急転直下の風の中
「・・・すいません、他にも美月の指名客が居られて・・」ボーイ
「ああ!?俺が一番金使ってんだろうが!
帰らせやっ貧乏人なんてよー」椎名
「うっ・・」ボーイ
「それでも椎名さんっ、ちょっとだけ顔だしたら戻るから」美月
「まあ、ちょっとなら・・じゃあ、おしっこでも行くか」椎名
(さて・・・私はどっちに行こうかしら・・武藤に橘
まあ橘の考えは分かるけど。リカって子の件ね、ふふ)美月
(どっちに先に付く?美月さんの考えは・・・)ボーイ
そして・・
「いらっしゃい・・」美月
「うん。座って早く」橘
「・・・・・・」対面で見てる武藤
(橘・・キャバ嬢として・・・か)ボーイ
売り上げの事を考えれば当然、橘。
(ふっ・・・だせえ・・・
格好つけて、割といい酒頼んだけど・・
やっぱケチが出るな・・)武藤
橘には負ける安い酒がむなしくテーブルの上にポツンとある・・
「もう一本ピンドン(ドンペリピンク。武藤が頼んだ白より高い)持ってきて」橘
「ふふ・・ありがと。いつも。」美月
(いつも・・・)武藤
「忙しくてごめんね武藤君。美月もうすぐ来るから」ヘルプのキャバ嬢
「・・いやっいいよ。・・・・お前、今日空いてるのか?」武藤
「えっ?・・・いやっ・・えっと・・・」ヘルプのキャバ嬢
「いいよもう・・帰るわ・・」武藤
「あっ・・ごめんなさい。すみません。抱かれます抱かれるんで・・」キャバ嬢
「もういいって言ってんだろうが!」武藤
「そんな・・私が怒られます・・店にも・・」キャバ嬢
(くそっ・・何言ってんだ俺・・・
恥の上に恥上塗りして、どうすんだ・・
せめて、最初でオッケーしろやっくそっ!)武藤
(くくく・・帰りだした・・東京ナンバー1。
夜の喧嘩は弱そうですね、くくく。ウチのボス(ヤクケン)やりやがって!
リカも、最初からアンタの手の中か?踊らされたよ・・
今度はこっちだ・・こっちが本命だろ?今日アフター誘っちゃうか~)橘
「美月さん今日アフター誘っていい?」橘
武藤が帰る前に、聞こえるように・・・
「ごめんっ。今日先客が居るんだっ。」美月
「あっ・・そっか・・」橘
(くそっあのボケだ・・絶対っ。六爆?ふざけんなよ・・
関東最大のヤクザの親分じゃねえか・・格で言えばヤクケンさんより上。
やっちまうか?六爆って、言い切るんなら・・)橘
「おいっ美月まだかー!!俺ぁ金使ってんだぞー!!」大きな声の椎名さん
「ふふ・・また後でね」美月
「ええ」橘(くそ爆がっ)
(ユリアさんが、椎名さんに躊躇無いの分かりだしたな・・
もう、来るのやめよう・・俺の戦場じゃねえ・・喧嘩で勝負だ・・)武藤
(くく・・帰った・・だせえ。マジだせえ。
せめて、美月が一度来てから帰ればいいのに・・完全に俺の勝ち!)橘
そう、武藤の負け・・・一度も口づけてないグラスが寂しく見える。
「すいません、武藤さん・・本日は、お代は結構ですので・・」ボーイ
(ここ・・・ここだ。ここで安っぽく対応しちゃだめ・・)武藤
冷静に・・ここで、キレ気味に金でも払うと、もう武藤の格はズタボロ
「うん。でも、少しでもいただいたから。払うよ。
幾ら?また、椎名さん居ない時にゆっくりするから」武藤
「はいっ。ありがとうございます。本日4万5千円です」ボーイ
(すまねえな・・呂布にダニ・・お前らも金ねえのに・・)武藤
店を出て、近くに待機してる渋狂田方のところに・・
