが不思議そうに首を傾げた。
「お兄様は私たちの兄でしょう?」
「え、でも年齢とか」
「フィアーネお姉様が18、私が16、サーシュが12です」
セリーヌが淡々と答える。
「そしてお兄様は20ですよ?」
……え?
俺20なの?
確か前世18だったんだけど。
……あ。
酒、飲めるじゃん。
つい嬉しくなって前のめりになる。
ーーぐらっ。
黒豹の背の上で、体が傾く。
そして地面に打ち付けられた。
鈍い音が響く。
ーーまずい。
ぴくり、と黒豹の耳が動く。
(かなりまずい)
そしてゆっくりと黄金の瞳が開いた。
「グルルル……」
低い唸り声。
空気が一瞬で張り詰める。
目が合う。
不思議と、先ほどと同様、黒豹への恐怖はない。
だが死ぬことへの恐怖。
逃げ場はない。
ーーまた殺されるのか、?
(来るーー)
黒豹の筋肉が、収縮する。
後ろ足に力が入りーー
跳ぶ。
「ファル!!」
セリーヌの叫び声と同時に、
白い影が横から割り込んできた。
ーーガンッ!!
衝撃。
黒豹の牙が、弾かれる。
「……え?」
目の前で人の輪郭が崩れる。
伸びる四肢。
ふさふさの銀色の尾。
瞬きした瞬間目の前にいたのは、もはやフィアーネではなく……
ーー狐だった。
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