第二十四話「薔薇の花が舞い散る時、終わりを告げる鐘が鳴る」 Bパート、ED、Cパート、次回予告
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靄の塊はそのまま直進し、GTとリュミスは無事に回避できた。
だが、その代わり――と言っていいものかどうかわからないが、顔役二人が塊の直撃を受けた。
二人は靄の中に飲み込まれるようにして、そのまま消失する。
ただそれは、ダメージエフェクトを伴ったものではない。
それが良いことなのか、悪いことなのか。
死ぬはずがない天国への階段。
だがこれは――
――顔役達の喉が鳴った。
「お前ら、これはチャンスだぞ!」
そんな顔役達の動揺を見透かしたように、GTが声を張る。
「俺が勝てば、フォロンを利用して儲けていた奴は即座に販路の確保を出来ないだろう。その隙にお前達は縄張りを拡大すればいい」
そこで、GTは一端間をおく。
「俺が負ければ、しばらくはフォロンは安泰だ。何しろ俺が倒せないものを他の誰が倒せる?」
傲岸不遜な物言いだが、それを否定できるものはいない。
「わかるだろ? 肝心なのはこの場に踏みとどまって、どっちが勝ったのかをいち早く知ることだ」
そして行き着く先は露骨な挑発だ。
性質が悪いことこの上ないが、その理屈に間違いはない。
だからこそ始末に悪いのであるが。
「――なるほど。ただ人殺しが上手いだけでは復讐は完遂できなかったということか。そのなだめすかしで、どれほどの人間を操ってきた」
フォロンは、言いながら左手をパチンと鳴らした。
同時に空中に現れる五つの火の玉。
ドドドドドンッ!
瞬時にして、その全てに銃撃を敢行するGT。
放たれた銃弾は火の玉の中心を穿ち、それらを雲散霧消させた。
僅かに紙片のようなものがダメージエフェクトに包まれているのが見えたが、それが恐らくはこの“手品”のタネらしい。
「――お前もな。先に無茶苦茶な力を見せつけておいて、その後に類似品を並べる。はったりのきかせ方としてはまぁまぁだ」
靄の塊に銃弾が効かないことを見せられた後だ。
同じような物体に対して、GTの対処方法を“かわす”の一択に絞り込ませようという意図があったのだろう。
だがその目論見は、躊躇無いGTの銃撃によって外された。
フォロンは、もはや何も言わず、その長大な日本刀を肩に担ぐ。
その構えを見てGTの表情が引き締められた。
そして、傍らのリュミスに何事かを呟く。
「……合図をしたら狙え」
リュミスは戸惑いながらもうなずくと、顔役達の群れの中に消えた。
その隠密能力を解放したのだろう。
それとほとんど同じタイミングで、フォロンがGTとの距離を詰めた。
見事な足捌きで、音もなく、滑らかに。
シィィン!
刃が空気を切り裂いて袈裟切りにGTに襲いかかる。
GTはこの攻撃に対する反応が遅れていた。
“起こり”がなかったからだ。
“起こり”とは、謂わば人が動き出す“きっかけ”。
戦闘の際、これを見極めることは極めて重要な要因となる。
だがそれだけに、古今東西あらゆる武道、格闘技と呼ばれる技術は、その“起こり”を隠す、あるいは無くす術を内包している。
その究極形態が“無拍子”と呼ばれる、人の意識と実際に身体が動き出すまでの隙を突く技術だろう。
フォロンの動きは“無拍子”にまでは到達してはいない。
だが、GTが“起こり”を見極められないほどには熟練されていた。
少し前までは、四人の中で身体の使い方が一番なっていなかったはずであるのに。
GTは左足を引くことで、袈裟切りをかわす。
その引いた左足を軸にして、GTは右足で振り下ろされた刀身を蹴り砕こうとした。
だが、その刀身に再び靄が掛かり始めているのを見て、躊躇する。
その硬直したGTへと、フォロンは左手を突き出した。
その掌には赤い火球。
GTは、それを左手ごと払いのけることで、回避しようとするがその放たれた火球はあろう事か、そんな左手の動きとはまったく関係なく、GTに迫る。
それと同時に足下にあった日本刀が跳ね上がってきた。
火球と刃とで挟み撃ちにされた状態に陥ったGTは、まずフォロンの腹に向けて右足を蹴り上げる。
フォロンの身体はそれに反応して、後方へとずれる。
もちろん、それと同時に日本刀の軌道もずれることになり、その“ずれ”に身体をあわせるようにして、GTの身体もまた後方へとずれた。
そうやって出来た距離を利用して、ブラックパンサーで火球を迎撃。
そのついでとばかりに、マガジンに残された弾を全てフォロンに向けて叩き込む。
ギンギンギンギンギギン!
