35.皆んな大好き
○○○○…身体中に巻いている包帯は…既に真っ赤になっている、血が止まらないのだ。…2年ほど前…夫から一方的に離婚されてしまった女性は、1人で働きながら2人の子供を育ててきた。夕方に雨が降り始めた、5歳の弟が9歳の姉に「お姉ちゃん…お母さん傘持って行ってないよね…」「そうね…2人で迎えに行こうか?」「うん」…家から歩いて子供の足で25分…夕闇迫る工場の門の前に、幼い人影が2つ…「ありがとう、迎えに来てくれたの、嬉しいわ」と言う母親の声に、2人は満面の笑みで応えた。仲良く歩道を歩く3つの傘、その中に飲酒運転の車が突っ込んで来た…一瞬の判断で母親は2人の子供を花壇につき飛ばし…自分だけが跳ね飛ばされた…車は逃走した。救命病棟で…泣き叫ぶ2人の子供を…優しく抱きしめる2人の婦人警官…男性の警察官がドクターに「あの…この子達のお母さんは…」ドクターは、自分にも同じ年頃の子供がいるのか、沈痛な表情で涙をこぼした。母親はか細い声で…子供達に声をかけた「愛して…るわ…」そして息を引き取った。警察官の携帯電話が鳴った「…えっ?…はい…たった今亡くなられました…はい…はい、失礼します」電話を切った男性警察官が思わず「ひき逃げ犯は、逃げている途中に崖から落ちて…車は炎上、中から男性3名の焼死体が…クソ、捕まえて罪を償わせたかったなぁ」と呟いた、その時にジョニーとアンジーが天井から降りて来た…「えっ?…」誰もが息をのんで固まってしまった。ジョニーとアンジーはフリーの誘導通りに、上の階の難病患者を治し終わり…さて次の場所に飛ぶぞと、言っている時にフリー・アーから「スミマセン下の階に、事故に遭ったお母さんが居るとホタルから…今回の予定には入っていない方なんですけど、助けてあげて頂けませんか?」と言って来た、するとアンジーが「ベイ博士は…現場では臨機応変に動いてくれ良いって言ってくれてるんだから、遠慮なく言ってちょうだいね」と言って微笑んでくれた…そして今、ベットの横で泣いている2人の子供の前に、着地したのである。警察官の一人が銃を構えようとした、ジョニーはすかさず「ストップモード」と言った。次の瞬間、病室の中の人達は、話すことは出来るが、身体が動かなくなった…アンジーは既に役になり切っているので…「気まぐれな悪魔の使いなんだけど…なにか問題があるかしら…」と言ってニヤリと笑った。誰もが(ヒェ〜本当に悪魔って居たんだ〜)と思いながら恐怖で口が動かない、しかしドクターだけは震えを必死に抑えながら「そ、その方は、今しがた、幼い子供を…の、残して亡くなられたんだ、なにをする気だ…ち、血が欲しいのか?血が欲しいなら4リットルくらいなら病院に予備がある…」と言った、ジョニーはドクターを睨みながら「…吸血鬼じゃねぇよ」と言った。ドクターは更に「に、肉体が望みか?」「ゾンビじゃねぇよ」アンジーは、ジョニーとドクターの声を聞きながら(優しいドクターだなぁ〜怖くて足が震えているのに、必死になって…お母さんの亡骸を守ろうとしているのね…)と思った「肉体もいらないし、血もいらない…私達か望むことは、世の中の混乱だけ…」そう言ってアンジーは母親の遺体の上で両手を大きく広げ…マシンを起動させた。周りの人達に睨みを利かせて立っているジョニーの耳元に母親の肩に着いて居る2匹のホタルが飛んで来た「〈男〉ジョニー様スミマセン、1つお願い事があるんですが…」「なにかな?」「あの…私が担当させて頂いている御婦人…経済的にかなり大変なんです…少し援助して頂けないでしょうか」「いいよ、どれくらいすれば良いのかな?」「〈女〉えっ〜と2ヶ月滞納している家賃と、光熱費の支払いと、子供達とお母さんの洋服代と、食材費も少々、と言う事で…6000ドルほどお願いしてもよろしいですか?」「いいよ、じゃあ余分に10000ドルを御婦人の銀行口座に入れておくね」と言うと…2人の子供の肩に着いているホタルと、ドクター、ナース、警察官の肩に着いて居るホタル達も…一斉にジョニーとアンジーの周りに飛んで来て、ペコペコと頭を下げながら「ありがとうございます」と言った。