第二章 仲間
校舎裏、体育倉庫の近く。そこに人影があった。
男子生徒だった。壁にもたれながら座り込んでいる。黒に近い紺色の髪に、ゆるく着崩した制服。私より少し年上に見える。彼もこちらに気づいた。
数秒目が合って、先に口を開いたのは相手だった。
「……人間?」
凛は思わず吹き出しそうになった。
「何その確認。」「いや。」
少年は困ったように笑う。
「自信なくなってきてて。」
凛は警戒を解かないまま距離を保った。
「名前は?」「大城 湊、十七歳。」
即答だった。
「そっちは?」「進藤 凛、十六歳。」
そこまでは覚えていた。それ以外は曖昧だ。
すると湊は少しだけ目を細めた。
「覚えてる?」「何を?」「家とか。」
私は答えられなかった。湊も答えを察したらしい。
するとポケットから何かを取り出す。
古びた生徒手帳だった。
───!
どういうことだろう、私以外にも同じ人が...?
彼に答えるように私も生徒手帳を出した。
その瞬間、湊の表情が変わった。
同じものを持っている。それだけで妙な安心感があった。
「……あんたもか。」「たぶん……。」
湊は立ち上がる。そして校舎を見上げた。その横顔を見て、凛はふと思う。
曖昧な記憶に、白紙の生徒手帳。私と置かれた状況下は同じ。だとしたら、きっと初めて来た場所のはずなのに。
この人はなんだか学校を見慣れているように見えた。
湊はしばらく校舎を見上げていた。まるで何かを思い出そうとしているようだった。
「知ってるの?」
私は聞いた。
「何を?」「この学校のこと。」
湊は少し考える。そして首を横に振った。
「いや。」
そう答えた後で、
「……でも、見たことある気がする。」
それは自分も同じだった。初めて見る校舎のはずなのに、どこか懐かしい。夢で見たような、そんな感覚。
「とりあえず、」
湊が歩き出す。
「中に入るしかないだろ。」
玲も頷いた。




