第29話 霧
─七時、弔来村。
「崇城、俺らは付近で警護するから何かあったらコレで呼んでくれ。」
崇城は千瞳から信号拳銃のような物を受け取る。
「村の人達にも事情は伝えてはいる。一応この村の精鋭とかも一緒に警護するらしいけど・・・。」
「お婆さんは嫌がっていましたね。」
「あの人は他人の力は借りないって主義だからね、だからこそ今回の依頼は驚いたよ。」
神子さんは他者の慈悲を嫌う。それ故崇城に依頼を託したのは特殊な事だと分かる。
「じゃ何かあったらまた。」
─二人はその場を離れる。
崇城はこの後のことを考える。
(朝に敵が現れるとは思えない、あの学校の不審者は夜に現れた。夜・・・この村は夜になると警備とかが薄くなる。だからといって朝が平和って訳でもない・・・相手は明確な目標を持っている・・・。)
「蘇我さんに詳しく聞くか・・・。」
─お婆さんの自宅前。
「ここら辺こんなに霧が濃かったか?」
シュー
明らかに周囲の霧が濃くなる。
「チ、ガキを巻き込んじまったな。」
霧の中から声が聞こえる。
「明らかマトモそうじゃないな・・・。」
気がつくと霧を纏う長身の男がその場に立っていた。
「今日は妙に警戒してる奴が多い。お前のその目、警戒心MAXの目みたいな感じ。」
「面倒だし殺して行くが文句とか言うなよ。」
霧がより一層濃くなる。
「〈霧は悪夢を人には悪夢を。〉」
「消えた?!霧に紛れたのか!」
刺客は濃くなり続ける霧に一体になるがの如く消える。
「悪魔は既に首に手をかけるもんさ。」
ブン!
「後ろ!居ない?」
グワ!
更に背後から何かが飛び出す。
「強増力!」
崇城は飛び出た何かを握り潰す。
「なんだこれ?気色悪い・・・エイリアンみたいだ。」
濃い霧の中いつ来るか分からない攻撃に崇城はお婆さんの事を考える。
(クソ!蘇我さんが心配だ!ここは・・・。)
「逃げる!!」
お婆さんの家のドアを蹴破り中に入る。
「室内なら凌げるし逃げるには丁度いい!ごめん蘇我さん後で修理するから!」
「おいおいアグレッシブだなぁ!」
(これじゃ『霧の怪物達』の強みを活かせないな。)
─お婆さんの家、二階。
「この霧の発生源はあいつで間違いないだけど。どうする?」
(この霧どこまで広がってるんだ?蘇我さんも居なさそうだし。)
「使うか信号弾!」
バ!
「良い物持ってんじゃん。」
崇城が窓から信号を放つ瞬間霧から手が伸びる。その手は崇城の信号拳銃を奪う。
「どんな仕組みなんだよ!」
「霧があるならどこからでも!それにしてもこれはフレアガンか?お仲間でも呼ぶつもりか?」
ピ
「ん?」
信号拳銃から音が鳴る。
「まさか爆発か!」
信号拳銃を崇城の足元に投げ捨てる。
「爆発!?マジかよ!」
・・・シーン。
「何も起きない?」
ガシャン!
「崇城!無事か!?」
「千瞳!!でもどうして?」
遺物「信号銃β」、通常は普通の信号拳銃として機能するが。特殊効果として持ち主とその友人以外が持つと持ち主に知らせを送る効果を持つ。
「まあいい、増えたところで倒される程ヤワじゃない。出し惜しみはしない、ここでやりきる!」
霧が一点に渦巻くように集まる。
「密度が増してる、やばいのが来るぞ!」
「喰らえ・・・!『救いは来たとさ。』。」
圧縮された高密度の霧からは黒く禍々しい圧を感じる。抗えない死の圧と見えることがない暗闇。
「ここまで差があるのか・・・ッ!」
ポン
「あぁいつかはここまで行けるよ崇城君。」
肩に手を置く人物が言う。
「福田先生!」
「遅くなった急に千瞳君が飛び立つから焦ったよ。」
「まずはこれから対処しようか、『定義・空間の隔たり』黒い霧。」
迫り来る霧の塊がその場で霧散する。
「なんだ!?空間操作?」
「次は君だね姿が見えなくても、そこにいるなら関係ない。」
「『定義・意識の状態』気絶。」
福田先生がそう言い放つと徐々に霧が晴れ始める。
「何が、起こった?」
窓の外を見るとあの男が白目を向いて倒れていた。
「千瞳君拘束お願い。」
崇城は福田先生の文字通り次元の違う能力に驚く。
「チート級だ・・・。」
「チート級だけどね、脳へ負担が凄まじいからそんな便利なモノでもないよ。」
「お婆さんはこっちに来る途中で合流した。まだまだ来るよ刺客は。」
崇城は自身の力の無さに自信を失うのであった。
To Be Continued




