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03.相談の話になったけれど


 ティーマパニア様は自分の巫女や(かんなぎ)を選ぶときの判断基準というか、ものさしを決めたかったらしい。


 友達としての資格で相談に乗ったけれど、あたしとしては無難な方向に話を持っていく手伝いは出来たんじゃないかと思う。


「ウィンちゃんに手伝ってもらったけれど、この子の周りの子たちには、ティーマパニアの巫女は居そうなのかしら?」


 アシマーヴィア様が何気なく問う。


 あたしの周りに『時神の巫女』が出現する可能性か。


 べつに誰かが巫女になったとしても、あたしとしては何も変わらないのだけれど。


「……いまのところ、ウィンの周囲にはめぼしいひとはいません……」


「そうなのね~」


 アシマーヴィア様がそう応えたあと、じっとソフィエンタの方を見る。


 気が付けばティーマパニア様も同じようにソフィエンタに視線を向けていた。


 何かあるんだろうか。


「アシマーヴィアとティーマパニアが言いたいことは分かりますよ。でも決めるのはあたしでは無いので」


 そう言ってソフィエンタは肩をすくめる。


「どうしたんですか?」


 あたしが女神たちに訊くと、ソフィエンタは微笑む。


「ううん。大したことじゃ無いけれど、ウィンの仲間内に巫女候補になりそうな子が一人いるかなって思っただけよ」


「巫女?」


「ええ。あたしの巫女じゃ無いけど、知り合いの女神の巫女ね。ふと思っただけだから気にしないで」


「分かったわ。でも――」


 あたしとしては友達とかが巫女に選ばれて、本人が望まない人生を選ぶようなことは避けて欲しいわけで。


「大丈夫よウィン。あたしがその辺は注意します。もうちょっとあなたの本体さまを信じなさい」


「うん」


 ソフィエンタが気を付けると言っている以上、奇妙なことにはならないだろう。


 そこまで話して教皇さまの件での相談をしようと思ったのだけれど、あたしとしては気になったことがあった。




「ところでティーマパニア様、巫女や覡を選ぶのに迷ったなら、時の神さまの権能で未来を見に行くことは出来なかったのですか?」


「……可能でしたが、かくていしていませんでした……」


 それってどういうことだろうか。


 あたしが戸惑っていると、ティーマパニア様が微笑んだような気がする。


 いや、いつものように表情は変わっていないけれども。


「……あらゆる人を、巫女や覡にえらぶ可能性がみえてしまって、えらびきれませんでした……」


「そうだったんですね……。未来が見えるのも大変なんですね」


「……ウィンは時魔法をおぼえることができます……だからきをつけてほしいですが、時魔法でみた未来はかくていしているとはかぎりません……」


「分かりました。そういう魔法を覚えたら気を付けることにします」


 あたしの返事にティーマパニア様は無表情だったけれど、満足そうに頷いた。


 ティーマパニア様の相談の話は片付いた。


 その後はあたしの相談の話になった。


 でもそちらは、あっという間に片付いた。


「――ということで、あたしは伝統医療の勉強を市井の中で進めるってことにしたいんだけれど」


「いいと思うわよ。教皇くんも喜んでくれるんじゃないかしら」


「問題無いと思うわ~」


「……だいじょうぶです、ステータスをみてもらえばいいでしょう……」


 そういうことなら問題無いか。


 そうなると称号の『モフの巫女 (仮)』の件なんだけれど。


「教皇くんがプライベートで参加してる、ランキングの実績で選ばれるように進言すればいいと思うわ」


 ああ、何かあったなあ。


 迷いペットを探してポイントを集めて、ランキング化する仕組みだ。


 『モフモフ探索者ランキング』だったろうか。


「ウィンちゃんはあくまでも仮の称号だし、ランキング参加者を条件にって話せばいいんじゃないかしら~」


「……その条件で称号のうむがきまるようになる可能性がたかいです……」


「あ、そうします」