その時フリー・ジーから1つの提案が出た「ジョニー様、亡くなった、ひき逃げ犯の銀行口座に15万ドル程のお金が入っています…まぁ犯人にも家庭が有りますから…2万ドルほど被害者の御婦人の口座に移しましょうか?」「いい考えだね、人をひき殺して逃げた人だもんね…逃げなければ、僕達が生き返らせてあげられたけど…今頃…地の底に引きずり込まれているだろうね…」と言って苦笑いをした。その時アンジーが「さぁ〜恐怖と混乱の時が来た…苦しむがいい」と言って魔女っぽいポーズを決めた。が…そのセリフだけでやめておけばいいのに、ジョニーとアンジーはホタルに向かって「ご苦労様、これからもよろしくね、頑張ってね」と言ってしまったので…誰もが(…えっ⁇…なに…私達に?誰の事…なに…)と思った。アンジーは御婦人の耳元で「家に帰ったら絶対に人には言わず、銀行口座の残高を確認して下さい…これから先も…辛い事がたくさんあると思いますけど、頑張ってくださいね、幸せになって下さいね」と囁いた後に、アンジーはジョニーと一緒に…壁の中に消えて行った。病室の中に居る人達は一斉に動けるようになった、警察官とドクターは、亡くなった母親に目を向けた「良かった、遺体が盗まれるのかと思った」と警察官が言えば…ドクターは子供達に「可哀想に、怖かっただろう」と声をかけた…その時、母親がスクッと起き上がった。部屋中が「えっ〜…」と言う大絶叫、そして歓声と拍手と涙。母親は満面の笑みで2人の子供を抱きしめて「御二人の神様が来て下さって…頑張って幸せになってね、って言ってくださったの。見て、ママの身体…全部治して頂いたのよ」と言って子供達にキスをした。周りの人達は(マジかよ〜あの御2人って、えっ〜)(神様の冗談って笑えねぇ〜悪魔だと思ったよ〜)(神様の服装は白色って思っていたけど…本当は黒なんだ〜)(そう言えば、頑張ってねって声をかけてもらった〜)(なんだか今日はめちゃくちゃハッピーだな)などと思っていた…ジョニーとアンジーは人を混乱させる事に、あと一歩の所で失敗した。
○○○○○…グレイとルーシーは個室で寝ている男性の枕元に立っていた。5年ほど前に発病した病気は…段々と動けなくなる病気らしく…今はもう、声を出す事すら出来ない。グレイは両手を広げ「直ぐに治りますからね」と言ってマシンを可動させた…その途中…ドアが開き、奥さんと2人の娘と1人の息子が入って来た。4人はグレイとルーシーをドクターとナースだと思ったらしく深々と頭を下げた。ルーシーは(ちょっと待って、普通は私達を見て変だと思うでしょ…黒衣のドクターなんていないわよ普通は…)と思ったが、奥さんは既にベットの横に来て「あら、今日は顔色がいいわね…苦しそうじゃなくて良かった」と言って涙ぐんでいる、すると3人の子供達もベットの周りに来て「お父さん…」と口々に言いながら手や足をなぜた。グレイとルーシーは顔を見合わせて(ええ家族やん…お父さん愛されているやん…)と思った。その時フリー・グーから「グレイ様、あと5秒で完治します」グレイは頷いた後に「奥さん、もう直ぐ御主人の病気が治りますよ」と言って微笑んだ、すると3人の子供達が一斉に「えっ〜本当ですか」と言った後に必死な形相で「お父さん、お父さん…」と叫び出した、その時フリー・ルーが「ルーシー様、あと3秒で院長が7人のドクターと3人のナースを連れてこの部屋に入って来ます」と言い終わると同時に院長一行が病室に入って来た。家族の「あなた…」「お父さん…」と言う悲痛なまでの叫び声に…院長達は一瞬たじろいだ(えっ〜家族の方には余命1週間って言ってあるのに…困ったな〜もう助からないのになぁ…」と思っていた…その時「あなたー」と言う奥さんの奇声が…院長達は患者に目を向けた、すると「ただいま、お父さん治ったよ、こちらの先生が治して下さったんだよ」と言ってグレイの顔を見て泣きだした。