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ヤンキーオタクの優等生、異世界で伝説のヤンキーとバディを組む。〜世界を救え? そんなことよりタイマンだ!〜  作者: 瀬綺ララ


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2-2

 昴の顔から表情が消える。

 

「……は? 結婚?」


 昴はただ、それだけを呟いた。貴臣は昴の様子に気を配りつつ、話を続ける。


「翔子さんが僕の家にお子さんを預けにくることがあって、その時に翔子さんから黒咲さんの話を聞きました」


 昴は文字通り頭を抱えながら、

 

「でも、アイツはまだ中学生のはずじゃ……」


 と唸る。無理もないことだった。


 貴臣は鞄の中から生徒手帳を取り出し、その中に挟んでいた数枚の写真を出した。弌ノ瀬家の屋敷で撮ったものや、披露宴での集合写真。全部を昴へと渡す。


 昴は写真の中で微笑んでいる女性に目を留めた。白いウェディングドレスを着ている女性の隣には、儀礼服を着た男が、女性に寄り添うように立っている。


「翔子さんは警察になることを夢見ていた黒咲(おにい)さんの代わりに、自分が警察になることを決意したそうです」


 貴臣の脳裏に、翔子の寂しげな横顔が浮かび上がった。

 

「黒咲さんのことを、ずっと心配していましたよ」


 昴の眉間に濃いシワが刻まれる。震えた手が、写真に折り目を付けた。


「なあ。この写真、貰っても良いか」

「ええ。どうぞ」

「……さんきゅ」


 昴は写真の表面を人差し指で何度も撫で、眩しそうに目を細めた。


「親が離婚したんだ。アイツは母親に引き取られ、俺は父親に……アイツとはもう何年も会ってなかった」


 写真の上に、ポタポタと雫が落ちる。


「もう随分と前のことのはずなのに、アイツ、俺の言ったことを覚えててくれたんだな……」


 鼻を啜る音が聞こえるが、貴臣は気が付かないフリをして青い空を見上げた。


「なぁ、お前。俺の思い出話に、少し付き合ってはくんねぇか?」

「構いませんよ」


 貴臣はこの後、承諾したことを後悔する羽目になった。


_____10分後。


「翔子は、マジで可愛い奴でよぉ……ッ、俺の後ろを、『お兄ちゃん』ってついて回ってよぉ……」


_____20分後。


「クソ、翔子の奴め。俺に相談もなしに結婚するなんて……こいつ、なよっとした格好してっけど、ちゃんと翔子のこと守れるのかよ」


_____30分後。

 

「翔子ぉ……ッ、なんで大人になってんのか分かんねぇけど、幸せに、なれよぉ……ッ!」


 貴臣は疲れていた。


 最初は積もる話もあるだろうと頷いていたのだが、次第に相槌を打つのも面倒になり、貴臣は虚無の目をして空を眺め続けていた。


(流石は総長。情に(あつ)い人だ……)

 

 硬い木箱に座り続け、尻が痛みを訴え始めている。このまま聞き続けていては日が暮れてしまうと考え、昴が泣き止んだタイミングを見計らい、声をかける。


「ところで、あのモンスターはそのままにしておいて大丈夫なんですか?」


 地面には先程のモンスターが倒れている。ピクリとも動く気配を見せない。


「放っておいたら、衛生的にも良くないのでは?」


 目元を強く擦って、昴は立ち上がる。貴臣の急な話題展開に、不機嫌になっている様子はなかった。久々に家族の話ができて満足しているのかもしれない。

 

「知り合いに肉捌けるヤツがいるから、いつもソイツんとこに持っていってんだ。良かったら、運ぶのを手伝っちゃくれねぇか?」


 貴臣はモンスターの足の方を、昴は頭の方を持って運ぶ。路地裏を出て少し歩くと、顔に擦り傷を負った二人の青年が昴に声を掛けてきた。


「「スバルさん!」」

「おう、オメー等か。約束をすっぽかしちまって悪かったな。この借りはまた今度にでも_____」

「そんなことより聞いてくださいよ。オレ達、さっきえれぇ目にあったんすよ。変な格好したヤツに絡まれて、ボコボコにされて……」


 昴は少し考えてから、4本の脚をまとめて持とうとしては失敗している貴臣に目を向けた。

 

「それは、もしかしてコイツのことか?」

「……ん? 僕ですか?」


 昴に問いかけられ、貴臣は改めて二人の青年を確認した。青年達も、貴臣を検分するようにジロジロと睨みつける。


「……ああ! スバル君! コイツですよ、コイツ! オレ等に殴りかかってきたヤツ!」


 メガネとネクタイを外し、髪型少し変わっていたため気が付くのに時間がかかったが、それは確かに貴臣だった。


 昴は貴臣に胡乱な視線を向ける。


「お前、コイツらに何やったんだ」

「向こうが突然襲ってきたんですよ。正当防衛として応戦しただけです」

「何が正当防衛だ! 気絶するくらいブン殴っておいて正当防衛もクソもねぇだろ!」

「そーだそーだ! ドラ君の言う通りだ! オレ達に謝れよ!」


 二人は乱暴な言葉を貴臣に浴びせる。貴臣が二人を軽く睨みつけると、小柄な少年は怯えた様子で「ドラ君」と呼ばれた青年の背後に隠れた。

 

「下手に手加減なんかしたら、また襲ってくるでしょ。これ以上無駄な争いを生まないためにも、ああするしかなかったんですよ」


 嘘だった。本当は偶然にも勝ってしまい手加減ができなかっただけである。

 

「このヤロウ……ッ」


 その態度が気に入らなかったのか、青年の顔が次第に怒りに赤く染まっていく。

 

「正当防衛ねぇ……」


 昴は青年と貴臣を交互に見遣る。そして、


「お前等」


 と青年の方に声を掛けた。

 

「は、はい!」

「やっちゃってくださいよ、スバルさん!」


 青年達は勝利を確信して表情を明るくさせたが、

 

「コイツは俺のダチだ」


 と昴が言うと、目を丸くさせて固まってしまった。


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