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歩みゆくは魔王か英雄か  作者: mebius
魔王は壊し、英雄は護る
24/75

青い髪の少女

 レイグラント都市。

 英雄、レイス=ロズウェル卿の故郷として知られ。その都市はアルトリーゼ国において今では主要な都市の一つだろう。


 国の中でも内陸に位置するレイグラント都市は他国の侵略を受ける訳でも無く英雄誕生以来人が訪れ、賑わい。徐々に形を大きくして行った。


 そんな都市の門を見上げる少女が一人。


 まだあどけなさは残るものの整った顔に体の均衡の取れた体は直に女へと変わるだろう。 それくらいの歳の頃である少女は青く長い髪を棚引かせ決意の籠もった目で門を見上げている。

 ボロボロになったローブが旅の過酷さを物語っている。

 馬を引く様子はなく一人野宿を繰り返しここまで着たのだろう。彼女は知るよしも無いが野党に襲われなかったのが不思議な位だった。

 

 (ここにレイス=ロズウェル卿がいる)


 彼女の父親が何かあればレイス=ロズウェル卿を頼れ。

 その言葉に従って一人ここまでやってきたのだ。

 

 そうして彼女は決意を胸に門をくぐるのだった。











 ジリジリとした暑さが肌を焼く。

 乾いた暑さの中、青年が二人の少女と対峙している。


 銀髪の少女が杖を持ち魔力を装填しつつこちらへと杖を向けている。

 赤髪の少女は鎌を手に、青年へとにじり寄る。


 対する青年は大剣を片手にだらりと下段にぶらさげ力を抜いている。


 銀髪の少女が杖を掲げると少女周りから幾つもの光る羽を生み出し青年へと飛来する。 同時に赤髪の少女が地を蹴り攻勢にでている。


 

 青年は全ての羽を僅かな動きで避けると赤毛の少女の袈裟切りを避けざま大剣を薙ぎ、少女の首筋で止める。


 赤毛の少女の頬には一筋の汗が伝う。


 ため息をついた赤毛の少女は降参とばかりに鎌を下ろすと青年はそのまま銀髪の少女へ向け駆ける。


 「え! うわ! ちょっ!」


 銀髪の少女が立て続けに光る羽を射出するも当たらない。まるで意味を成さず距離が縮まる。

 

 前衛の居なくなった後衛程脆いものは無い。


 それ以降銀髪の少女にできた事は無かった。


 

 今日も銀髪と赤髪のペアは青年に屈服するのだった。









 「グレイは卑怯」


 赤髪の少女――アイシャが歩きながらそう告げた。

 罵ってはいるが本当にそう思っているわけでは無いのだろうその声はいじけるような色が混じっている。


 「なんでだ? 思い当たる事は無いぞ」


 グレイと呼ばれた青年は応えた。


 「だってあんな身体能力、めちゃくちゃ」


 「そうだよ! 二人がかりなのになんであんなな訳?」

 そう言って銀髪の少女――レティシアが話しに入ってくる。


 「そうは言われてもな」


 グレイからすれば苦笑するしかなく二人の愚痴を聞きながら家へと向かっている。


 グレイ達は学園が終わった後、夕刻になるまで訓練を続けて居る。


 学園での模擬戦ではできない二人の特性を使った訓練。この都市ではあまり亜人と言うものは受け入れられない。亜人と人の違いは見た目では分からない事が多いが、種族固有の魔法を使えばすぐにばれてしまう。特にレティの光の翼やアイシャの吸血後の赤い目。このように特殊なものは目立ち、また有名でも有る。その為、訓練をする場合人目を忍んでいる。


 アイシャがグレイ達と住み始め一年、こうした訓練を続け、レイスを含めた4人で様々な依頼をこなし、レティもアイシャも力をつけて来ている。


 目下彼女達の目標は二人でグレイを打倒する事らしいが今だ道は険しいようだ。


 アイシャとレティが話し込みグレイ打倒の作戦を立てている。そういう事は本人のいない場所でやって欲しい。そう考えながら歩いているとふとグレイの耳に良く知った名が届く。


 「レイス=ロズウェル卿がどこにいるか知りませんか?」


 自然と反応しグレイは見る。

 あちこちすり切れたローブを纏い、道行く人に尋ねて回る少女が目に止まる。

 グレイは訝しげに少女を見た。

 あどけなさは残るも美少女と行って差し支えの無い少女が明らかに旅を終えた格好をしているのだ人目を引く。そんな彼女はレイスの名前を呼んでいる。


 ――レイスの知人か?


 だが問題が一つ。ただの「レイスはどこ?」で有れば問題は無いのだが「レイス=ロズウェル卿はどこ?」と言う質問はあまりよろしく無い。バンパイアでの一件でレイスが英雄だと言う事を知ったグレイはあの後レイスから話しを聞いた。

 その話しでは一般的にレイス=ロズウェル卿は亡くなったと言うことになっているらしい。つまり彼女は今死んだ人間はどこにいるか聞き回ってる事となる。


 案の情彼女に訪ねられた人々は困った顔をして墓があるとされる場所を応えるだけだった。


 ――レイスと会わせていいのかどうか……


 判断するには情報は足りない。がレイスの名前が出た以上話してみるしかないだろう。そう判断しグレイは少女へと話しかける。



 「おい、あんた。誰を探してるって?」


 こちらの声を聞いた少女が目を輝かせてこちらに返答する。


 「レイス=ロズウェル卿です。貴方は彼がどこに居るのか知っていますか?」

 

 「おちつけ、彼は亡くなった筈だがどうして彼を探しているんだ?」


 理由を聞いたグレイにその少女は何ら疑う事無く口にする。


 「あ……はい、ごめんなさい。お父さんが何かあればロズウェル卿を頼れって。私達マーメイドやマーマンを救って欲しいとロズウェル郷にお願いしに来たのです父が生前まだ彼は生きている筈だと……」


 グレイは驚いた。

 レイスが生きている、と言う点ではない。自分が亜人だとこのような場所で宣言することをだ。

 ここ人が集う都市で自らが亜人であると告げる少女の声を聞き周囲を見渡す。幸いそこまで大きな声では無かった為、周囲の者に聞かれた様子はない。



 「グレイ?」

 

 後ろからレティの声がする。どうやらレティとアイシャのグレイ打倒検討会は終わったらしい。


 「ああ、この人じいさんに用事があるらしくてな。連れ帰るがいいな?」


 そうグレイが告げるとレティとアイシャはグレイの隣の少女に目をやり、その目を細めながらグレイを見る。


 「……また女」


 「浮気……?」

 

 二人とも口元がボソボソと何か呟いている。低い音が漏れグレイは悪寒を感じずには居られない。


 そんな彼女達を無視し青い髪の少女は身を乗り出してくる。


 「ロズウェル卿を知っているのですか?」


 それだけ真剣なのだろうとグレイは一人納得はするが彼女の距離が近づくにつれ後ろからは黒いオーラが強まっている気がする。肌が泡立つ……


 「ああ、身内みたいなものだ。家に居るから着いてくると良い」


 「ありがとうございます!」


 少女はパッと顔に華やかな笑顔を浮かべグレイの手を取る。 背後にいる黒の野獣からの殺気は最高潮だ。いつ血を見るか分からない。

 グレイは本能に従い背後でおどろおどろしいオーラを発する獣と目を合わせないように彼女を連れ帰るのだった。



 見当空しく後ほど黒い獣からの猛攻がグレイを襲う事は言うまでもなかった。

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