妻は夫の胸の中に飛び込み、子供達は両手で顔を隠して泣きだした。院長は思わず「えっ?あんたら誰?…あんな黒い服のドクターなんてウチには居ないけど…」と呟いた、そのセリフを聞いたルーシーが「ドクターじゃないよ、気まぐれな悪魔の使いだよ」と言ってニヤリと笑った、しかし内心では(良かった〜悪魔のキャッチフレーズが言えて、家族の人達は最初からドクターだと思い込んでいるんだもん、やりにくかったわ〜)と思っていた。ナースの1人が「誰ですか貴方がたは?悪魔の使いなんてふざけているようでしたら、警察を呼びますよ」と言ってグレイとルーシーを睨んだ。グレイは待ってましたとばかりに「黙れ、お前達は動けないんだぞ、どうやって警察に知らせる気だ?あっ…言ってみろ」院長一行はエッと思いながら、身体を動かそうとするが動けない「なんで動けないんだ?…」と言い出した院長達の前で、グレイとルーシーは笑いながら悪魔っぽいポーズを決めた。ルーシーがグレイの耳元で「練習しといて良かったわね、素敵よグレイ…」と言って目を潤ませた…瞬間的に(可愛い…)と思ったグレイはルーシーの腰にサッと手を回すとキスをしようとした、ルーシーはとっさに「あっダメ…」と言ったがグレイの方が早かった…「ルーシーこそ素敵だよ」…本気のキスをされたルーシーの両手はダランと落ちた…グレイはルーシーを抱きしめたまま「…俺は腹が空いた時には…女房の精気だって吸い取るんだ…まだ足りない…お前達からも取らせてもらおうか…」と言ってニヤリと笑った。院長一行は恐怖と絶望感で足が震え出した。フリー・グーがグレイの耳元で「グレイ様、ホタル達からの報告によりますと、院長の奥さんは2年前に原因不明の高熱を出し、ずっと意識が戻らず今も…それから看護師長の息子が去年、学校の階段から落ちて脊髄をやられ、現在も首から下は動かない状態です、2人ともこの病院に居ます」「ありがとう、今すぐ2人をここに…」フリー・グーは館内放送で2人を連れて来るようにと促した。院長と看護師長は悲鳴を上げたが…何も知らない控え室に居たナース達は2人をベットに寝かせたまま運んで来た。院長はグレイに対して「何をする気だ、やめてくれ28年連れ添った女房なんだ…」と言った、すると看護師長も「子供に触らないで、動けなくても私の宝物なの」と言って泣きだした。グレイはその言葉には一切答えず、ぐったりとしたルーシーをオンブした状態で2人のベットの横に立ち…両手を大きく広げた…ルーシーはまだグレイの背中でウットリしている…次の瞬間、院長の妻と、看護師長の息子が「あっあぁ〜」と言う声を上げた、院長は思わず「くそー悪魔め一、生涯怨み続けてやるー」と叫び、看護師長は「ちくしょう〜バカ野郎ー」と叫んだ。グレイは「フリー・グー、ストップモードを解除して」全員が動けるようになった…その時、院長達の目の前で「あなた…」「お母さん」と言う声が…2人は満面の笑みで、立ち上がって来た。院長は「あっー」と叫んだ後、グレイに対して「神様お許しください、私は一生涯あなたのシモベです」と言ってひざまずき、看護師長も「私の暴言をお許しください」と言ってひざまずいた。グレイはそれには答えず…部屋の中に居るホタル達に向かって「何時もご苦労様です、ありがとう、何時も皆んなの事を考えて居るんだよ、何かあれば直ぐに飛んで来るからね…」と言って手を振ると、ホタル達も嬉しそうに手を振り返してくれた、その時ルーシーがグレイの背中から顔を上げ「皆んな大好きよー」と言って手を振った…ホタル達は又も嬉しそうに手を振り返してくれた。グレイはルーシーをオンブしたまま壁の中に消えて行った、後に残された人達は歓声を上げて喜び出した「私達は神様に愛されている」「何時も見守ってくれているんだ〜」と言って大はしゃぎである。グレイとルーシーは又も…混乱させる作戦に貢献する事が出来なかった。。。。




