海水浴
夜になると曇りから完全に雨へと切り替わり、風に吹かれた雨が窓を叩く音が響いていた。
海に行こうとしていたあの日もこんな荒れた天気だったなと懐かしみながら、俺は紙が枕の下にあることを確認して布団に入る。
帰ってからは夢を見られる確率を上げるために晴れた日の海の映像を見たり、なにをして遊ぶかを頭の中で決めたりしておいた。
おかげで目を瞑れば海で楽しく遊んでいる映像が自然と浮かんでくる。いつもは騒々しいと思う雨音も、いまだけは全く気にならない。そうして、いつのまにかすべての音が耳に届かなくなっていた。
こうして目の前に広がる景色を見るたびに夢はすごいと思い知らされる。
いま現実の外は真っ暗闇で大雨が降り注いでいるはずなのに、俺は眩しくて焼けそうなほど暑い晴れた空の下、火傷しそうなほど熱い砂浜の上に立っている。もちろん夢だから日差しの暑さも砂の熱さも感じないはずだが、そう錯覚してしまうほどにリアルなのだ。
すぐ後ろにはブルーシートが敷かれ、ビーチパラソルの下には里美と美央がいる。里美は美央用の小さい浮き輪を膨らませており、美央は「はやくはやく」と急かすように足踏みしていた。
周りを見渡すと当時ちょうどシーズンの時を狙って計画していたこともあってたくさんの人がいる。しかし、他の夢でもそうだったがひとりひとりの顔はぼんやりしていてはっきりとはしない。
ぼーっとしている間に美央は浮き輪を被って俺のところにやってきた。俺は美央の手を引いて浅瀬へと向かい、水遊びをした。嬉しそうにキャッキャッとはしゃぐ美央の姿を見ると嬉しさで顔がほころぶのが自分でも分かる。
ひとしきり水遊びをした後は里美のところに戻って三人で砂遊びをしたり、海の家でご飯を食べたりした。
ただ楽しい時間は長くは続かず、てっぺんに上っていた太陽は水平線に飲み込まれようとしていた。こうした時間の流れを感じるたびにもう終わりが近いことを察して寂しい気持ちになる。抗うこともできないまま徐々に景色がぼやけていき、ついには白く包まれ何も見えなくなった。