(ふっ・・もうニヤけてやがる田方のやろう・・)武藤
風が心地よく感じる
・・仲間・・
少し嫌な気持ちが風の中に紛れ飛んでいった様な・・
「ういっす」武藤
「ははは聞きたかったー・・と・う・ば・く~」ニヤけた顔の田方
「ふっ・・まあ、半分連合みたいな感じでどうだ?って話し合ってるよ
いずれ、リカもプレジェイ系にってな・・」武藤
「まあ、元からプレジェイ系だし、
銀帝さんも、プレジェイみたいなもんだ。問題ないだろ」田方
「でも、でかいぞ・・涼太取られたが、東爆がウチついたら・・」田方
「ああ・・涼太に謝るって言ってたよ・・涼太はどうだ体調?」武藤
「・・・居るぜ・・内緒だけどな・・」田方
「・・・・・・・」涼太
「くく・・さすが・・がんばれよ・・」武藤
渋狂のメンバーの中に紛れ込んでいる涼太。
この男もわずか15で東爆を継ぐほどの男。
やられて指銜えて見てる男ではない。
「来たっ!田方くんっ六喧だ!」メンバー
「しゃー迎え撃つぞ!武藤君は、一旦・・」田方
「ああ・・任すよ」武藤は離脱、事務所の屋上へ
~~~屋上~~~
「お疲れ様です」武藤
「ああ・・」山本
喧嘩見るの好きだし、仕事も忙しいので事務所にほとんど居る山本
(おかしい・・まだ乱闘の音が聞こえてねえ・・)武藤
屋上の手すりに、もたれ掛かり下を見ている山本の隣へ・・
「なんだ?えっ!!呂布!ダニっ!」武藤
六喧と渋狂が対峙する間に、全裸で縛られたままの二人が正座させられ・・
「くっ・・どういう・・」武藤
「うまいな渡辺さん・・戦争・・若手の扱い方を知ってる・・・・」山本
山本は、すべて理解してそう。
「まてやっ!どういう・・」田方
「くくく・・今日は、イベントだ・・公開処刑の・・」城島
(武藤君・・ごめん・・やられた・・返り討ち・・・)呂布
(くそっ!くそっ!でも、もう体も動かねえ・・声も)ダニ
声も出せぬほど・・よく見ればあちこち殴打の跡
砕け散った骨・・
この猛者二人がやられるほど・・・
「スッ・・・」
呂布とダニの後ろから木刀を振りかぶる男が二人・・
「ちっ・・くっそっ!」行こうとする武藤だが・・
「行くな・・まだ・・」山本
「くっ・・」武藤
~~~池袋~~~
「すげえ戦略っすね会長」京野
「まあ、ほぼ、気まぐれ乙女達がプレジェイに流れたからな・・
それに見合うくらいに、相手にも戦力低下して欲しいよね。」渡辺
「東爆=呂布・ダニ・・五分ですか?力関係は」京野
「上だね。呂布・ダニの方が・・
早めに潰せてよかったよ。エースとぶつけて・・くく」渡辺
罠・・・
~~~渋谷~~~
そうっ・・呂布とダニの後ろから木刀を振りかぶる男・・
「ここから参戦だわ・・・」浜野
「よく、顔覚えとけ・・くくく・・俺達が・・・」矢沢
「エースオブドラゴンだ!!」浜野・矢沢
「バキャ!!」
「呂布っ!ダニ!!」田方
振り下ろされた木刀
無様に全裸の男が前のめりに倒れる。
「くそっ!突っ込め!何人かは、呂布とダニ病院に運べ!」田方
「おおお!!」兵隊
「くく・・もういいぜ・・後は俺達が・・」城島
「くくく・・まあ、見てろや・・ついでに渋谷の大将取ってやるよ」浜野
「ああ・・暴れたりねえよ、くくく」矢沢
遂に、浜野と矢沢が参戦・・さらに城島も・・
橘以外のフル戦力・・・
(城島っ!城島ぁ!!)隠れて城島を狙う涼太
