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転生ヒロインとレベルダウン無効スキル  作者: 相馬あさ
第一章 呪われた国のサムライ
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秘密の共有

 火鉢と炬燵を使用してもなお寒い部屋で、隣に座っている弥生さんの体温を感じながら俺は自分のステータスを表示した。


・名前:萩原健之助

・種族:人族

・性別:男

・年齢:17歳

・出身:日本

・経験値:2330

・レベル:24

・生命力:480

・体力:1152

・力:57

・魔力:68

・精神力:72

・素早さ:57

・器用さ:115

・運:96

・種族スキル:多才

・ユニークスキル:レベルダウン無効

・パッシブスキル:刀LV2、自然魔法LV2、料理LV2

・アクティブスキル:鑑定LV2、活性化LV2、運搬LV2、両手持ちLV2、魔力集中LV2

・オートアクティブスキル:危機回避LV1、電撃耐性LV2、威圧耐性LV1、鑑定耐性LV3

・木魔法:緑の杖、緑の太刀

・水魔法:浄化の水、命の水

・鬼魔法:魔力刃、身体強化、凪、獣の目、霞刃、鎌鼬

・鬼神魔法:雷の霞刃、黄金の霞刃


「えっ? も、もうレベル24なの?」


 俺のステータスを確認した瞬間、弥生さんは驚きの声を上げた。


「ちょっとずつ上がり続けていますからね」

「少し前の私より強いね」


 弥生さんは一緒に中級鬼を倒した時にレベル24になったと言っていた。つまり、それ以前の弥生さんよりも今の俺はレベルが上なのだ。弥生さんが驚くのも当然である。


 ちなみに弥生さん以外の松葉組のサムライたちには、俺のレベルは12から15くらいだと思われている。上級鬼を倒した後などは一時的にレベル20に届くほど上がったと認識されていたが、あれから一か月以上たった現在、とっくに下がっていると思われているのだ。


「弥生さんはレベルいくつなんですか?」

「今はレベル32だね」

「前に聞いた時よりかなり上がりましたね」

「最近は涼子ちゃんと稽古しているから、レベルが上がるんだよね。でもその分、毎日の稽古は辛いし疲れるよ」


 七々扇(ななおうぎ)邸裏庭特訓の後から、弥生さんは涼子と一緒にいる事が多くなった。その結果、涼子のストイックな稽古スケジュールに巻き込まれ、松葉組の中でも低レベルだった弥生さんのレベルは平均の少し上くらいまで上昇したらしい。


「涼子は体力の限界まで稽古しようとしますからね」


 俺はユニークスキルのおかげでレベルが下がらないので、経験値取得量やレベルアップのタイミングを気にしていないのだが、高レベルを維持しないといけないサムライたちは日々苦労しているようだ。


 聞いた話では一週間の間にレベルアップが一度もない場合はレベルが1下がるらしい。


「レベルも凄いけど、スキルの数もずいぶん増えたね。それに魔法も……え?」


 弥生さんは何かに気が付いたように固まると、部屋の外を気にするように視線を動かした後で、俺の耳元で囁くように質問して来た。


「け、健之助君。『黄金(おうごん)の霞刃』って何?」


 俺が弥生さんに相談したかったのは、まさにその『黄金の霞刃』についてだ。


 だが、弥生さんと密着するように炬燵に入った状態で耳元に囁かれるという体験は、俺の思考を真っ白に塗り替えるのには十分な衝撃であり、すぐには言葉が出て来ない。


「あっ、え、えっと……。か、雷の霞刃を習得した時に、一緒に習得したんです」

「ふうん。魔法の詳細も見て良い?」

「は、はい。俺のユニークスキルと同じようにあまり広めない方が良い気がして秘密にしていました」


 俺は弥生さんと同時のタイミングでステータスに表示されている『黄金の霞刃』に触れて、魔法の詳細を確認した。


黄金の霞刃:上級自然魔法。強化型。雷の霞刃に追加の雷を凝縮して纏わせることで破壊力と強度を上昇させる。


「これって、ただでさえ強力な鬼神(きしん)魔法を更に強化する魔法ってこと?」

「たぶんそうです。けど、制御が難しいですし、耐性がないと代償として両手が使い物にならなくなるので、かなり危険ですよ」

「健之助君の鬼神魔法は雷だから余計大変なのか。華火(はなび)姉様も両手を火傷していたけど、雷で引き裂かれるのも痛そうだよね」


 やはり鬼神魔法は俺の雷以外の属性でも同じように自傷ダメージが入るようだ。『炎の霞刃』は同じように大怪我に繋がりそうだが、『砂の霞刃』や『水の霞刃』は手が砂まみれになったり、水浸しになる程度で済みそうな気がするので、危険性は低いと思う。


「今は耐性スキルが手に入ったからマシになりましたけど、最初は痛いなんてもんじゃなかったです。危うく死にかけたんですから」


 俺はおそらく『雷の霞刃』による自傷ダメージによってスキル経験値が貯まって習得出来た『電撃耐性』のスキルに触れて詳細を表示する。


電撃耐性LV2:電撃による生命力の減少を75%軽減。


 これのおかげでだいぶ楽になったが、痛いものは痛い。早くLV3を習得したいものだ。


「電撃の耐性スキルなんて初めて見たけど、それが習得出来たのも納得の怪我だったもんね」


 俺は初めて『黄金の霞刃』を使った時の事を思い出し、自分の手のひらを確認する。ララミアさんのおかげで綺麗に傷は無くなっているが、あの時は肉まで裂けて信じられないくらい両手から出血していた。