その全てを日本刀で弾き飛ばすフォロン。
「……火の玉が打ち落とせるとばれてなきゃ、なかなかの攻撃だ」
ジャコン!
マガジン交換しながらGTが評論する。
「……わかったぞ、俺を引き抜きに掛かった理由が。欲しかったのは俺じゃなくて“時間”だな」
「時間稼ぎというと、何やら悪い印象があるがな――どんな支配者にもままならぬもの。それはやはり“時間”だよ」
GTを迷わせる。
それで幾らかでも稼いだ時間に、身体の使い方を覚える。
一般に言うところの修行、という作業だ。
もしかしたら接続延長薬を服用してまで、時間を稼いだのかも知れない。
RAに変化が訪れたこと。
あるいはそのRAに圧倒されたこと。
GTは知るよしもないが、その二つがフォロンに修行を決意させた原因だった。
――“力こそ法”
という理屈を知っていたわけではなく、単純にRAに負けた自分が許せなかっただけなのだろうが、修行の結果、確かにフォロンは“力”を手に入れていた。
再びフォロンが、左手をパチンと鳴らす。
そして空中に生まれる、五つの火球。
GTはすぐにそれを撃ち落とさない。
銃口をいつでもフォロンに向けられるようにしておかないと、今のフォロンを相手にするには危険だと踏んだのだろう。
GTは左手で、ボルサリーノを目深に被りなおす。
その仕草に紛れて、周囲に目を配った。
周囲を取り巻く顔役達は、この戦いに圧倒されているのか、言葉を失い棒立ち状態のものがほとんどだ。
シャオン!
視線をずらしたのばれたのか、浮遊していた火球が渦を巻いて襲いかかってきた。
避けたい――ところだが、そうもいかない事情もある。
ドンドンドン!
連射してそれを撃ち落としていくGT。
続けてフォロンが飛び込んでくる事を予想したが、果たして火球が散った後、その向こう側の景色にフォロンの姿はなかった。
通常であれば見失うのはさほどの問題ではない。
だが、フォロンの場合あの日本刀から放たれる、靄。
そして、顔役達を“守らなければならない”という制約が今はついて回る。
シィィン!
刃が空気を切り裂く音が聞こえてきたのは右後方。
GTはとっさに左前方に身を投げ出して、前回り受け身を取り、すぐさま身を起こすと銃口を音がした方向に向けた。
が、そこにもいない。
移動の際に音が立てないのが、何とも厄介だ。
が、死角に回り込むという癖はわかった。
思い切って飛び上がるGT。
視点を上方に移動させれば、ほとんどの死角は潰せる。
クルリと身体を回転させ、銃口で視界の中をなめるように塗りつぶしながらフォロンを探した。
だが、それでも発見できない。
――物理的にいないはずがないのに。
その時GTの足の下、逆さまになったGTから見れば、天井方向に明かりが灯る。
火球だ。
火球が浮かんでいる。
そして、その浮かぶ火球の中心には同じようにふわふわと浮かぶフォロンの姿があった。
「……飛ぶかっ!」
GTは一声発して、驚きのあまり崩れそうになった姿勢に喝を入れた。
身体を捻り、それで強引に体勢を立て直すと、迫りつつあった火球を迎撃する。
もちろん、それではまともに着地できるはずもない。
それでも丸まって背中から落ちることには成功し、そのまま転がって衝撃を受け流す。
だが一息つく暇もなく、そこに靄が襲いかかってきた。
上空で、溜めている時間はたっぷりあったのか、今までで一番の大きさだ。
思わず、表情を歪めるGT。
GTはようやく起き上がったところ。
受けた衝撃は未だに身体を苛んでいる。
かなりまずい状況だ――だが、それでもGTは行動を起こした。
靄に正面から飛び込むようにしてもう一度ジャンプしたのだ。
GTと靄が空中で交錯する。
一見自殺行為に思えたが、接地した靄がそこで爆発したかのように広がり、床を腐食させるように抉っていく現象を見た顔役達は、GTの行動こそが唯一の生存への道だと遅ればせながら理解した。あのまま床を転がる回避を選択していれば、この腐食に巻き込まれていた可能性が高い。
この一瞬の判断の正確さこそが、今なお裏社会において“生ける伝説”、復讐完遂者の面目躍如というべきだろう。
