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プロローグ

 ある日の早朝、女の子が倒れていたから俺は急いで駆け寄り、


「大丈夫か」


 と呼び掛けたら返ってきた言葉が、


「お腹が空きました…………」


 などというものだった。


 そうして今は、俺が作った簡単な食事を少女が頬張る様を眺めている。


「はむっはむっはむっはむ……っ!」


 ほんとうにお腹が空いていたのだろう、彼女は脇目も振らずに一心不乱に食事に勤しんでいる。彼女の着ている白いローブに汁が飛んで滲んでも、一向にお構いなしだった。


「そんなに急いで食うと──」


「うっ!?」


 俺が忠告を言い終える前に、彼女が食事を喉に詰まらせた。


「ほら、水だ」


「んっ……ゴクン……ゴクン…………えへへ、ありがとうございます」


「大したことじゃないさ」


 そう、本当に大したことではなかった。俺はただ、誰でも作れるご飯を作って、水を差し出したというだけだ。


 たったそれだけのことで、それでも、心のどこかが柔らかく緩むのを止められない自分がいた。


 自分のような人間にも、人の役に立つようなことがまだ出来たのだな、という自虐混ざりのものではあったが。


「いいえ……本当にありがとうございます。シンイチさん」


 そんな俺の心中はお構い無しに、彼女は満面の笑みを浮かべて、改めて心からの感謝を表し、俺の名前を呼んだのだった。






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