第31話 感じる視線
ある店で買い物をしていると、強い力の気配を感じた。
上層に行き始め、視線を感じるようになってから、茜は自分を中心に体の中にある魔力を出して力を感知できるようにしていた。
これまでも力の強い相手が近づいてきたらそれで逃げるようにしていたのだ。
いつもならクロアが見られているのに、今日は自分が見られているような気がした。
「クロア、今までで一番強い力を感じる。近づいてこないけどこっちを見てる。」
クロアは感じることが出来なかったが、茜が感じるというものを否定することは無かった。
茜がどうやってそれを感じているかを知っているために、自分の感覚よりも茜の言っていることの方が正しいと分かっているからだ。
「何処からだい?」
「ここから1キロ先の店の物陰。」
クロアは一つ頷き、気付かれないように影を伸ばしてその存在を確かめた。
その存在が何か分かったクロアは顔色を変えた。
「・・・まずい。すぐに帰るぞ。」
クロアが影のゲートを造りその中に入った。
そして、蒼たちの居る店に帰った。
「どうしたの?」
部屋に入った瞬間、蒼が聞いてきた。
「・・・ルシファーだと思う。」
「気づいていたのかい。・・・でも、まぁ、様子がおかしかったけどね。」
クロアの言葉に首を傾げる三人にクロアは苦笑し、話し始めた。
「私はしばらく神界にいたのだけれど、その前に魔界にいたんだ。そのときにルシファーと知り合う機会があってね、城に招待されたんだ。その時に酔ってしまって城にあるラム酒を全て盗んでしまったんだ。それでルシファーは怒って私を見ればすぐに殺しにかかるようになったという訳だよ。・・・なのに今日は私の前に姿も現さなかった。おかしいだろう?」
クロアの話を聞いて茜も蒼も何も言えなかった。
ジブリールだけが笑っていた。
「ははははっ。ルシファー相手にそんなことするのおまえぐらいだよ。ルシファー怒らせて生きているってすごいね。」
笑いすぎておなかが痛くなったジブリールはしゃがみ込んでいる。
「私も若かったんだ。今では無茶をしたと思ってるよ。」
「ねぇ、クロア。まだ、ダメ?」
茜が上目づかいで言うと、クロアが一瞬たじろいだ。
蒼がクロアを睨むとクロアは1つ咳払いをした。
「・・・いいだろう。流石に蒼やジブリールは無理だが。」
「いいの?」
本当に許可がもらえるとは思っていなかった茜はもう一度聞いた。
「あぁ。今晩行くかい?」
そして返ってきた答えも肯定。茜は嬉しそうに頷いた。