ジャンプしたGTはその高度がフォロンと同じ高さにまで達していた。
それを出迎えたのは日本刀の刃。
横薙ぎに振るわれる刃の軌跡は、GTを腰で分断しようとしている。
GTはジャンプの勢いはそのままに、さらに胸を中心点とした前転を行った。その結果、刃をかわすと同時にフォロへの体当たりを敢行することになる。
フォロンに空中に浮かばれたままでは、厄介に過ぎる。
だからここは、いかなる手段を用いてもフォロンを引きずる降ろすしかない。
そう決意したGTの覚悟の攻撃だった。
フォロンもまた、その覚悟に飲み込まれたのか、あっさりと体当たりを食らってしまう。
GTのこの行動は予測できていなかったのだろう。
宙に浮かんだ身体が大きく揺らいだ
さすがに二人分の体重は支えきれないのか、それともGTの無茶な行動で、宙に浮かぶための何かしらの仕掛けが乱れたのか、二人はもつれ合ったままで落下していく。
GTは、そのついでに日本刀を追ってしまおうと画策したが、フォロンがそれを許すはずもない。
ストレージにしまい込んだのか、日本刀は消失する。
だが、その作業を行うことと引き替えにフォロンはGTの下敷きになるようにして着地してしまった。
「ぐはっ……!」
圧迫された肺から漏れた息が、フォロンの呻き声を形作る。
天国への階段の恩恵が身体の丈夫さにも及ぶとしても、これでは即座にフォロンは動けない。
勝敗は決したかに思われた。
フォロンは苦し紛れなのか、左手をGTへと伸ばしその手をギュッと握りしめる。
瞬間――
――GTはフォロンの上から飛び退いた。
殺気を感じた、という曖昧なものではなく、背中に熱を感じたからだ。
果たして五つの火球が先ほどまでGTがいた場所に、殺到している。
だが、それはフォロン自身にも殺到しているということだ。
このままでは、自らの火球で自滅することになる。
自らの身体に衝突する直前、フォロンは握りしめた左拳を開いた。
すると、フォロンに直撃しようとしていた火球が、その場大きく散開する。
その飛び行く先は……
「く……!」
GTはブラックパンサーを引き抜くと、すかさず、その火球を撃ち抜いた。
顔役達に直撃しようとしていた、その火球を。
上半身を起こしたフォロンが、そのGTの行動に表情を変えた。
フォロンはここに来て、気付いたのだ。
GTには、顔役達を助ける義理も義務もない。
だが、今の銃撃はそれ以外に解釈のしようがない行動だ。
立ち上がりながらフォロンがニヤリと笑う。
GTは表情を消したまま、マガジン交換。
この瞬間、二人の力は釣り合ったと言っても良い。
~・~
フォロンは確かに修行をした。
だが、それによってGTと互角の戦闘能力を手に入れられたのかというと、それは違う。
身体能力こそは互角、あるいはかつてGTが指摘したとおりにGT以上かも知れないが、どうしても及ばないものがある。
戦闘センス。
経験。
だからこそ、一度はとどめを刺す直前にまでGTはフォロンを追い詰めた。
あれほどのチャンスが再び訪れるかはわからないが、あのまま戦闘が進めば、GTが力押しで勝利を収めていたかも知れない。
だが、フォロンは気付いた。
GTが顔役達を庇っている――庇わなければならない理由がある。
一つには、勝利を収めた瞬間をこの顔役達に見せつけることで、自分の築いていた“秩序”が完全に崩壊したのだと、確実に知らしめること。
後から、
「フォロンは、俺が倒した」
と主張しても効果も薄いし――遅い。
このような闘技場を設えたのだから、そういう目論見があり、その目論見を放棄する気もないのだろう。実際のところ、GTは現状ではさほど不利ではない。
そしてもう一つ――
空中を漂いながら、フォロンは火球をまき散らす。
浮かんでいるのは危険であることは承知した――承知させられたが、それでも浮かぶだけの意味はある。
絨毯爆撃を行うには、いちいち飛び上がるよりもその方がよほど効果的だ。
事実、GTも火球を撃ち落とすのに精一杯で、フォロンにまでは手が回らない。
それでも忙しくマガジン交換して、フォロンへと銃撃を加えてくるのはさすがと言うべきか。