(涼太が城島を狙ってる・・くっ・・もう一人欲しい・・
浜野か矢沢に対抗できる奴・・でないと・・)田方
二人に狙われる・・
「ガっ!」 パンチを止める城島
「くく・・あぶねえ、あぶねえ・・キレ味いいじゃねえか・・田代~」城島
「気づきやがったか・・」涼太
同じ歳のライバルの二人。
だが・・
「まだか~・・・・」浜野
「早くやっちまえよ。くくく」矢沢
「マジか・・」涼太
「くく・・さすがエースオブドラゴン・・」城島
すでに倒された田方、渋狂も壊滅寸前・・
「じゃあ、またさよなら。」城島
「くっ!」涼太
「ドっ!!!」城島の渾身のパンチ
「くっ・・・舐めるなよ・・・・新宿雷神を・・」倒れない涼太
だが、もうすでに涼太だけ・・
「バキっ!!」
「うっ・・」涼太
後ろから角材で殴られる涼太。それでもまだ立っている。
「誰がタイマンだって言った?」矢沢
「くくく。そりゃそうだ・・」浜野
「くくく・・フクロにしちまえや!」城島
「おお!!」
~~~屋上~~~
「山本さんが止めても行きます!!」武藤
「止めろ・・でないと、今日負けが確定する・・」山本
「えっ?負けぇ?」武藤
(そういえば・・ユリアさんは?何かあったか?居ない・・
でも、もし俺が負けても、ユリアさんと山本さんが・・)武藤
葛藤・・仲間が目の前でやられている・・
いくら武藤でも、このメンバーに一人で立ち向かえば・・
「弱き心が大事だよ・・」山本
「弱き心?」武藤
「臆病さ・・恐さで、突っ込まない・・飛ばない勇気・・弱き心・・
それが生き残るためには一番必要・・・」山本
(そう・・行けば負ける・・・今僅かにチラっと見えた・・
後詰めで、西田さんってのと橘も居る・・用意周到)武藤
影に隠れる西田に橘。この千載一遇のチャンスを逃すわけない。
一気に叩けるチャンス。
武藤はもう、見れない。この乱闘が・・
そう・・・まだ、涼太が、ただ一人で踏ん張っている・・
うなだれる武藤。(田方・・呂布・・ダニ・・)
声だけは聞こえてくる。もう、ただ切なく聞こえる。
「くっそっしぶといな」
「くそっ六喧の兵隊潰されちまった」
「うおおおおおおお!!まだじゃあ~」
(涼太・・・涼太ぁ・・・・・涼太ぁぁ・・・)武藤
涼太の咆哮が聞こえる。
だが・・
「しゃあ!!取ったぞ!」
「帰るぞ!大勝だ!わはははは」
この聞こえてくる声で、どちらが勝ったかは、当然。
「・・くっ・・敗戦処理・・救護に向かいます」武藤
「ああ・・・・うっ!」山本
「えっ?何か言いました?」武藤
「・・・いやっ・・早く行け・・・」山本
「はいっ」武藤
「バタン・・」屋上のドアが閉まり山本が一人
「タタタ・・」階段を駆け下りて行く武藤の足音が僅かに聞こえる
(もう少し・・でないと聞こえる・・)山本
「・・・うっ・・・うえぇ~~・・うえっ・・うえっうえぇ~~」山本
嘔吐・・・
「へっ・・へへ・・へへへ・・」山本
笑顔なのか苦笑いなのか・・
静けさの戻る渋谷・・・
風に匂いがある様に感じる。何か懐かしいような匂い・・
何か、この渋谷で今まで起こった良い事ばかり思い出してしまう。
「どうして・・・今なのよ・・バカっ・・へへ・・」山本
やさしく触れ、手で温める・・お腹・・
気のせいか?僅かに感じる・・鼓動・・
(ふふ・・今は寝てるのかな?)山本
新しい命。
渋谷の風の中。
乱闘のメロディーを子守唄にして。




