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はじまり


 藤野遥子(フジノヨウコ)は、持っていた一皿をテーブルの上にコトンと置く。


「本日のアミューズ・オードヴルでございます」


 その皿の上には、芸術品のように美しく整然と並べられた5種の前菜があった。

 美貌の王妃は感嘆の吐息を漏らす。


「左からご紹介させていただきます」


 遥子は、左から添え手で示しながら、接客用の笑みを浮かべた。


「一番左のものは、サーモンのコンフィと柑橘のヴィネグレット。その隣は、鴨肉の燻製と無花果のコンポートです。黒い粒が乗っているのは、帆立貝のポフィ、キャビア添え。こちらは季節野菜のラタトゥイユ。最後が、フォアグラムースとブリオッシュトーストです。トーストはぜひ手でつまんでお召し上がりください」


 慣れたように用意したセリフを言い、説明が済んだ後にお辞儀をして後ろに下がる。

 私の作った料理を美味しそうに召し上がる王妃様を見て、ホッと息を吐いた。


 なぜ一介の料理人である私がこんなところにいるのか。

 それは3ヶ月前に遡るーー


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