220 実績解除(?):フラグ建築士
くり…すます?…ナニソレ?
ドスッ!
「ギュィッ…!?」
俺の投げた槍の穂先に首を貫かれ、短い断末魔を上げて一撃で絶命する〈角兎〉。
ズボッ
「よっ…と、ふう…。」
〈角兎〉の死体から槍を引き抜き、〈拡張袋〉に入れて一息吐く。
これで狩りの成果は〈山林狼〉が1体に、〈角兎〉が3体。
狩りの成果では無いが、ついでに痩せ細った〈ゴブリン〉も数体討伐しておいた。
(今日はこの辺で帰るか。)
まだ陽が落ちるまでには時間に余裕があるが、狩り過ぎてもいけない。
帰りに遭遇したら狩る、くらいの気持ちで丁度良いだろう。
…そんな俺の考えが「フラグ」になってしまったのだろうか?
…ブォオオッ……
バッ!
「っ!この声は!?」
聞こえてきた〈オーク〉の鳴き声に、俺は反射的に槍を握り込み、即座に戦闘態勢を取る。
(近いぞ…、…それに興奮している?)
野生で生きていく上で、無駄な吠え声は命を縮める行為に他ならない。
おそらく…ウルフに襲われたか、あるいは…何かを襲ったか。
(…声が聞こえたのはあっちか?)
ザッ…
〈初心者の森〉でも深層にいる〈オーガ〉の吼え声が、浅層まで聞こえてくるのは珍しくは無いことだ。
だが嫌な予感を覚えた俺は、〈オーク〉の吠え声が聞こえて来た方へと足を向ける。
ザッザッ…
(確かこっちは…、村へ向かう方じゃないか?)
ボスは奥に行けば〈オーク〉が出るかもしれないと言っていたが、それは狩場の浅い場所に出ないということでは無い。
俺達が獲物を求めて奥地に入り込んでいるのと同様に、〈オーク〉もオーク側の奥地…つまり猫人族の村近くに来ていてもおかしな話では無いのだ。
ブォオオッ… バキバキッ
(近付いて来る…?)
俺が音の聞こえた方に向かっているのもあるだろうが、俺が歩いて行く以上に音が向かって来る方が速い。
〈オーク〉に襲われた“何か”が魔物であるなら、俺がいる方へ向かって来る筈は無い。
しかし実際は、俺がいる位置が分かっているのか?…と思ってしまう程に、音が俺に向かって一直線に迫って来る。
そのことが俺の嫌な予感を更に駆り立てる。
バキバキッ… ブォオオッ!
「っ!」
(近いぞ…!)
俺は歩みを止め、その場で身構える。
そこへ─
ガサガサッ…、ビュッ!
俺の前…やや左側に寄った藪が葉擦れの音を発てたかと思えば、そこから白い影が飛び出して来た!
「っ、ご主人居た!」
「ニーニャ!?」
(…とチャトラン?)
藪から姿を現したのは、グッタリとしたチャトランを引き摺るようにして担ぐニーニャだった。
小柄なニーニャに青年1人担ぐのは難しく、ニーニャの額には珠のような汗が浮かぶ。
(何でここに!?いや、今はそれどころじゃ─)
ダッ!
何故ニーニャ達が奥地にいるのか?とか、ボスの言い付けを破った理由などは、今はどうだって良い。
状況からして、〈オーク〉が襲っていたのはニーニャ達で間違いないだろう。
俺は一刻でも早くニーニャを保護するべく、駆け出した。
バキバキッ!
「ブヒョオオォッ!」
─が、ニーニャ達が飛び出して来た藪を踏み折り、血走った目の〈オーク〉がニーニャ達の背後から迫る。
その距離は〈オーク〉の口から撒き散らされる涎が、逃げる二人の背にかかってしまうのではないかと思う程に近い。
このままでは間に合わない!
そして悪いことは更に重なり─
「ぅ…、ん…?
…うわああぁっ、ニーニャ!!」
気を失っていたらしいチャトランが目を覚まし、状況を把握するとパニックを起こした。
「チャトラ落ちつ─」
ガッ!
「「あ…」」
今まさに襲われている状況で、声掛けだけで瞬時に落ち着く筈も無く。
チャトランに気を取られたことで、木の根に躓いてしまうニーニャ。
「っ…!」
「ぅわあっ!?」
ドサッ…
チャトランが暴れていたこともあり体勢を立て直せず、チャトランに押し倒されるように転倒するニーニャ。
「ブッヒョオオォッ!」
ラッキーとばかりに二人に手を伸ばす〈オーク〉。
(させるかっ!)
「『猪突猛進』っ!」
ドンッ!
最近何かと頼りになるスキルを発動し、俺のことなど眼中に無い〈オーク〉に突貫。
ドッ!
スキルの加速を得て、〈オーク〉の手が倒れた二人に届く前に、俺の槍の穂先が〈オーク〉の胸に刺さる。
「ブヒャアアッ!」
(浅い!?)
しかし距離を詰めるために勢いを使ってしまったのか、悲鳴を上げながらも〈オーク〉は止まらない。
普段であれば怯んでいてもおかしくは無い筈なのだが、ご馳走を目の前にした興奮が痛みを上回っているのだ!
(こなくそっ!)
「『猪突猛進』っ!」
止まらないのなら止めるまで。
俺は「この豚野郎を確実に殺す…!」という意思を込め、二度目の『猪突猛進』を発動。
「ブギャア─」
ドパンッ!
穂先が更に深く刺さっていく痛みに悲鳴を上げかけた〈オーク〉だったが、次の瞬間には胸の上から頭にかけて消し飛んだ。
(うわぁ…。)
その瞬間を間近で見てしまった俺は、我が事ながらにドン引きだ。
そして〈オーク〉は倒され全員無事であるが…
「ひぃっ!」
ブルブル
ニーニャを抱きしめ、俺の視線に怯えるクソガキ。
スッ
無事も一応確かめたことだし、恐怖の一因にもなっていそうなオークの死体を仕舞おうと動けば…
ビクッ!
…まぁ、視線だけでもダメなのに、動くのが平気なワケ無いか…。
というか、ニーニャもいつまでそうさせているつもりなのか。
相変わらず抵抗の薄いニーニャに苛つきを感じた俺だったが、嫉妬に任せて態と怖がらせるなどという小さいことはしまい。
結果、誰も動けないという奇妙な状態のまま、数分から10分程が経った頃。
ザワザワ
「………っ!」
「………!」
「……ぃ、……!」
「……辺で……た!」
(おっ、やっと来たな。)
ガサガサッ
「おいっ、あそこだ!無事だぞ!」
「あれはまさかオークか!?」
ボスを含めた村の狩人達が合流したことで、ようやく俺は身体を動かすことができたのであった。
ラスト は 『ダブルタップ』 を 覚えた!
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