だが、その攻撃も……
フォロンは確信した。
――GTは罠を仕掛けようとしている。
罠のタネは、リュミス。
そして対重力ヘリライフル。
GTが決定的な隙を作り、気配を殺したリュミスが狙撃する。
フォロンは収納していた日本刀を再び引き抜いた。
確かに、GTの戦闘能力は高い。
だがブラックパンサーが放つ銃弾も、リュミスが放つライフル弾も、その戦闘能力が上乗せされるわけではないのだ。
であるならば、どんな銃弾を撃ち込まれても叩き返す自信がある。
GTもそれに気付き、自分に銃弾を叩き込む方法を考えた。
リュミスを顔役達の中に紛れ込ませるために、顔役達を殺させるわけにはいかないのだ。
喩えリュミスの居場所がわからなくても、顔役の盾が無くなった状態で火球による爆撃を行えば、いずれリュミスに当たる。
そこまでの推測が立ったところで、フォロンはGTに斬りかかる。
高い位置から勢いを付けての斬撃だ。
直前まで、火球を撃ち落としていたGTの背後からの一撃だったが、GTはそれをギリギリでかわす。
「――銃で受け止めた方が効率が良くはないか?」
GTの罠の看破に到達しつつある高揚感が、フォロンに思わず口を開かせた。
「ポン刀とは戦った事があるんでな。迂闊には受けられないさ」
と、答えながらもGTは身体を回転させてマガジン交換。
そのまま跳ね上がってくる刃を小さなバク宙でかわすと、素早くフォロンに銃口を向けた。
ドンドンドンッ!
ギンギンギンッ!
フォロンが万全の体制では、銃弾は届かない。
それは互いの共通認識。
かといって、フォロンも顔役を減らすことも出来ない。
――膠着状態。
これをGTが望むはずがない。
そしてGTは、人殺しだけをしてきたわけではない。
フォロンが、火球を放ちそれをGTが撃ち落とす。
GTが銃撃を加え、それをフォロンが弾く。
このやりとりを何度も行う内に、フォロンはGTの正確な射撃があるポイントでずれていることに気付いた。
それは顔役達を背にした時。
リュミスが潜むに足る、人込みの中だ。
(なるほど……)
フォロンが再び宙に浮かんだ。
そのまま一直線に向かうのは――何もない部屋の中に一つだけある玉座。
GTの行動が露骨すぎる。
そこに、何かいると見せかけ自分を誘い込む罠――ならばその誘い込む場所に射戦が必ず通っている場所はどこか?
――玉座だ。
顔役達が寄りついておらず、空白の地帯ではあるが、本来リュミスの能力に“人混みに紛れ込む”という要素は必要ない。
で、あるならば玉座の陰……あるいは玉座にそのまま座っているかも知れない。
フォロンは、その答えに満足し宙に浮かんだまま玉座へと突き進む。
「てめぇ!」
即座にGTがブラックパンサーを向ける。
だが、その射戦はフォロンと玉座とを一直線に結んでいた。
案の定――というべきか、ブラックパンサーの引き金は絞られない。
フォロンは靄に包まれた日本刀を振りかぶると、アーディの座るべき玉座を袈裟切りで両断した。
ダメージエフェクトがきらめく。
そしてそれは消失への前兆。
玉座の――あるいはその場に潜んでいたリュミスの。
フォロンは、振り返る。
そこに絶望に歪んだGTの表情があることを期待して。
周りの顔役達には、フォロンの行動の意味がわからないのだろう。
ざわざわと、声を立て始める。
今まで、静寂を保っていた分、それがやけに耳に付いたがフォロンは気にしなかった。
今、確認すべきはGTの表情だ。
だが、ボルサリーノを目深に被ったその表情は容易にうかがい知れない。
フォロンは、覗き込もうとGTに近づき下から睨めあげる。
そこで顔役達も異変に気付いた。
GTが、そんなフォロンに攻撃を加えようとしない。
フォロンももちろん、その異変に気付いていた。
だから、この確認作業はただ勝利を確定させるだけの作業。
それはフォロン――西苑寺哲士が持ってしまったサディスティックな心の表れでもあり、必勝の策を崩された、哀れな策士への当然の報いでもある。
そんな視線を浴びながらGTは動いた。
反撃が開始される、と顔役達はGTの次の行動を予想する。
