227 農民 if ルート
スローライフ→農業
…みたいな昨今の風潮
「混乱する」という意見があったので…
『この話は本編です』
翌日。
ザクッ、ザクッ ザクザク… ドシャッ!
まだ陽が昇って間もない早朝にもかかわらず、猫人族の村の畑では多く…というかほぼ全ての村人が揃って作業をしていた。
どうやら俺が「急げば今年の作付けに間に合う」と言ったことで、ボスは「善は急げ」とばかりに昨日の内に村中に話を通していたようだ。
確かに…畑が駄目になった原因の調査は、他の同系統の依頼と比べると「調査」という調査をするべくも無く即完だった。
その後に今日の作業を周知する時間は半日以上あったわけだが…、それにしても即日で村の住人を総動員できるのはボスの人望の賜物か?
しかしまぁ…先にアポ無しで訪ねたのは俺の方とはいえ、朝食の後に一息吐く間も無くのボスの訪問には驚いた。
何せ勢い良く玄関が開いたと思えば、間髪入れずの─
「お~い!皆集まったぞ、早く来てくれ!」
─だったからな。
昨日ボスと別れた時点では「仲間と相談する」とは言ったが、「依頼を受ける」等とは一言も言ってなかった筈なんだが…。
今回は偶々メンバーの大半に用事があって滞在の延長が決まっていたが、もしも今朝村を出る予定だったらどうするつもりだったのだろうか?
(…そうなったらそうで、新たな畑の開墾になっていただろうな…。)
─等と心の中でぼやきつつも、俺は村の力自慢に混じって休耕地の畑起こしを行っていた。
俺は作業の監督じゃないかって?
…それはそうなのだが、「急ぎ」かつ「作業者が素人」となれば、最初の指示以外は監督することなどが無いのだ。
今回の作業を大まかに分けると、畑起こし・悪くなった土の除去・除去された土の運搬の3つとなる。
この3つの作業の中で、俺の指導が必要なのは畑起こしくらいであることが理解できるだろうか?
そして畑作業は基本的に、身体に辛いものだ。
そんな中で、視界に暇そうに立ちながら時折口だけ出している奴がいたら、どうだろうか?
…ぶっちゃけ、俺だったらそいつに切れる。
まぁ…村人達のヘイトを買わないという理由の他にも色々と利点があるわけだが、それは割愛しよう。
ザクッ!
「ふぅ…。」
(しかしまぁ何というか…)
俺は作業の合間の一息を吐きがてら、村人総出の作業風景を見渡す。
その中で自然と目が向くのは、村人達の振るう鍬やスコップといった道具だった。
俺も鍬を借りて作業をしているわけだが、それらは辛うじて刃先が金属製の安価な農具であったのだ。
(数か質か、か…。)
刃が総金属製の農具を使えば作業の効率は良くなるが、使用されている金属が多い分…値は張る。
今は狩りで得た素材を売ったりして資金を得ているようだが、村を開拓していた当初は新たに資金を得ることは難しかった筈。
となると手持ちの資金で遣り繰りせねばならず、全員に行き渡るだけの道具を揃えるには質を落とすしかなかったのだろう。
質が悪くとも農具は農具であり、素手で土を掘り起こすよりは余程ましだ。
(…だからこそ、ニーニャの母親の存在はでかかったんだろうなぁ。)
一度は開墾された畑であっても、数年放置されただけで雑草の根やら小石やらで畑起こしに大変な苦労をしているのだ。
何本もの木を切り倒し…切り株を掘り起こし…といった、俺たちが今やっているより遥かな重労働を丸々灰にしたとあれば…そりゃあ英雄であるボスの父親と並んで称されることだろう。
(…いっそのこと、マリ姉に焼き払って貰うか?)
疲労感の割りに中々進まぬ作業に、畑の雑草どころか村まで焼き払われそうな物騒な考えまで浮かんでしまう。
パンッ!
「さて…、やるか!」
ザクッ、ザクッ
うだうだと考えていても作業が進むわけでも無し。
それに報酬を貰う以上、いくら直接依頼でも適当な仕事をするわけにはいかない。
俺は自分の頬を軽く叩いて気合いを入れ直すと、再び草原を裏返すことに没頭するのであった。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
ザクッザクッ
集中して作業を進めること、暫く。
ドンッ!
「うぉ!?」
不意に背中を襲った衝撃に、俺は驚きの声を上げる。
スルッ
そして背後からすかさず俺の腰に周るのは、華奢な…おそらく女の腕。
ギュッ!
「ねぇってば!」
ムニッ
少し怒ったような声(と背中に押し付けられる弾力)から、俺は即座に犯人を割り出した。
「なんだよカティア、危ないだろ。」
俺は用件を訊ねながらも、作業中のところに悪戯してきたカティアに注意を一言。
土を中に蔓延る雑草の根ごと深く掘り返すため、俺は鍬を大きく振りかぶっていた。
背後まで届くか?と言われれば、そんな馬鹿で無駄な真似はしていない。
だが万が一というものはあり得るし、手元が狂って自身の足の爪先を耕す…なんてのは勘弁だ。
「もうっ、やっと気付いた?」
しかし俺が咎めたことなど華麗にスルーする…どころか逆に、頬を膨らませて「私怒ってます!」とアピールしてくるカティア。
「危ないのは言われなくても分かってるわ、子供じゃないんだから!
でもあなた…私が何回も声を掛けたのに、ちっとも気付かないんだもん。」
カティアの主張によると、声を掛けたが俺が反応しないためやむを得ず…ということらしい。
「頑張ってくれるのは嬉しいけど、そんなんじゃ身体を壊しちゃうわ。」
そのカティアの言葉に周りを見ると、思い思いの場所に腰を下ろして休憩を始める村人達の姿が。
「はいこれ、お茶とクッキー。」
俺が状況を把握すると、カティアは手に提げた篭から飲み物と摘まむものを渡してきた。
そしてそれらを受け取る際─
「汗すごいわね~」
ビクッ!
(ヤバ…!)
─カティアの何気無い一言に、俺は火照っていた顔から一気に熱が引く。
「あっ、わr」
「私が拭いてあげるね♪」
バサッ!
「わぶ!?」
慌てカティアから離れようとした俺だったが、カティアは「臭い」等と言って嫌悪するどころか、俺の顔を伝う汗を拭くという甲斐甲斐しい行動に出た。
…ただ、その行為に文句を言うことが贅沢であることは分かっているのだが、「拭く」というよりは「揉みくちゃにする」と言った方が正しいのはちょっとどうかと思う。
サクサク
(おっ、旨いな。)
「そのクッキー私の手作りなんだけど、どう?
美味しい…?」
俺がカティアに文句を言えないヘタレだと思う奴は、カティアの上目遣い&首傾げの直撃を食らってから出直して来い。
あれ?
カティア、ヒロインよりヒロインしてない!?
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