第74話 魔法剣
「ところで、今日はどんな用事なのだ?」
「侯爵様にお詫びしなければならないことがありまして」
「そのようなことが存在するのか?」
「いただいたドラゴンブレイドを粉々に破壊されてしまいました。申し訳なく思いお伝えしなければと」
「……何かと思ったら、そんなことか。脅かしおって。理由は聞かぬぞ。代わりの武器のあてはあるのか?」
「いえ、ありません。ですが、魔法で剣を生成できるようなので、しばらくそれでいこうかと」
「なんじゃそのでたらめな魔法は…… どんなものか見てみたいがよいか?」
「はい、わかりました」
「では、訓練場へいこう」
◇◇◇
訓練場で僕はサイモンさんと向き合い、侯爵様とクロエ様が僕たちを見ている。
「サイモン、クラウスと軽く打ち合ってみよ。クラウスよ、くれぐれもサイモンを殺さぬようにな」
サイモンさんの顔から血の気が引いていく。
「あの、大丈夫です。そんなことにはなりませんから」
「俺にはまだ成人していない子がいるというのに……」
「だから大丈夫ですってば」
サイモンさんは鋼の剣をおそるおそる構える。
僕は右手を前に構える。
そして、ドラゴンブレイドをイメージして魔力を放出し、固めていく。
半透明なドラゴンブレイドがすぐに生成された。
「一体どうなってる……? 何も無いところから剣が現れたぞ…… かかってもいいか?」
「はい、どうぞ」
二、三合打ち合う。
「クラウス、強度を上げられるか?」
「はい」
「うわっ、硬っ!」
「次は、火の魔法を付与します」
僕が赤色をイメージして魔力を流すと、剣が真っ赤に変色する。
そして、サイモンさんが鋼の剣を当てると鋼の剣は溶け始めた。
「うわわっ! やべえよこれ!」
サイモンさんは慌てて剣を手放す。
「すみません、MPを流し込みすぎました。まだ加減がよく分からなくて」
「御当主様、どうかご勘弁を。命が幾つあっても足りません」
「ふむ、もういいぞ。サイモン、持ち場に戻れ。後で特別に報酬をやろう。このことは他言無用だぞ」
「承知いたしました。それでは」
サイモンさんは報酬と聞いて笑顔で去っていった。
僕は魔力を自分に戻した。
剣の生成と維持にMPを消費するが、解除すれば生成に使った分を戻せる。
「すごーい、クラウス様! かっこいい魔法剣ですね! どうやったの?」
「クロエ様、そうですね…… 魔力を固めていくイメージでしょうか。それと属性付与の魔法、フレイムセイバーなどを発動します」
「どうやって魔力を固めているの?」
「流れる魔力を【時空魔法】の防御結界で剣の形に固定して……」
「クロエよ、諦めるのだ。【時空魔法】の時点でもはや人間業ではない」
「クラウス様、凄いですわ! たとえ人間でなくても好きですわ! お父様、何としてでもディアゴルド家に婿入りさせましょう。ダメなら私がクラウス様に嫁入りします!」
ちょっ、何てこと言うんだ。
ませた年頃とはいえ。
侯爵様が頭を抱えている。
「もうよい。クラウス。お主の力は嫌というほど理解した。エルフに言われなくてもお主を敵に回したくないわい」
「…………。それでは、これでお暇してもよろしいでしょうか」
「構わぬぞ。次はどこへ行くのだ? 王族のところか?」
「まさか。お会いする機会もありませんし。エリアさんのところです」
「……そうか。早く行ってやるとよい」
「じゃあまた来てねー、クラウス!」
「ではまた、クロエ様。失礼いたします」
「待て。転移するところを見せてくれぬか?」
「はい。では、『転移』」
◇◇◇
次の瞬間、二人の視界からクラウスの姿は消えていた。
スタンは気配を探ったが、微塵も感じられなかった。
「未だに信じられぬが…… エリアリア様より先にクロエに会っていれば、ディアゴルドに迎え入れることができていたかもしれぬのに」
「お父様、どうかされましたか?」
「いや、なんでもない。ここで見たことは他言無用だぞ」
「はい。分かっておりますわ」
◇◇◇
僕はギルド本部のロビーの死角に転移してきた。
そして、エリアに声をかける。
今ロビーには誰もいない。
「クラウス、別室に行きましょう」
そして、ギルド本部の別室にて二人きりとなった。
「今回はどこまで強くなったの?」
「エルフに会ったよ。いろいろあって元エルフとステータスとスキル、成長率、魔法の経験を【交換】したんだ」
「エルフというと、魔法に極めて優れた種族。人前に出ることはなく、存在が疑問視されているもの」
「うん、僕も体験するまで信じていなかったけど、でも実在したんだ」
「クラウスがそう言うなら信じるわよ。何ができるようになったの?」
「最大MPが2999になって、知性と精神が7000近くあって、属性魔法と時空魔法が全て使える。あとは、消費MPが半分で詠唱がいらなくなって、状態異常にかからなくなった。そんなところかな」
「…………」
「エリア? エリアさん?」
「ごめんなさい、クラウス。覚悟はしていたけれど予想を遥かに超えていたわ……」
「自分でもそう思うよ……」
「クラウス、さすがにこれは強すぎるわ。古の大賢者ですら知性や精神が2500だったと言われているのに。申し訳ないけれど、国王様に報告しないといけないわ。それと、くれぐれも悪用しないようにね。お父様から警告があったのは覚えてる? 国が目を光らせていることを忘れないで。絶対よ」
「わかったよ、エリア。悪用するつもりなんてないけど、そう見られないように気をつける」
「もはやS級どころの話じゃないわね…… エルフの力を持った人間なんて、他国に知られたら一大事ね」
「それと、これを渡しておくよ」
僕はエリアに手のひらで包み込める大きさの長方形の物体を渡す。
「これは、テレプレートと言って、エリアが魔力を流せば、僕と繋がって会話ができるよ。口に出す必要はなくて、伝えたいと思うことだけ念じればいい。試して」
「ええ」
(クラウス、聞こえるかしら?)
(聞こえるよ)
「これは革命的なものなのではないかしら?」
「機能だけならそうだけど、どちらかが【時空魔法】を使えないといけないから、実用化は無理だと思う。テレプレート自体も【時空魔法】を持つ僕が【錬金術】で作成したものだし」
「そうなのね……」
「これで、エリアに何かあったらすぐに駆けつけられる」
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