 いいことを教わったぞ。


 称号に関して今までで一番うれしい情報かもしれないな。


 あたしが思わず鼻歌を歌いそうな気分になっていると、ソフィエンタが苦笑していた。


 相談をした後は改めてティーマパニア様からお礼を言われて、あたしは現実に帰還した。


 寮の自室に戻ると、ローズマリーの鉢植えに向かって座っている自分に気が付く。


「さて、方針も決まったし、日課のトレーニングを片付けますか」


 あたしはそう独り言ちて鼻歌を歌いつつ、トレーニングを片付けた。


 その後は料理史の本を取り出して読み始め、眠くなったら寝た。




 一夜明けて二月第二週の二日目になる。


 その日の授業を受けて放課後になり、あたしは『敢然たる詩ライム・オブ・ブレイブリー』のみんなと鍛錬のために王都南ダンジョンに出かけた。


 いつもの流れで王城まで身体強化と気配遮断をして駆け、魔道具を使ってダンジョンの地上の街に転移する。


 地上からは魔道具で前回到達した第二十二階層の入り口まで移動した。


 レノックス様があたし達に入り口前で小休止することを告げた。


「それでレノ、今日の予定だと、ここと次の階層を道沿いに進むんだよな?」


「そうだが、何か問題でもあるだろうか?」


 マジックバッグから取り出されたキャンプチェアに座って、あたし達は休憩している。


 休憩と言っても疲れる要素はここまで無いのだけれど、攻略のための最終確認だと考えることにして自分自身はもちろん、みんなの装備とかもそれとなく確認した。


 そんな中カリオがレノックス様に何かを訊いている。


 懸念があるとすれば、あたしも気になる気配があるんだけれども。


「ああ。この階層だけど、ここから一キールほど進んだあたりの上空に、妙な気配がある。空からの襲撃に気を付ける必要があるみたいだな」


 どうやらカリオとあたしは同じ気配が気になっていたみたいだ。


「上空ですの?」


「たぶんあれ、ブラッディホークね。鷹の魔獣よ」


 魔獣の気配を読んで、何となく移動の仕方で正体の見当をつける。


 というか、何気なく上空って言ったけれど、このダンジョンの空がどのくらいの高さまであるのかがちょっと分からない。


 完全に自然環境と同じってことは無いと思うのだけれど。


「大きさはどのくらいだい?」


「ええと……、資料だと翼を広げた横幅が三ミータ強くらいよね。普通の鳥の鷹よりやや大きいくらいかしら」


『ふーん』


 馬車サイズみたいなバカな大きさは無いけれど、それでも魔力を込めた爪の鋭さが加わると、鹿や馬くらいは普通に餌食になる。


 現実の鷹は一撃必殺で狩るスタイルが普通だけど、魔獣の場合はヒットアンドアウェイで延々と狙ってくることもある。


 ただし基本戦術は鳥も魔獣もおなじで、上空からの心理的死角で初撃を取りに行くというもの。


 その辺りの説明をみんなにしておいた。


「あまり大きくないってのは、森の中で狩りをするからだろ?」


「なかなか仕留めがいがありそうですわ!」


「空にいるのか。遠距離攻撃があると有効そうだね」


「確かにな。キャリルが雷陣を発動して雷撃を放つか、オレが神斬(しんざん)を放って落下中を斬るか」


 やっぱりどうやって対処するかの話になるよね、あたし達は鍛錬で来ているんだし。


 ただ、この森林と山のエリアは、そろそろリズムというか特徴みたいなものが分かってきた気がする。


「他の魔獣もそうだけれど、先手や奇襲を食らわなければあたし達ならたぶん何とでもなるわ。それよりも面倒なのが、おこぼれ狙いで寄って来た他の魔獣への対処よね」


『あー』


 あたし達は小休止のあいだにそんな話をしていた。


 個人的には上空の魔獣がおなじ場所にいる理由が思いつかなくて、引っ掛かっていたのだけれども。


 それでもカリオもあたしも認識は出来ているし、現状では問題では無いと判断した。



挿絵(By みてみん)

アシマーヴィア イメージ画 (aipictors使用)




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