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悪役令嬢 初めましての

「初めまして。クアレスのボスさん。私、()()()()()()()()()()()、ですわ」


少し前に言ったクアレスのボスの言葉を使い、エリーは自己紹介を行う。

馬鹿にしていた人物が自分の上司だったことを知り、クアレスのボスは恐怖で震えた。


「も、申し訳ございません。エリー様。どうか、どうか私の首だけで事を収めさせて頂きたく」


顔を青くし、冷や汗をダラダラと流しながら、頭を下げるクアレスのボス。

 ーーいい貸しを作れるわね。


エリーは割と腹黒いことを思いながら、仮面をまた被る。

そして、フードを被り直し、


「そのようなことで、首を求めるつもりはない。そして、今の我はクラウンだ。そのことを忘れるなよ」


「はっ!クラウン様のご慈悲に感謝致します!」


この辺りで時間制限が来たので、エリーは別れを告げる。

アジトから出て、そのまま自宅へと直行した。


そして、すぐに次の日はやってくる。

今日は、王族たちと会う日。


エリーも色々と準備をしていた。


「メアリー。お土産は持ったかしら?」


「はい。もちろんです。エリーお嬢様」


「それでは、いくわよ!」


「いらっしゃいませ。エリー様」


沢山の使用人に迎えられて、エリーは王城へと入っていく。

案内役として執事長がつき、エリーを王族たちの居場所へ誘導する。


とある部屋の前で執事長は立ち止まり、

コンコンと扉をノックする。


「エリー様をお連れしました」


しばらくして、入室するように促す声が。

執事長は扉を開け、手でエリーに中に入るよう促す。


「失礼致しますわ」


エリーが部屋に入ると、そこには5人の王族の姿が。


王子が3人。

王女が2人。


「初めまして。エリー・ガノル・ハアピでございます。以後お見知りおきを」


軽くスカートの端を持ち上げて礼をする。

挨拶は返ってこない。


 ーーおかしいわね。凄い睨まれてるのだけど。

エリーの思うとおり、王子の1人からは厳しい視線が向けられていた。


他の面々からも、一切好意的な視線を向けられてはいない。


「ふふっ。随分と嫌われておりますわね。……こちらの椅子に座ってもよろしいでしょうか?」


嫌われていることは理解しているとアピールしつつ、エリーは着席の許可を求める。

第1王子が黙って頷いた。


 ーー全く会話をしないつもりね。どうしようかしら。

エリーは王族たちにどう対応するか考える。


正直、エリーとしては好かれる必要は無いと思っている。

まあ、王族と関わりたくないという考えは元々有ったので、そう思うのは当たり前である。


だが、このまま全く王子たちとの関係が向上しなかった場合、恐ろしいことが待っている。

それは、父親が怒ることだ。


軽く怒るだけで兄を怯えさせる程度の迫力はあるので、本気で怒ったときには……。

まあ、ただ怒られるだけならそれでいい。


だが、問題なのは何かの制限をつけられることだ。

領地の没収などされたらたまったモノではない。


 ーーある程度の関係を作ることは必要ね。


「殿下方。せめてお名前くらいは教えて頂けますか」


とりあえず、自己紹介を促してみる。

数秒続く無言の後、


「それじゃあ、俺が名乗ってやるか」


「ちょっ!?兄様!」


自己紹介をすることを承諾した第1王子に、第2王子が慌てる。

だが、第1王子はそれを無視して喋り出す。


「俺は、第1王子、ロメル・アンダード・フィーリンだ。まあ、名前くらいは知っているだろ?」


「ええ。存じておりますわ」


エリーは頷く。

ロメルはすぐに目をそらし、椅子にもたれる。


因みに、ゲームのハードモードのラスボスである。


「兄様!何も言わないと約束したじゃないですか!」


そう言って第2王子が立ち上がる。

エリーは、兄弟間で色々とあることを察した。


「ふふふっ。では、喋ってしまいましたし、第2王子様にもお名前を伺っても?」


エリーの言葉に、あからさまに嫌な顔をする第2王子。

因みにエリーは、この第2王子と婚約させられそうになったのである。


もし素直に受け入れていたら、今以上にギスギスしていたことだろう。


「お前のように、僕らを利用とするモノと話すつもりはない!」


エリーの自己紹介の促しに、第2王子は拒否を示した。

仕方なくエリーは、少し本気を出して、()()することにした。


「あらあら。ロメル様と、第2王子様は随分と仲が悪いのですね」


エリーは、笑いながら第2王子を見る。

すると、第2王子はむっとしたような表情をした。


