219 〈猫人族の狩場〉 ※別視点あり
予告詐欺スマヌ。
(※後半別視点になります。)
今回の狩りをする…仮に〈猫人族の狩場・奥地〉とする。
道中ボスに聞いたここで出てくる魔物は、俺の予想とそう変わらないものばかりであった。
1体見かけたら周辺に30体は居る…と言われる程に何処にでも居る、〈歯鼠〉に〈ゴブリン〉。
草原や森などの緑豊かなフィールドではお馴染みの〈角兎〉に、〈ウリボア〉。
そして─
ガサッ
「グルルル…ッ!」
「お?」
(…こいつが〈山林狼〉か!)
ボスに注意するよう言われた、〈初心者の森〉に生息している〈森林狼〉と良く似た狼系魔物だ。
こうして実際に姿を見ると毛皮の色が若干異なり、〈森林狼〉より脚が太く爪が大きい。
〈森林狼〉との戦闘経験もあるボス曰く「〈森林狼〉よりも強いぞ」とのことだが、5体以上の群れは見たことが無いらしく、群れの連携が厄介な〈森林狼〉とは比べられない…と俺は思う。
ス…
(まぁ、1体だけならこっちが強いんだろうがな。)
俺は目の前で唸る〈山林狼〉に、白い穂先に黒い線の走る相棒を向ける。
「グルル…、ガウッ!」
俺のその行動に攻撃の意思を感じたのか、気合いを入れるかのように吠えた〈山林狼〉が跳び掛かって来た。
だが〈森林狼〉より強靭な脚力も、〈森林狼〉よりデカい爪も…。
〈森林狼〉と変わらぬ動きをするなら、爪などより遥かに間合いの長い槍を持つ俺の脅威じゃ無い。
「おら、よっ!」
ヒョイッ、…グサッ!
「ギャウッ!?」
跳び掛かって来るのに合わせて穂先を跳ね上げてやれば、空中で避けられない〈山林狼〉は串刺しになる以外無い。
シャッ…
「とりゃ!」
ズバッ!
そして俺は腰に下げた二代目シャベルナイフを振るい、〈山林狼〉に暴れる隙も与えず止めを刺した。
狼系魔物の肉はあまり旨くはないのだが食べられなくは無いので、依頼達成報告前にどうかとは思ったが持って来た〈拡張袋〉に丸ごと確保。
(…とりあえず、最低限の仕事は果たせたな。)
だが陽は未だ天頂に届いておらず、俺は次の獲物を求めるのであった。
─ said ニーニャ ─
ガッ!
「ヂュッ!?」
ササッ!
「あ~っ!また外した!?」
(へたくそ…。)
…何でこんなことになっているかと言えば、チャトラの“いつもの”ワガママ。
おかげでご主人と一緒の狩りのつもりだったのに、昨日散々ご主人を馬鹿にしていたチャトラの“お守り”を押し付けられた。
子供の時からチャトラは何故かわたしが好きみたいだけど、アピールが鬱陶しくてわたしは嫌い。
なのにチャトラは「ニーニャは僕のことが好き」なんて、意味の分からない勘違いをしている。
…10才になった時に、チャトラを叩くのを止めたのは失敗だった。
長は10才になったチャトラに「女にモテる方法」を教えたみたいだけど、やることが違くても鬱陶しいのは変わらなかった。
…長もそんなことを教えるくらいだったら、少しでもチャトラの躾をした方が良かったと思う。
そのせいでチャトラのことが好きなソーが、チャトラに避けられているのは可哀想だった。
ヒュゥッ
「今のはナシ!…風が吹いてたんだ。」
獲物を逃がして地団駄を踏んでいたチャトラが振り返って、聞いてもいないのに言い訳をしてくる。
…興味が無いから言うつもりは無いけど、矢を射った時に風は吹いていなかった。
それに矢を射る前に「風が吹いていない今がチャンスだ!」…とか自分で言っていたし。
「つ…次は本気を出そうかな?
ほらニーニャ行くぞ、ついて来い!」
そのことを思い出したのか言い訳を変えて、チャトラは誤魔化すために歩きだす。
…チャトラが向かう先の反対を見れば、枯れ草に夢中の〈角兎〉が居たのに。
チャトラのこの有り様を見せられると、長がチャトラの“お守り”をわたしに言ってきたのは、チャトラに自分達の狩りの邪魔をされないように?
…それがチャトラだけなら仕方ないけど、もしかするとわたしも?
(むぅ…。)
チャトラなんかと同じように思われるのも嫌だけど、わたしのせいでご主人が信じられていないのはもっと嫌な感じがした。
パキッ
「あっ…。」
考え事をしながらチャトラについて歩いていたら、わたしはうっかりと小枝を踏み折ってしまう。
「ニーニャ、静かにしろよ!
獲物が逃げちゃうだろ!?」
そしたら枝の折れた音が聞こえたのか、前を歩いていたチャトラが振り返って怒ってくる。
「ん、ごめん…。」
チャトラの怒る声の方がよほど大きいけど、わたしはただ頷いて謝る。
こういう時に言い返しても無駄なのは、子供の時に珍しくソーが失敗した時の、チャトラとソーの口喧嘩で知っている。
「…ったく、気をつけろよな。
失敗は誰にでもあるからな!」
案の定…あまり怒ってもいなかったチャトラはわたしの失敗を咎めて満足したのか、再び獲物を探して歩き始める。
それからというもの─
「やっ!」
獲物〈歯鼠〉、結果→ハズレ。
言い訳 「矢の軸が曲がっていた。」
チャトラが拾った見せてきた矢は折られていて、曲がっているかどうかは分からなかった。
「ほっ!!」
獲物〈角兎〉、結果→ハズレ。
言い訳 「陽の光が眩しかった。」
確かに陽は出ているけど、普通にしていれば眩しくは無い。
狙っていた〈角兎〉が、空を飛んでいたわけでも無い。
「当たれぇ~っ!!」
獲物〈歯鼠〉、結果→ハズレ。
言い訳 「〈歯鼠〉が矢を避けた。」
矢を射る前に大声で叫んでいたら当然。
そうじゃなくても、魔物も生きるために必死。
獲物は1体も獲れず、お昼になった。
ガジガジ
「くそ~、こんな筈じゃ…。
前は父さんと〈ウリボア〉を狩ったんだぜ!?」
アピールしてくるのはもう…チャトラの勝手だと思うけど、自慢するならせめて自分の分の携行食を用意してからにして欲しい。
「そうか!?ここの獲物は小さ過ぎるんだ!
ニーニャ、この後は奥に向かうぞ!」
「…え?」
長はわたしにチャトラを押し付けてきた時、狩場の奥には行かないようにチャトラにも言っていた。
今のわたしは〈オーク〉から逃げるくらいなら余裕。
でも、チャトラを連れて…?
「大丈夫だよニーニャ。
〈オーク〉なんか僕が倒してやる…!」
………。
助けて、ご主人!
今回の教訓
『駄目と言われるのには相応の理由がある。』
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