第参拾伍話 探索
門を抜け、校内に潜入した2人はまず目的地である図書館の方へと向かう事にした。
「全体的に築年数が古いな。まるで何処かからそのまま転移させたような造りだ。もしかしたら帝国から持って来たのかもな」
懐中電灯をまるでランタンのように下に向けながら足元を照らす。
図書館に辿り着くと、隼はまずは侵入経路を探す為周辺を探ろうと動くが何故か剣城は立ち止まっている。
「どうした?抜け道を探すんじゃないのか?」
「いや、俺の考えが正しければ侵入経路は必ずある。まず、此処が図書館である事を前提に考えよう。図書館には何がある?」
「本だろう?その中でも俺達は貴重な本を探して...あぁ、なるほど。本の保存方法か」
「そう言う事。本は湿度に弱く、温度や湿度管理をしなければ直ぐに傷んでしまう。で、有ればだ。必ず空調設備は存在する。しかも貴重な本であれば尚更。別に俺たちが直々に乗り込む必要はない。何か小動物でもダクト内に送り込めればな」
【コード:005 承認完了 トゥスニケカムイを起動します】
次の瞬間、隼の肩や頭には数匹のリスが現れる。
懐かれているのか?彼のフードやコートの中に潜り込んでいるようだ。
「本当は生意気だし使いたくなかったんだけど仕方ないか。ほら、行っておいで。ついでに本を一冊持って来てくれたらここら辺のドングリ全部食べて良いよ。齧るなよ、絶対に」
そう言われたリス達は隼の指示の元、蔦を上り2階の通気口へと入っていった。
「なんだ、偵察用員がいるじゃないか。鳥よりリスの方が使い勝手が良さそうだけどな」
「あれは非常食。咲耶さんからはブドウが側にあったら縁起が良いなって言われたけど。俺は彼女に飼われてるウサギが一番幸運だし幸せそうに見えた。知ってるか、剣城?鶏肉より柔らかい肉がこの世にあるらしいぞ」
「深夜の大学で突然、怖い話をするな!ただの嫉妬だろう!ほら、お前の相棒が帰って来たぞ。...これはまた凄い本を持って来たな。此処に滞在するのは不味い。一度外にでるか」
秘密倶楽部に向かった2人は望海の姿を目にする事になる。
「お帰りなさい。お2人なら大丈夫だと思ってお任せしたんですけど、私も一応部長なので任務が終わるまでは此処で見届けようと。剣城さんが持っている本ってもしかして...」
「あぁ、図書館で一冊だけな。大丈夫、借りた物はキチンと返すよ。ただ、外国語みたいでな。所々、読める単語もあるんだが俺と隼では解読が不可能なんだ。折角持って来たんだけどな」
剣城がペラペラと捲るページは全てが漢字で書かれている。
それを知った望海は夢の中で自分が多言語の環境で過ごしてきた事を踏まえて試しに解読をしてみる事にした。
「...これ、お2人とも凄いですね。ビンゴですよ。テーマとしては水底都市と水辺に生息する生き物を取り上げた物です。ほら、以前。教団で見つけたタペストリー。それに描かれている生物も書かれています」
「凄いな、望海。本当にこのメンバーで正解だった。因みに水底都市って、そんな事が書かれているんだ?」
「そうですね。...根ノ國?という都市国家のような物があって、それが今。湖の底に沈んでいるという感じですかね。すみません、ちょっと目眩が。これ以上読むのは精神的に負担がかかりますので」
確かに読んでいる時から瞬きが多く、苦しそうな表情をしているのでまず、普通の本ではない事が分かるだろう。
側にいたリリアンが彼女に水を持ってきて、望海はそれを飲み干している。
そんな彼女に剣城は労いの言葉をかけた。
「良いや、元々好奇心のつもりだったし解読してもらえただけありがたい。ありがとう。無茶をさせたな。とりあえず、これがどんな物か分かっただけ上々だ」
「そうだな。望海はこのまま休んでもらってもう一度戻しに行くか。ワンチャン、颯先輩の書庫に紛れ込ませておけばカモフラージュになるかなと思ったけど。こんな物読まされたら別の意味で寝込んじゃうしな」
そのあと、再度同じ方法で大学や図書館に潜入し本を元の場所に戻す。
次に朝風への活動報告の為。2人は協会の廊下を歩いていた。
「初任務にしては上々だったんじゃないか?とりあえず今は昼間の運び屋が出来ないような事を俺達が引き受けるのが良いだろうな。何事も着実に、だな」
「でも、違和感があるのも事実だ。剣城、なぜあの本が立ち入り禁止区域にあったと思う?」
「それは、望海が気分を害するような強烈な内容だったからじゃないのか?...でも、確かに可笑しいな。あの程度の内容なら異国の空想小説と言われても違和感ないだろうに」
「そういう事。例えば、図書館側が水辺が近くにある事や湖底都市がある事を隠蔽しようとした。そう言う解釈は出来ないか?」
その言葉に剣城は目を見開き、その場で立ち止まる。
というより、膝が笑って動けない。そう言った方が正しいのかもしれない。
彼は数歩先の答えを知った時、全身が震え上がっていた。
「...いや、嘘だろ。そんな馬鹿な。そんな証拠が何処にある?根ノ國と呼ばれる存在が身近にあるなんて!」
「今はない。でも、あり得ない訳じゃない。真実というのは消去法で最後に残った物だって何処かの小説で読んだ事がある。もし、もしだ。真実を隠蔽しようとしたと考えれば大学側は俺達の敵だ。学舎の癖に、情報を与えてくれないって事になる。多分、そう言う施設は沢山あると思う。俺は真実が知りたい。この島の本来の姿を、全貌を明かしたいと思ってる」
「...分かった。それもそうだな。別に俺も全ての事を知りたいと思わないが、自分の生まれた場所ぐらいは知りたいよな。分かった。これからも協力する。しかしだ、その湖底都市の存在が本当だとしたら大変な事だぞ。規模はどうなるんだ?」
「いや、今の段階でも粗方わかる。というより、この比良坂町が答えその物だ」
その言葉を聞いて、剣城はさらに震え上がった。




