1/10
プロローグ
ある日の早朝、女の子が倒れていたから俺は急いで駆け寄り、
「大丈夫か」
と呼び掛けたら返ってきた言葉が、
「お腹が空きました…………」
などというものだった。
そうして今は、俺が作った簡単な食事を少女が頬張る様を眺めている。
「はむっはむっはむっはむ……っ!」
ほんとうにお腹が空いていたのだろう、彼女は脇目も振らずに一心不乱に食事に勤しんでいる。彼女の着ている白いローブに汁が飛んで滲んでも、一向にお構いなしだった。
「そんなに急いで食うと──」
「うっ!?」
俺が忠告を言い終える前に、彼女が食事を喉に詰まらせた。
「ほら、水だ」
「んっ……ゴクン……ゴクン…………えへへ、ありがとうございます」
「大したことじゃないさ」
そう、本当に大したことではなかった。俺はただ、誰でも作れるご飯を作って、水を差し出したというだけだ。
たったそれだけのことで、それでも、心のどこかが柔らかく緩むのを止められない自分がいた。
自分のような人間にも、人の役に立つようなことがまだ出来たのだな、という自虐混ざりのものではあったが。
「いいえ……本当にありがとうございます。シンイチさん」
そんな俺の心中はお構い無しに、彼女は満面の笑みを浮かべて、改めて心からの感謝を表し、俺の名前を呼んだのだった。




