ラルフと開拓村 その1
ちょっと時間が空いてしまいましたがお久しぶりです。生きています。
最近新しく『1+1=2をしてSGEEEEされる勇者の物語』という作品を執筆しました。2作品同時になりますが、細々と更新したいと思います。
まだ3話しか投稿していませんが気軽に読める作品なのでよろしければそちらもよろしくお願いします。
では本編どうぞ。
「……ん? ここはどこだ?」
目が覚めると見覚えのない部屋にいた。なんか前にもあったなこういうの。
体を起こして頭を押さえると、今回は記憶を失う事もなかったようだ。
「あのクソ親父!」
なので、理不尽なクソ親父に一発し返さないと気が済まない。
シーツを蹴っ飛ばして部屋を駆けだす。
見覚えのない部屋だが、部屋の作りなんて大抵同じだ。
「おい、このやろ……う?」
扉を開けばそこに親父はいなかった。というかここは屋敷でもない。
見渡す限りの青い空、小さな家に大きな畑。草を刈り踏み固めただけの土の地面。遠くに光っているのは川のせせらぎだろう。
「ど、どこだここ!?」
屋敷どころか王都で見る事のない光景に戸惑う。あたりを見渡し自分が出てきた建物も見る。周りの家よりも大きく2階建てだが、やはり実家の屋敷と比べると小さな家だ。
「お目覚めになりましたかラルフ様」
「ガーランドなんでお前がここに? というかここどこだ……」
混乱していると出てきた扉から見知った顔が現れた。
うちの直臣である騎士の家系の次男坊。腕っぷしはそこまで強くないが側近の中で一番事務仕事が得意で学園では色々と世話になった側近のガーランドだ。
だが、俺の知っているガーランドと目の前にいる男が同一人物なのか一瞬迷った。なんだか様子がおかしいのだ。
「え、なに、お前どうしたの? 前までそんな目してなかっただろ、もっとこうキラキラというか、普通な感じの顔だったじゃん?」
死んだ魚のような眼をしたガーランドの印象はこれまでと大きく違う。
成績もよく、次男ながらその事務能力を買われ卒業後の就職先も決まりアリスほどでもないが美人な恋人もいて人生バラ色ですみたいな感じだったのに、今は暗くどんよりとした雰囲気だ。
「全部あんたのせいでしょ!?」
いきなりの怒声に俺は首を傾げた。
はて、俺のせい? 俺が何かをしたのだろうか? 分からない。
ただ、普段怒鳴るイメージのない奴が怒るとちょっと怖い。実力の差があるのでいざとなればどうとでもなるが、そういう怖さじゃないなんというか凄みがあった。
「ああもう! そのきょとんとした顔は何もわかってない顔ですね! そうですね!」
「うん」
「だからもう、ああああああ! アンタが卒業パーティーであんな事したから私たちも巻き添えにされたんですよ! ちょっとこっちに来てください!」
怒り心頭のガーランドはドスドスと荒い足取りで家の中に消えていく。これはついていかなければいけない流れか。
初めは気にしていなかったが、家の中はなんというか生徒会室に似ている。品質は違うが家具の配置が何となくそれだ。
取りやすい位置に本棚があって、執務机が並べられ、来客用の机と椅子がある。
調度品こそ少ないがまさに仕事場という感じだ。
ガーランドが迷うことなく進んだ先は階段の裏側のスペースだ。光が差さずじめじめとしたその空間に3人の男達が膝を抱えていた。
「なんで、どうして、俺がこんな目に……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「ブツブツ……ブツブツ……」
見るからに陰気な空気に普通に引く。
そこでふと気がついた。俺はこいつらのことを知っている。この3人はガーランドと同じで学園で俺の側近をしていたモーガン家ゆかりのある貴族の子弟達である。
「我々元側近たちも罰として開拓村に送られて来たんです! 見てくださいよ、他の連中の顔を!」
「みんな目が死んでるな」
「そうでしょうね! 貴族の生活から一転してこんな何もないこんな場所くんだりまでやってきたらそうなりますよね! 私なんか決まっていた就職もなくなり恋人にもフラれたんですよ!!」
「まぁ元気出せよ」
「だから全部あんたのせいだろうがああああああああああ!」
なんでお前がフラれたのが俺のせいなのかは分からないが、俺も失恋の痛みはよくわかる。俺の場合は直接フラれたのではなくあえて身を引いたのだが、それでも辛いよな。
そんな気持ちで励まして見るが逆効果だったようだ。
結局、ガーランドが落ち着くまで小一時間かかった。
・・・
「つまり、ここは開拓村で俺達はこの村をどうにかして発展させないといけないと」