だが、何も言ってこない。

話すつもりはない、というのは本当なのだろう。


「でも、あまりそれを公の場でやらない方が良いと、私は思いますわよ。兄弟仲の悪さを利用しようとする、悪い方が、いらっしゃるかも、しれませんし」


一層第2王子からの視線が鋭くなる。

だが、エリーはその視線を無視して、メイドに土産を出すようにいった。


次々とテーブルに並べていく菓子類。

それに、第3王子と王女2人の目の色が変わったのを、エリーは感じ取った。


そこで、エリーは標的を変える。


「あぁ。でも、口を開けない方が多いようですし、食べることはできないのかしら?このような菓子はいらなかったですわよね。メアリー。殿下方の菓子を取り下げてくれますかしら?」


その指示に従って、エリーの専属メイドであるメアリーが動こうとしたところで、


「ま、まちなさい!私は名乗りますわ!私、リファータ・アンダード・フィーリンですの!」

「ぼ、僕は。エイダー・アンダード・フィーリンだよ!」

「……私、タキアーナ・アンダード・フィーリン。お菓子は食べる」


「自己紹介感謝致しますわ。殿下がた。これで、自己紹介されない方は1名だけになってしまいましたわね。()()()()()


その時のエリーの笑顔は、悪魔のようだったと、その後の第2王子は語る。

さて、そんなぼっち状態にされた第2王子、さらに鋭い視線を送ってくる。


目は真っ赤に充血していて、ギリギリと歯ぎしりをしている。

 ーーストレスが凄そうねぇ。


「負けを認めろ。アロークス。お前の負けだ」


第1王子のロメルが第2王子の、アロークスの肩に手を置く。

アロークスは目を見開いてロメルを見る。


「に、兄様。何を言っているのですか!?こんなモノに利用されるなど、王族としてあってはなりません!」


「アロークス。そんなことを言えるほどお前はまだ優秀ではない。せいぜい、このエリーから学ぶんだな。まあコイツから学ぶことは多いだろう」


エリーは第1王子の反応に少し驚く。

エリーの知っている第1王子は、もう少し傲慢な人間だったからだ。


 ーーそう言えば、傲慢な性格になるのも、過去の出来事が関係していたわね。

エリーは、ゲーム上に出てきた回想を思い出す。


だが、今は王族たちとの話の最中。

エリーはそちらに集中することにした。


「まあ、話すつもりがないなら、私が一方的に話しますわ」


「このお菓子なんですけど、実は私が管理する領地でとれたモノなんですの。その領地を貰った理由は、王族の皆様とお友達になることが……」


エリーは一方的に話を仕掛ける。

話す話は、明るい話が中心だ。


愚痴などを言うと、あまり良いイメージにはならない。

皆さんも、ずっと愚痴を言い続ける人よりは、いつも楽しい話をしてくる人の方が好感を抱きやすいだろう。


その話を、第2王子以外は楽しそうに聞いている。

自分たちから話そうとはしないが、話に耳を傾けるのはするようだ。


 ーーかなり心を掴むことができたわ。王女様辺りとはお友達になれそうね。

エリーはそう判断する。


「エリー様。申し訳ありませんが、そろそろお時間です」


かなりはなしが盛り上がりを見せたところで、やってきた侍女に話を止められた。

かなり良いところで止められたので、王族たちは不満そうな顔をする。


 ーーつかみはOKね。


「ふふっ。この話の続きは、来週するとしましょう」


エリーはそう言って笑う。

こういうことをすると、次も良い感触で話せるので大切だぞ。


「待て。エリー」


去ろうとしたところで、第1王子に止められた。

何事かとエリーは首をかしげる。


「エリー。俺の友人として認めてやろう。俺のことは気軽に、ロメルと呼んでくれ。敬称をつける必要も無い。呼び捨てにしろ」


「……は?」


エリーが固まる。

友人になるのは王女たちだと思っていたのだが、


 ーーよりによって、1番警戒しなきゃ行けない人かぁぁ!!!

エリーは、心の中で頭を抱える。


エリーとしては、第1王子と第2王子には、あまり関わりたくなかった。

だからこそ、第2王子には嫌われる行動をとったのだが。


よりによって1番関わりたくなかった人物に友人として認められてしまった。

 ーーこういう態度をとっても、ゲームでは好感度は上がらなかったはずなのに。


色々と思うところはあったが、


「わ、分かりましたわ。ロメル。これからよろしくお願いします」


笑顔でこう言うしかなかった。

 ーーはぁ。これから先が思いやられるわぁ。


この後、王女たちと第3王子にも友人として認めて貰った。

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