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春夏秋冬サヨナラ、マタ…  作者: 歩夢
【第一章】春、キミを疑う
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第5話 疑惑

 森は、僕の忘れている記憶を探り、無理矢理引き出そうとしている。

そんな気がした。

それとも、どこかで植え付けられたものなのか——


 ノイズの言葉を聞いてから、ずっと心がざわついている。

何かを思い出さないといけない。

でもそれがわからない。


 記憶が混在し、何が本当で、何が嘘かわからない。


——怖い。


 肩がこわばり、呼吸が速くなる。

その時、左後頭部に、鈍い痛みが走った。


「大丈夫かい?」


 相手が心配そうに僕の顔を覗き込む。


「……なかなかしぶといね」


 相手は小声で独り言を言っている。

丸聞こえだ。

なかなかしぶといね、何を考えているんだ?

僕は足元が定まらず、白い木に身体を預けようとした。


「ダメだ!」


 その声に、思わず身体が強張った。

いつもの軽い口調から想像がつかない緊迫な口調。

その表情は、隠しきれない不安が滲んでいた。


「そ、それにしても立派な蒸気機関車だね。ワタシも一度は乗ってみたいな。行ってみない?きっと中身も豪華だよ」


 相手は何かを誤魔化すように、僕の手を取ろうとした。


「やめろ」


 僕はとっさに相手の手を乱暴に振り払った。

相手の不可解な言動に不快感を感じたからだ。


 僕は相手が触れさせないようにした白い木に触れようとした。

が、相手は僕の腕を掴み、再び阻止した。

静寂が生まれ、風を受けた葉音だけが、二人のあいだを満たした。

相手の手が震えている。


「……ごめん」


 相手は、憂いを帯びた表情で視線を落とす。


「わかってる。焦っちゃダメなんだ」


 相手は自分に言い聞かせるようにポツリと言う。

少し間を置いて、相手は続ける。


「これだけは言わせて、ワタシは君の——」


 その時、視界が一気に遠のいた。 

相手の言葉を最後まで聞き取ることができない。


「君は、きっと——」


 その続きが聞きたかった。

けれど同時に——それを聞いてはいけない気がした。

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