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悪役令嬢 支配者として

「さて、それでは、()()を頼みますわ」


エリーは近くの兵士に頼み事をする。

頼まれた兵士達は馬車からあるモノを持ってきて、


「村人達よ!集まりたまえ!」


その言葉に、村人は何事かとやってきた。

 ーーやはり、村人の数も少ないわね。


兵士達は村人が来たのを確認して、地面に看板を打ち付けた。

その看板には、エリーが管理をすることなど、新しい村の支配システムが書かれていた。


その横にエリーは立ち、村人達に宣言する。


「聞きなさい、村人達!今日からこの村は、私、ハアピ公爵の娘である、エリー・ガノル・ハアピが治めることになるわ!」


村人達に動揺が走る。

村人のイメージでは、上に立つモノが増えるというのは面倒なことなのだ。


上にいる存在が増えると、税を払わなければならない人間が増える。

という認識を村人達がしている。


その認識は、前村長の植え付けたモノ。

自分が金を得るための知恵は意外と回るのだ。


「それで、それ以外に変更点があるわ!村長を、今、解任する!」


村人達に混乱が走る。

ざわめきは、なかなか収まらない。


「もう少し聞きなさい!このときにおいて、前村長は全ての権力を失うわ!これ以上、あの人に振り回されることはないのよ!」


さらにどよめきが起こる。

もう、村人達はエリーの声を聞かなくなっていた。


「兵士達、前村長をしばらく守ってあげなさい」


「「「はっ!」」」


エリーは、村人達が今までの恨みを晴らすために前村長に攻撃を仕掛ける可能性を考え、兵士達に数時間は守るように命令した。


「さて、父様。しばらくお買い物をしましょう」


「……そう、だな」


突然話しかけられた父親は、少し驚きながらもエリーに付いてきた。

他の家族も一緒に付いてくる。


「あっ。このお菓子美味しそう!」


幾つかお土産を買ったエリーは、そのまま帰路につく。

来た道を同じように引き返し、同じように数時間かけて家に帰り着いた。


「どうだった?」


父親に村の感想を尋ねられる。

エリーは村の光景を思い出しながら、


「かなり落ちていましたから、後は上がるだけ。といったところでしょうか」


自信満々にそう言って、エリーは笑った。

その言葉を聞いた父親も微笑み、他の家族と話しながら去って行った。


そして、夕食を食べたりしていたら、すぐに夜がやってきた。


「あっ!クラウン様!こんばんは!こちら、こないだの」


老婆の家に着くと、メンバーの1人に何かを手渡された。

それは、鳥のような仮面。


エリーはそれを被り、


「ありがとう。……いや。感謝する」


いつものように行った感謝の言葉を、幼子の声とは思えない低い声で否定した。

その仮面は、変声機能が付いており、自由に声の高さなどを変えることができるのだ。


その仮面の目的は、クラウンのボス、ゼロの正体がバレないようにすること。

エリーを守ることが目的なのだ。


エリーに渡された変声機能のある仮面。

それは、少し前に行われた全体の会議で決められたことだった。


仮面だけでなく、他にもクラウンの今後について必要なことが決められている。

その中のもう1つが、今日、起こる。


「それでは、クラウン様。行きましょう」


「ああ。そうだな」


エリーは如何にも男性のような声を出して、応える。

そして、クラウンの仲間に連れられるまま、小屋を出た。


幾つか町を越え、山の中に入った。

そして、とあるところで立ち止まり、仲間が指をパチンッ!と鳴らすと、


「いらっしゃいませ。クラウン様方」


人気の無かった森から、急に人が現れた。

30人以上の人間が、エリーたちを囲むようにして待機している。


「ふむ。そこそこの人数いるようだな」


エリーは、周りのモノたちを見回す。

周りの目が鋭くなる。


だが、


「私ども、『クアレス』はクラウン様の傘下に入らせていただきます」


「いいだろう。ともに闇を支配するのだ」


「「「ははっ!」」」


周囲の新たな部下が頭を下げてくる。

今回行ったのは、部下の増強だ。


今までのクラウンでは人数がどうしても足りなかったため、他のグループを統合することで、さらなる力をつけるのである。

というのが、クラウンの大半の考え。


だが、エリーは違う。

経営に長く携わってきた人間としては、


 ーー価値を高めて他の所に売るのが1番よね。

という考えであった。


クラウンの元でこのグループを成長させ、時が来れば高値で他のグループに売る。

コレが狙いである。


エリーが前世でいた国でも経営統合は多かったのだが、統合した企業を他企業に売ることのできるところは少なかった。

かわいそうだとか言う理由があったりするらしいのだが、エリーにとっては甘いとしか思えない。


そういう考え方をしているから、エリーの前世でいた国は他国に比べて経営統合が上手くいかないのだと、エリーは考えている。

だからこそ、その知識を踏まえ、


 ーーどれだけ高値になるかしら?

