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ヤンキーオタクの優等生、異世界で伝説のヤンキーとバディを組む。〜世界を救え? そんなことよりタイマンだ!〜  作者: 瀬綺ララ


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2-3

「……ダチ? こいつがっすか?」


 強面の青年は訝しげな反応を示した。その一方で、貴臣も驚いていた。

 

 貴臣は昴のことを以前から知っていたが、直接顔を合わせるのは初めてだ。昴にしても、翔子という共通の話題があるおかげで警戒心は解けたのだろうが、かと言って「ダチ」と形容するには二人の関係はまだ浅かった。

 

「こいつが迷惑かけたな。でも、来たばっかでこの辺のルールにゃ詳しくねぇんだ。どうか大目に見てやってくんねぇか」


 この通り、と昴は顔の前で手を合わせる。


(そうか。黒咲さんは僕を庇ってくれているのか)


 昴と目が合う。昴は貴臣に向かって軽くウインクを飛ばしてきた。

 彼の意図を理解した貴臣は、感謝の意味を込めて頭を下げた。


 二人の青年は目に見えて狼狽えている。まさか、突如として現れた謎の男が昴の友人であるとは思いもよらなかったのだろう。

 

「え、いやでも、スバルさん……」

「ま、勉強代だと思え。人を外見で判断するべきじゃなかった、ってな」


 昴はクツクツと噛み殺すような笑みを浮かべて、モンスターを地面に下ろした。

 二人の傷に手を当てがい、先程貴臣にそうしたように、手当てを始める。


「カミノゴカゴ」


 昴がそう言うと、二人の顔の傷がみるみるうちに塞がっていくのだから、不思議だった。


(カミノゴカゴ……イントネーションが少しおかしいけど、恐らくは「神のご加護」だろうな。さっきこの男達が「聖女」と呼んでいたのと、この能力に何か関連はあるのか?)


 貴臣はふむと首を傾げる。


「……そういえば、先程こちらの方々が、黒咲さんのことを聖女だと言ってましたよ」


 貴臣の発言に、青年達は度肝を抜かれたように「え!?」と素っ頓狂な声を上げる。


 昴は顔に青筋を浮かべた。


「おい、お前等……俺のどこが『聖女サマ』なんだって?」

「ち、違いますよぉ。オレ等はただ、スバルさんのことを聖女みてぇにお優しい方だなって言っただけですよ」

「ちょっとドラ君! スバル君のことを聖女だなんて言ってたのはドラ君だけじゃないすか! オレを巻き込まないでよ!」

「おい、バカ、それ以上言うなって!」

「テメェら、もっぺん怪我させてやろうか!」


 骨をポキポキと鳴らす昴に、二人は顔を青ざめさせて悲鳴を上げた。


 それらの光景を見ても、貴臣は相変わらず涼しい顔をしていた。


「それで、どうして黒咲さんは聖女などと呼ばれているんですか?」


 黒咲は首から上だけを動かして貴臣を見た。両者は無言で睨み合いを始める。青年達は二人の様子を固唾を飲んで見守った。


 先に降参したのは昴だった。昴は視線を逸らし、ため息を吐く。


「聖女っつうのは、この街の奴等が勝手に言ってるだけだよ。怪我したヤツを手当てしてやったら、みんなオレのことを聖女サマ、だなんてふざけた名前で呼ぶようになっちまった」


 昴は頭を掻く。


「その呼び方、二度とすんじゃねぇぞ」


 貴臣はニコッと作り笑いを浮かべる。


「安心してください。西洋における魔女は、女性だけではなく男性も含んでいましたから、この世界における聖女も似たようなものでしょう。聖女と呼ばれても、気にするようなことじゃありませんよ」

「……テメェ、マジでムカつくな」

「お褒めに与り光栄です」

「だから褒めてるわけじゃねぇって……めんどくせぇ」


 昴は貴臣に対して怒るのを諦めたようだった。貴臣は続けて、気になっていたことを尋ねる。

 

「そういえば、黒咲さんはどうやってこの世界に来たんですか?」

「俺か? 俺はバイクかっ飛ばしてたら、良くわかんねぇうちにこっちに来てたんだよ。ナントカっつうヤツにショーカンだかなんだかされて、そのうえこの回復魔法まで勝手に付けられて……」


 ショーカン。間違いなく、それは「召喚」のことだろう。


(僕達はラルメリアに召喚されてこの世界にやってきた。そして、黒咲さんの持つ回復能力。……ラルメリアは「間違えた」と言っていたが、それにしては作為的なものを感じるな)


 貴臣は「勇者」として呼ばれ、昴は周りから「聖女」と親しまれている。

 そして、向こうの世界では、二人は親戚関係にあたる。


(偶然で片付けるには、奇妙な点が多い。いや、これは僕の考えすぎか?)


 貴臣が一瞬で思考を巡らせた時だった。


 どこからか女性の悲鳴が聞こえてきたのである。


 昴と貴臣は顔を見合わせ、頷いた。


「ドラ、ミロ! そのモンスターの肉、いつもんとこに持ってっといてくれ! 報酬はお前等に全部やるよ!」

「マジっすか!」

「大マジだ! それでコイツんこともチャラにしてやってくれ! 馳走はまた今度だ!」

「「あざす!」」


 二人は同時に駆け出した。


 誰かが危機的状況に陥っているからと言って、貴臣が助ける義理はない。それでも貴臣が走るのは、昴ならば絶対に助けに向かうと分かっていたからだ。


(黒咲さん、動くのに全く躊躇がなかった。やはりこの人はすごい)


 貴臣は期待に胸を高鳴らせる。伝説のヤンキー「黒咲昴」に一番近いところで、彼の活躍を目にしたかった。


「さっきの声、どっちから聞こえたか分かるか?」

「分かりません。ですが_____」


(場合によっては逆効果かもしれないが、試してみる価値はある)


 貴臣は口元に手を当てた。


「大丈夫か! 無事なら返事をしてくれ!」


 貴臣の声が響き渡る。数秒経って、どこかから、


「こっちよ! 私はこっち!」


 と声が聞こえてきた。


「あっちだ!」


 昴は、王宮のある街とは真反対の方角、現在地に隣接している鬱蒼とした森を指さした。


「あっちにゃモンスターがうようよいるから、大抵の奴等は近づかないようにしてんだよ」

「この辺りの人なら、それを知らないはずはないですよね?」

「さぁな。でも、ひとつ確かなのは……女が困ってるってことだ!」

「確かに!」


 昴がスピードを上げる。貴臣も後に続く。


「おい! どこにいるんだ!」


 昴の声に反応したかのように、再び女性が「私はここよ」と叫ぶ声が聞こえてきた。


「黒咲さん、こっちです!」


 二人で声のする方へと向かう。


 すると_____


(!?)


 巨大な蜘蛛の形をしたモンスターに捕えられている少女がそこにいた。

 

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