【Side:教会】教会と思惑
【Side:教会】
[ーー異世界より来たる使者、光とともに現れて、王国を救わんーー]
あの建国神話は本当だったのだ!
突然大聖堂の祭壇が強く光ったかと思ったら、その光に包まれるように少女が現れた。
奇怪な衣服に身を包んでおり、足が丸出しで驚いたが、それよりも神話のような登場に私は興奮を隠せなかった。
ーーこれはまさしく“聖女”である!
「なっ、何これ⁉︎ ここどこ⁉︎ えっ⁉︎」
黒髪黒目の少女は、動揺したように辺りを見回している。
「聖女様! よくぞおいでくださいました!」
私が高らかに叫ぶと、他の神官たちも口々に「聖女様!」と周りを囲んだ。
「聖女……っ? 私が?」
「もちろんです。聖女様は光と共に現れると、神話に書いてあります」
「あ! もしかして今流行りの異世界転移ってやつ⁉︎」
えー、でもどこの話の異世界転移なんだろう? とよく分からないことをブツブツ言っていたが、気にせずに話を進める。
聖女という存在が、大聖堂に現れたのは好都合だ。
「では聖女様、ここではなんですし、どうぞこちらへ」
これはすぐに神官長にご報告せねば!
聖女を連れて接見室に向かう。
「神官長様、失礼いたします。聖女様が現れました」
「ああ、先ほど別の神官からも聞きましたよ。その娘ですか?」
穏やかに目を細めている神官長は、常にその顔に微笑みを乗せている。
神官長様が聖女に目を向けると、聖女は慌てて自己紹介をした。
「あ、初めまして……。高田陽菜乃って言います」
「マルセル・サンクロワと申します。神官長をやっていて、こちらは息子のローレンです」
「ローレン?」
神官長の息子であるローレン様は、長い銀髪に紫瞳をした見目麗しい男性だ。
そんな彼は聖女に優しく微笑みかける。
ローレンという名前を反芻した聖女は、突然大きな声をあげた。
「ローレン・サンクロワ! 『薔薇の王冠とロレーヌの庭』の⁉︎」
またよく分からない単語を叫んでいたが、聖女は神秘的な存在だから、我々のような凡夫には理解できずとも仕方ない。
はしゃぐ聖女様をよそに、私は神官長に耳打ちをした。
「神官長様、これはチャンスです。この聖女様を使えば、教会の権威がますます高まります」
「使う、ね」
柔和な笑みを浮かべていた神官長は、その言葉に片眉をあげる。
「言葉は選びなさい。誰が聞いているか分からないのだから」
「し……失礼しましたっ」
「……まあ、王侯貴族を悔しがらせるには、ちょうどいいと思いますよ。長らく王家に主導権を握らせていましたから、たまには教会側が出し抜くのも良いでしょう。教会の庇護下に置く価値はあります」
その言葉に私は目を輝かせた。
「でしたら、早急に聖女様の存在を見せつけるべきかと!」
「……まあ、報告の義務はあるでしょうし、訪問に異論はありません。聖女の出所はどうであれ、建国神話を持ち出せば、王侯貴族は黙るでしょう」
「では、私めが謁見を取り付けて参ります」
「任せます」
それから数時間して、5日後に宮殿に訪問することが決まったのだった。
少し執筆ペースの間隔が空くかもしれません。