落ち着いたガーランドに説明され現状を把握する。そう言えば意識の無くなる前に親父にそんな事を言われたのを思い出す。というか、気が付かなかったが若干記憶がなかったのか俺。
「そういえば親父が開拓団を成功させろとか言ってたな」
ならば外の農村は開拓村という事か。
普通の村と開拓村の違いは、名前の有無だ。開拓したばかりの村は失敗する事もあるらしく、ある程度安定しないと名前を付けてはいけないらしい。
名前がつけば村長という役職を作れて、それまでは開拓団のリーダーが村長代理として村の統治をするらしい。
そして、俺達はこの村から準男爵の領地程の規模まで広げないといけない。
「ま、なるようになるだろ!」
「……」
準男爵くらいなら余裕だろと同意を求めるが側近達の顔色は優れない。どいつもこいつも絶望した顔付をしてやがる。
「ほ、ほら準男爵くらいの領地にしたら戻れるんだし希望を捨てるなよ!」
「こんな何もない所から貴族が治める大きさに発展するとか無理無理」
「それ以前に明日には俺達死んでるかも……」
「ごめんなさいごめんさいごめんさい」
「準男爵って実家よりも規模大きいんですけど?」
それぞれの反応はこんな感じだ。
ガーランドにしたら騎士家出身なので上位の家を持ちだしても気休めにもならない。むしろ、絶望度合いが増した。
とはいえ、俺から言わせれば騎士領も準男爵領も大して変わらないと思う。せいぜい管理する街や村の数が2,3個多いか少ないかの違いだ。
実家が侯爵家である俺はもちろん、他の3人の側近もそれぞれ男爵家以上の出身なのだから、むしろ楽勝ではないだろうか。
それにモーガン家は成り上がりに慣れた家だ。そこまで絶望的ではない。
「はぁ……実際問題このままグチグチ言っていてもしょうがないですね。とりあえずやれる事をしましょう」
そんな俺の陽気に当てられたのかガーランドが話し始める。
実力主義の家の側近の中で、ガーランドだけは頭脳労働専門なのでこういう話し合いの時にはいつもガーランドが司会をする。
「そうだな! で、何をすればいいんだ?」
「……」
なぜかガーランドから白い眼を向けられた。解せん。
側近達もどうにか気を取り直して話し合いに参加する。まず、現状として俺達はこの少しだけ開拓された開拓村のリーダーとして派遣された。
開拓を進めるにあたり何をすればいいのか話し合いの始まりだ。
「まずはやはり治水から始めるべきでしょう」
「それよりもまず資材の確保です。領地を広げるにも整備するにも材料がなければどうする事も」
「ならまずは資金をどうするかだな。俺達の持ってこれた荷物なんてたかが知れてるし」
「とりあえず、これまでの開拓団の資料を確認しましょう。何が足りて不足しているのか分からなければどうする事もできません」
あーでもないこーでもないと盛んに意見交換をする側近達。
一方の俺はすでに話についていけていない。
ぶっちゃけこのまま俺がここにいてもやれる事ないな。
なんか飽きたし、話し合いは終わる気配もない。よし、俺は俺にできる事をしよう!
「よし! それじゃあ俺は村の探索と魔物退治をしてくるぜ!」
「「「「待って!」」」」
意気揚々と家から出ようとすると総出で止められた。
「どうしてそうなるんですか! もっと他にやる事があるでしょう!」
その意見は真っ当だ。俺がこいつらのリーダーだから話し合いに参加しなければいけないのだ。だが、逆に聞こう。
「俺が理解できると思うか!」
「……」
「……」
「……」
ドンと胸を張ってそう言えば側近達は一様に押し黙る。
もちろん、最終的な決定は俺が出すがその前の話し合いで俺はあまりにも無力だ。なら、限られた時間を有効に使った方がいい。
俺は一刻も早くアリスの元に帰らなければいけないのだから。
「……まずは村の探索だけです。魔物関連は地元の冒険者ギルドと話をしてからです。本当に探索だけですよ!」
頭を抱えたガーランドはしばらく何かを考えると、絞り出すような声量でそう言った。
「おう! じゃ、行ってくるぜ!」
「本当に探索だけですよ! 危ない事しないでくださいよ! あと、まわりの人と問題を起こさないでくださいよ!」
ちょっと村の中を見てできれば村の外で辺境の魔物を狩ってくるだけなのに心配性な奴だ。
「あ、しまった武器がない」
家を出た後で武器がない事に気がついた。
だが、いちいち戻るのもめんどくさい。
「まぁ開拓村の魔物くらい素手で余裕だろ!」
ラルフの断罪シリーズです。
元が能天気なので曇らせるのが難しい相手です。でも、決して敗けたりしない。絶対にこいつを断罪してやるんだから!