 身近に生命力を回復させる魔法を使える人物がいない場合は使ったら死ぬ魔法として使用が禁止になっても良いと思う。


「弥生さん。この魔法に関して、夕陽さんたちに話した方が良いでしょうか?」


 俺が尋ねると、弥生さんはしばらく俯いて考えた後で、首を振った。


「私としては黙っていた方が良いと思う。現状で妖魔写し(ようまうつし)のサムライたちが倒せない鬼が存在しないから、わざわざ松葉組の主力として取り込まれそうな情報を与える必要はないよ」

「取り込まれる? 既に戦力には取り込まれていると思うんですけど?」

「主力とは違うでしょ? 私としては妖魔写しになった事も知られない方が良かったと思っているくらいだけど、『黄金の霞刃』の情報なんて絶対に渡したら駄目だよ。夕陽様は伊吹姉様みたいに西への遠征任務を誰かに任せたいって言っていたから、健之助君が強力な鬼神魔法を使える事が分かったら、多少レベルが低くてもそれを補う力があるってことで来年から西へ行かされる可能性だってあると思う」

「マジですか」

「マジだよ。ユニークスキルの事が知られていたら、今年から行かされた可能性だってあるんだからね?」


 それを聞いて、俺は自分が随分と楽観的に生活していたことに気が付いた。

 何となく、知られない方が良いだろうと思ってはいたが、西の遠征に行かされる要因になるのなら、絶対に知られてはいけない。


 サムライという身分には慣れてきたが、組の主力として西に遠征したり、夕陽さんや伊吹さんのようにみんなをまとめたりする力は俺にはない。


 俺はあくまでも松葉組の一戦力程度のポジションでいたいのだ。


「健之助君。今後は出来る限り目立たないように行動して、手柄は女性のサムライに譲って、レベルが低いふりをするようにしてね。気付いていないかも知れないけど、既に健之助君は松葉組のサムライの中でも上位の強さなんだからね」

「それは……さすがに買いかぶりだと思いますけど」

「健之助君は少し前の私よりレベルが上なんだよ? それに刀LVも2だし、君のステータスを見て自分の方が強いって堂々と言えるサムライの方が少ないと思う」


 俺は少し前の弥生さんと同じくらいのレベルに到達したので、実力としては中の下か下の上くらいだと思っていたのだが、弥生さんの見立てでは少なくとも上の下くらいはあるらしい。


 松葉組は数ある討伐組の中でも上澄みのサムライが集う組のはずなので、そこで上位の実力があると言われても、あまり現実味を帯びて来ない。


「……マ、マジですか」

「マジだよ」


 弥生さんは俺の言葉を真似しながら真剣な表情で返した後で、力を抜くように笑い始めた。


「えっ!? わ、笑い事じゃないですよ?」

「ごめん、ごめん。まあでも、しばらくの辛抱だと思うから、頑張って弱い男に擬態してよ」


 俺は弥生さんの言葉の意味が分からず首を傾げた。


 その言い方では、少し待てば状況が変わって自分を弱く見せる必要がなくなる時が来るという意味にも受け取れそうなのだ。


「しばらくってどういう意味です?」

「伊吹姉様がちょっと手をまわしてくれているんだよね。上手くいったら教えるけど、たぶん健之助君のためになると思う」

「詳細はまだ教えてくれないんですか?」

「うん。というか私も詳しくは知らないんだ。伊吹姉様が秘密裏に千奈様と話し合って動いているみたい。健之助君と……私のために」


 伊吹さんだけでなく、千奈さんの名前まで出てくると、少々不気味だ。


 一振(ひとふり)家と七々扇家の謀にしてやられそうな気がして身構えてしまう。


「益々良く分からなくなってきましたけど、上手くいったら教えてくれるんですね?」

「うん。その上で、ちゃんと拒否権もあると思うから安心して」


 拒否権があると聞いて、俺は胸を撫で下ろした。


 俺と弥生さんのために動いていると聞いても、他人の善意が真の意味で俺のためになるとは限らないので、話を聞いてみて良さそうに思えなかった場合は二人の圧に負けずにちゃんと断ろうと思う。


「分かりました。期待せずに待っています」


 話が終わったところで、弥生さんは元の位置に戻るかと思っていたのだが、弥生さんは無言で俺の隣に居座った。


 少し長めの沈黙が流れた後で、どういうわけか炬燵の中に入れていた俺の手の甲に弥生さんの手が重ねられた。


「――っ!?」


 驚いて視線を向けると、弥生さんは少しだけ頬を染めて探るような目を俺に向けていた。


 俺は急速に鼓動を強めた心臓をうるさく思いながら、弥生さんの手を受け入れるために手のひらを上に向ける。


 俺の無言の行動を承諾と受け取ったのか、弥生さんは嬉しそうに顔を綻ばせながら俺の肩に頭を乗せるように寄り掛かると、指を絡めるようにして俺の手を握り込んだ。


 それから昼食の時間が来るまで、俺は弥生さんと触れ合う時間をゆっくりと楽しんだ。

レベルが上がったり、スキルの発動有無でステータスを計算し直しになるのが実は結構大変だったりします。

テキトーに上昇量を決めているわけでは無いので、余計に苦労するんですよね。


そしてラストの申し訳程度の恋愛パート。実はあまり得意ではないのですが、頑張って書きました。

健之助と弥生の、あと一歩踏み出せないけれど、相手への想いが滲み出てしまう感じが伝わっていると嬉しいです。


次回は雪解けからの新しい話が始まります。

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