表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春夏秋冬サヨナラ、マタ…  作者: 月嶋歩夢
【第三章】秋、キミと笑う
PR
16/16

第16話 夢

 匂いは、細く長く、宮殿の入り口一直線に伸びている。

この先に何があるのか、僕にはわからない。

豪華な宮殿に、煌びやかな人たち。

しかも隣には王子様だ。

僕の知ってる日常ではもちろんない。


き、緊張するなー。

 

 僕はこの貴重な状況を楽しめないでいた。

すると、男性は僕の手をそっと引いた。


「さあ、行きましょう。皆さまがお待ちです」

「み、皆さま……?」


 返答を待たず、僕の足は前へと導かれた。

宮殿の正面にそびえる巨大な扉。

近づくにつれ、その圧倒的な存在感に息を呑んだ。


「大丈夫ですよ。ワタクシがそばにいます」


 男性は優しく微笑みながら僕に言った。

金の装飾が煌びやかに輝く白い扉。

僕たちがその前に立つと、ゆっくりと扉が開いた。


「うわぁ……!」


 眩い光とともに、音楽が流れ出す。

軽やかな弦の音が響き、人々の楽しげな笑い声が重なっていた。

別世界が、僕の視界に広がっていた。


 豪華絢爛な空間に圧倒されて、僕は体が動かなくなっていた。


「感動の瞬間に水を差してしまい、申し訳ございません。こちらを」


 その場に立ち尽くす僕に、男性がそっと仮面を差し出した。

白地に赤い羽があしらわれた、華やかな仮面だった。


「仮面舞踏会ですから」


 男性はそう言って微笑むと、自らも仮面をつけた。

僕は小さく息を呑み、仮面を顔に当てる。

ひやりとした感触が、ぴたりと肌に張りついた。


「では」


 促されるまま、一歩を踏み出す。

その先には、いくつものシャンデリアが吊り下がり、無数の灯りが金色に輝いている。


「……すごい」


 思わず息を呑んだ。

全ての壁には、人の背丈をはるかに超える巨大な鏡が、途切れることなく並んでいる。その鏡は空間を映し、空間を増殖させている。

まるで、終わりがないかのように。


 鏡の向こうにも、仮面をつけた人々がいた。

笑い、踊り、語り合う無数の人影。

それが鏡に映ったものだと理解するまでに、少し時間がかかった。


 会場の中央には広い円形の空間があり、色とりどりのドレスが床を滑るように舞っている。

音楽に合わせて、優雅に、くるくると。


 まるで夢そのものだった。


そう、これは夢なのだ。


 僕はそう思うことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