大丈夫って言われたいだけ
駿太は頭がいいから、説得力もある。
大丈夫って言葉が、励ましでもあり、そしてそれが事実でもあること。
だから俺はこれからも、東高を目指し続けられるし、……部活のスタメンから落ちたって別に。
大丈夫、って言われたいだけなのかもしれない。
でも、それでいいと思った。
受験とか部活とか、とっても大変で。その合間で失恋とか仲違いとか、中3ってとってもしんどい。不登校になるやつだってたくさんいるし。ましてや、3年後の高3なんて……。
俺は駿太と一緒に東高に行けるかどうかはわからない。
それでも、駿太とはずっと友達でいたい。
傷を舐め合ってるんじゃない。傷を治療しあっているだけ。傷が早く治れば、俺たちは新たなことにチャレンジして、ワクワクを見つけることができて、好奇心が発現する。そんなふうに思っている。
♢♢♢
「……だから、大丈夫って言葉は、とっても大切で、これからもたくさんの人に言ってあげたいし、そう言ってくれる友達を、高校に入ってからもたくさん増やしたいと思う」
……スマホを開いた。
「玲香、私ね、今とっても辛くて……」
「大丈夫だよ。今度旅行でも行こ? 私がたくさんお話を聞くよ。 ……私、最近教師生活うまくいってない気がして。もう、5年も経ってるのにさ……」
「そっか。玲香も悩んでいるんだ。
でも、玲香はとっても頭が良くてさ、私にもたくさん勉強教えてくれて、中学の頃から、玲香は先生になるんだろうなって思っていたよ。だからさ、大丈夫だよ」
空を見ると月が出ている。
初めて、誰かに、こんな相談をした。
大丈夫って、言われたいだけの相談を。
『えっとねー、これは完了の「り」だから……』
『あー、これはここに補助線を書いてあげれば直角三角形ができるから、あとは正弦定理で……』
『……そっかー! 玲香ちゃんは、将来は先生になれるね!』
『えー、私なんかが……』
『なれるよ! なれる! 絶対なれるよ!』
もしかしたら私って、実力あったのかな。
過信しすぎても良くないって思って、自分を過小評価して。でも、私は本当に、そんなことがあったんだ。だから、私は大丈夫。
そうしたら、明日だって仕事に行ける。
……実は最近、休職を考えていたから。
でも、裕翔くんのおかげで、なんか私の中で変わった気がする。
あ、そっか。コメント書かなきゃ。
「裕翔くんは国語の成績を安定して取れてる。変動が激しいこの教科でここまで安定して7割を取れているなら、東高は、大丈夫だよ。
でも、私も、本当は国語教師に自信がなくてね……。私なんかがこのまま続けてもいいのかな、なんて……。先生がこんなこと言うの、おかしいよね」
次の日の夜、日課の山の1番上は、狙いすましたかのように、また、裕翔くん、だった。
昨日、変なこと書いちゃったんだ。
大丈夫かな。
「先生もいろんなことに悩んでるんですね。でも、僕が国語の成績を安定して取れているのは、先生が筆者の主張と一般論と具体例の分け方をちゃんと教えてくれるからです。僕は先生の授業がとってもわかりやすいと思います。他の先生の、誰よりも。もちろん、先生より上の人とか、偉い人はたくさんいるんだろうなって思うけど、僕が東高を目指せているのは、駿太のおかげでもあり、先生のおかげでもあります。
だから、先生なら絶対、大丈夫です」




