228 変わる?カンケイ
Tips:〈王立研究院印の錬成肥料〉
『世界の食糧庫』と称される〈フラワーフィールズ王国〉の王立研究院にて、作物の更なる収量アップを目的に開発された錬金肥料。
植物の成育に必要な要素を徹底的に研究した末に開発された〈王立研究院印の錬成肥料〉は、本来植物の成育に適さない荒野や砂漠をも農地に変えるほどに効果が高かった。
しかし元々肥沃な土地である〈フラワーフィールズ王国〉内では見込まれたほどの需要は無く、多額の研究費用が未回収となったことから王立研究院における「負の産物」の一つと化した。
ファンタジー的化学肥料。
…久々のTipsは如何でしたでしょうか?
畑の再生作業を始めてから数日が経った。
作業自体はスローペースながらも着実に進み、畑起こしに関しては残り一区画となっていた。
残り一区画ともなると村人達も作業に慣れたということもあり、他の作業を手伝える程度には人手に余裕ができていた。
「うぅむ…。」
しかし余裕があることは良いのだがお役御免…まぁ、本来の形に戻っただけであるのだが…。
要は俺が手持ち無沙汰になったのだが、そうなると作業で忙しくしていた時には気付かなかった問題に気付く。
(…いや、気付いてはいたが作業を優先させたんだったな。)
だが問題を後回しにしたツケは大きく、手が空いたことでこうして悩むこととなってしまっている。
その問題が何かというと─
「おーいラスト!この退けた土はどうするんだ?」
「取り敢えず、川から離れた適当なところに纏めて置いといてくれ!」
─畑から取り除いた腐った土の処分方法は、ちゃんと考えてある。
といっても森に分散して撒くだけなのだが…そうすることで動物の死骸等と同じく、腐った土は肥沃な土へと還っていくのだ。
既に方法が決まっているのに今は放置するのは、単純に色々と不足しているからだ。
畑の再生作業自体には余裕ができたものの、それと土の処理を同時に行うには人手も道具も…特に荷車が足りない。
そして畑起こしの後直ぐに作付けができるわけでは無いので、時期に間に合わせるにはどうしても腐った土の処分は二の次になる。
しかし腐った土を放置することには害しかないのは確かなため、ボスには腐った土の処分をきっちりと言い含めておかなければ…。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
それから、腐った土の一時保管場所の整備(浸透防止の敷板と木枠の設置)を行い、ボス…とついでに保管場所の整備を行った何人かに腐った土の処理について執拗なまでに言い含め終えると、陽は真上。
ぐぅううぅ…
…つまり、昼飯時だ。
チョンチョン
腹を鳴らしたのは誰かと俺たちが顔を見合わせていると、誰かが俺の背中を突つく。
このタイミングで用件があるといえば、それは昼飯以外にあるだろうか?
そして呼び掛けるでも無く、こうしたアピールをするのは─
「おう、どうしたニー…」
─振り返った俺と対面したのはニーニャ…ではなく、まさかのソーナであった。
「…私で悪かったわね。」
予想外に思わず言葉を詰まらせた俺に、ソーナはばつが悪そうにそう呟いた。
「あ…いや、…何かスマン。」
人違いも失礼ではあるが、人の顔を見て言葉を詰まらせるのは比べものにならないほどに失礼だ。
村に居た時、俺が近くを通り掛かるだけで静まり返る井戸端会議に、俺がどれ程心を痛めていたことか…。
(ウッ!?アタマガ…!)
…これ以上、記憶の蓋を開けるのは止そう。
ダレモシアワセニナラナイ。
俺の数あるトラウマの内一つは、さておき。
俺が暇さえあれば頭を悩ませている問題というのが、このことだ。
勘違いされないようにより具体的に言うのであれば…、「ニーニャが俺に冷たい」のだ!
何を言っているか理解出来なくとも構わないが、俺にとっては由々しき事態なのだ!
「既に3人もの美人な婚約者達がいるのに何を」という話だろうが、そもそもニーニャが居なければマリ姉と再会したとしても…おそらく今のような関係にはなれなかっただろう。
最初こそ、ニーニャはいずれ俺の元から居なくなるものとして一線は越えまいと努めていた。
しかしいつの間にか、いや…多分パーティーを組んだ時には既に、俺にとってニーニャは居なくてはならない存在になっていた。
確かに、猫人族の村に来てから皆とイチャつく時間が取れていなかったり、滞在の延長でニーニャに我慢と負担を強いてしまったり、狩り以来カティアやソーナと接することが多かったり─。
(あれ?おかしいな…。)
ニーニャが俺に冷たくなる理由を少し考えただけなのに、自分でも「愛想を尽かされても仕方ないのでは?」と思い始めてきた。
(…いやいや!?)
だが「ニーニャが愛想を尽かした」ということを認めたく無い俺は、それで何が変わるわけでも無いのに必死で「仕方ないことだった」理由を付ける。
イチャつく時間が無かったのはニーニャだけでは無いし、滞在の延長もパーティーのルールに則って決めた。
カティアやソーナと良く接しているのも…役得であることは否定しないが、出会いの印象が悪かっただけに特に理由も無く拒絶するのも躊躇われる。
…まぁ、どんな理由を付けても、やっていることは浮気男のそれである。
俺にはそんなつもりは無くとも、事実としてマリ姉たち3人と比べると俺とニーニャの繋がりは弱くなる。
そこにアピールのやり方には難があるものの、一心に好意を向けて来る奴がいれば…靡いてしまっても責められない。
…かくいう俺自身がそうだったのだから。
(あと少しだったじゃないか…!)
春を迎えれば、人間基準でもニーニャは成人として扱われるようになる。
俺はその時にニーニャに正式な交際を申し込むつもりだったのだ…が、もういくら悔やんでも遅い。
ニーニャはあれだけ俺に好意を向けてくれていたのだから、変に意地を張らずに抱けば…もしかしたら違ったのかもしれない。
「はぁ…。」
激しい後悔で、俺の口から思わずため息が漏れる。
するとそのため息に思わぬ反応があった。
「何よため息なんか吐いちゃって、辛気くさいわね。
…やっぱり嫌なんじゃない。」
刺々しい言葉で刺されたと思えば、直後に聞こえた悲しげな呟き。
「ッ!?いやいやいやいや、それは無い…絶対に!」
まさかまだソーナがいるとは思わず動転しながらも、全力でソーナの呟きを否定する俺。
容姿はニーニャと似ているだけあって当然のように美少女だし、刺のある言葉も慣れてくると単に照れ隠しでそうなっているだけだと分かる。
…そのソーナの様子に子猫が威嚇している様子を重ねて、俺が微笑ましく思っているのは本人には内緒の話だ。
「ふ、ふ~ん?…そ。」
動転していたことで言葉が不恰好になったことが良かったのか、恥ずかしそうに顔を逸らしたソーナ。
ストン、ゴソ…
すると何を思ったのか、おもむろにその場に腰を下ろして持っていた篭から何かを取り出す。
「はい、あなたの分。」
そしてソーナから俺に渡されたのは、今日の昼食らしいパンと肉の串焼きだった。
ラストの悩みが後悔に変異してますが…
どうなることやら。
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