かつて、「止まらぬ銃弾」とも呼ばれた男が、攻撃を止めるわけがない――止める理由もない。
だが、GTがその右手に取るのは、ブラックパンサーではなく胸元の赤い薔薇。
そしてそれをフォロンに捧げるように掲げ持つと、そのままGTはその場に膝を折った。
まるで、フォロンに対して臣下の礼を捧げるように。
「ハハハハハハハハハハハハハ……」
フォロンは笑い出していた。
自分の胸元に捧げられた、赤い薔薇を――自分の目の前に跪くGTを見て。
こらえきれなかった。
あれだけの邪魔をしてきた、憎き宿敵が自分の前で膝を屈している。
これほどの愉悦があるだろうか。
力尽くで、人を従わせる。
これほどの快楽があろうか。
のけぞり、さらに哄笑を響き渡らせるフォロン。
それに連れて、周りの顔役達の中からも笑い出すものが現れた。
GTが膝を屈した以上、勝者はフォロンだ。
だから追従の笑いを。侮蔑の響きを。阿りの同調を。
ここに“法の体現者”は選ばれたのだ。
それが顔役達の笑い声によって、確かなものへと認証されようとしたその時――
――薔薇の花びらが散った。
笑い声を引き裂くように響くのは一発の銃声。
それも遥か遠くから響いてきたような、深い余韻を残して。
顔役達の幾人かは、自分たちの足下に座り込んでいるリュミスを見いだした。
そしてリュミスの覗くスコープに映るのは、舞い散る薔薇の花。
リュミスの放った銃弾が、GTが捧げ持っていた薔薇の中心を貫いたのだ。
GTが掲げる薔薇の花。
それを撃ち抜くことこそが、GTとリュミスの始まり。
忘れようもない。
忘れるはずもない。
それは、二人の間にだけ通じる絶対の合図。
「――この薔薇を撃て!」
その合図通りに薔薇の花を散らした弾丸は――
――笑い続けるフォロンの心臓を貫いた。
◇◇◇ ◇ ◇ ◆◆◆◆◆◆◆ ◇◇ ◆
確実な致命傷だ。
何しろ心臓を破壊されたのだ。
だが、フォロンは天国への階段に留まり続けている。
「お、おお……おおおお……」
ダメージエフェクトに包まれることもない。
「な、何? アガンと同じ?」
見事、その役目を果たしたリュミスが立ち上がったGTに駆け寄る。
「いや、何かおかしい……」
会心の策で、フォロンを倒したはずのGTの表情も優れない。
顔役達も、神妙な表情で見守る中、フォロンはかつて玉座があった場所にまで、よろよろと後退していった。
「……こ、これで、これで終わり? 終わりに……するものか、させるものか! わ、我が世界は決して終わることはないぃぃぃぃぃ!」
絶叫。
そしてフォロンの全身が黒く染まっていく。
<よくやった、フォロン。お前の怨念、確かに我が力の助けとなるぞ>
突如、声が響く。
そして皆が気付いたときには、フォロンの上に人影が浮かんでいた。
道師服をきた、初老ほどの老人の姿。
老人は黒いフォロンから立ち上る、妖気の様な黒い靄を吸収していた。
フォロンの身体は、もはや黒い靄とほとんど同化しており、それは即ち――フォロンの魂を喰うに等しい行為だった。
「アーディ……」
GTが呟く。
<では、“竜”が築きし、この世界を終わらせるとするか>
フォロンを“吸収”しきったアーディが宣言する。
そして、アーディの身体からずるりと日本刀が滑り出た。
それは落下した瞬間、
ゴーン……
という、まるで鐘の音ような低い音を響かせる。
――それは終わりの始まりを告げる音でもあった。
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次回予告。
ついに表に出てきたアーディ。
その能力はもはや、誰の手にも負えるものではなかった。
しかも、GT達には接続時間の限界が迫っている。
そこに駆けつけるモノクル。それによって僅かながらの切断するための余裕を手に入れたGTはある決意を固め、それをリュミスに申し込むが……
次回、「魂に沿うように」に、接続!
これにて四幹部の終焉です。
ラスボスを残すのみとなり、あと二話ですね。
ここまで、付き合ってくださった皆様方。
もう少しですよ。
では、金曜日に。