こういう考えになるのだ。


「こちらです」


エリーたちは、傘下に入ったクアレスのアジトに案内される。

アジトは山の中に生えている巨木の下に入り口があり、事前知識が無ければ発見は困難だと予想できた。


アジトの中はかなり広く、6畳程度の部屋が10以上あった。

エリーたちはその小さな部屋の奥、会議室へと案内された。


「さて、まずは貴様たちの知っている情報を教えて貰おうか」


エリーは重苦しく言う。

 ーーこういう上司がいたら、会社辞めたくなるわ。


「はい。まず、火傷蜥蜴のことをお話ししますね。火傷蜥蜴が最近子供をさらっている理由ですが、どうやら加護持ちを作って手先にする計画のようです」


「加護持ちを作る?」


「どうやら、火傷蜥蜴は闇の加護を付与する方法を見つけたようなんです。ただ、その付与できる条件が、()()()()()()()()()()()()、らしいんです」


エリーはクアレスの情報網に驚いた。

 ーーそんな情報も得られるとか、クラウンの傘下に入る必要がないくらい凄い組織じゃない。


エリーの思うとおりである。

今までクアレスは、長年火傷蜥蜴と戦ってきた、実力のある組織なのである。


では、なぜ傘下に入ることにしたのか。

それは、エリーは知らないが、クラウンのメンバーの交渉術によるモノなのである。


「加護は平民も貴族も所持率は変わらないですし、平民を大量にさらって付与を続けているんでしょう」


エリーはクアレスのボスの説明を聞き、なぜセカンドたちが攫われたのか理解した。

そして、


 ーー私も闇の加護欲しいわね。

とか、思ったりもした。


「そして、その付与に適合しなかったモノたちが、魔力狂いとなるのです」


その言葉に、隣にいたクラウンの仲間がピクリと反応した。

クラウンのほとんどは、火傷蜥蜴によって、魔力狂いにされてしまったモノたち。


自分たちが魔力狂いにされた理由を知って、怒りを覚えたのだろう。


「なるほど。上手くそれを利用したいな」


エリーはそう呟く。

すると、クアレスのボスはにやりと笑い、


「なら、加護持ちを知っているので、その人物で実験しましょう」


そう提案した。

エリーは。その人物の名を促す。


「その人物は、エリー・ガイア・ハアピ。公爵令嬢で、光の加護と毒の加護の2つを持っているらしいです。2つの加護を持っているのですから、相当頑丈でしょうし、良い実験体になってくれるのではないでしょうか?」


「ああ。あの公爵令嬢か。確かに長く実験に付き合わせられるだろうな」


エリーはあえてこう返答する。

クアレスのボスが、クラウンのボスをエリーだと認識しているのか、確認しようと思ったのだ。


「クラウン様もそう思われますか?まだ彼女は幼いですし、多少力がある程度の子供など、簡単にさらえるはずです。命令いただければ、いつでも我々がさらってきますよ」


若干エリーを馬鹿にする表現が混じっていたことから、エリーは自分の正体がばれていないと確信した。

そこで、エリーは自分の正体を知らせる必要も無いだろうと判断して、


「確かにヤツは子供だが、ヤツはやめておいた方が良い。護衛も多いだろうし、本人も少しではあるが頭が切れると聞く」


さらっと、「頭が切れる」と自画自賛するエリーであった。

だが、エリーの心のうちを知らないクアレスのボスは、エリーを見下すような目をして、


「はぁ?クラウン様はあのような子供を恐れるのですか?……正直期待外れです」


怒りのこもった視線をエリーに向ける。

エリーは幾つか説得の言葉を口にしたが、クアレスのボスの目が変わることはなかった。


そのため、エリーは仕方なく真実を伝えることにした。

まず、身体的特徴を隠すために着ていた、魔力を込めると大きくなるフードを脱ぐ。


これから起こることを察して固まるクアレスのボスをよそに、エリーは仮面に手をかける。

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