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05.法則とかは分からない


 一夜明けて地曜日になり、二月の第二週に入った。


 いつものように起き出して朝食を済ませ、クラスに行きみんなに挨拶をする。


 闇曜日に城壁に上りに行った話をクラスメイトとしていると、ディナ先生が来て朝のホームルームになる。


 先生からは連絡事項の話が続いたけれど、その中の一つで興味深い話があった。


「――そして、今週の火曜日、あさっての放課後に、大講堂で特別講義が行われます。担当はマーヴィン先生とウィラー先生で、内容は『使い魔の習得とその可能性について』とのことですが、はっきり言いましょう。ワタシとしては皆さん全員に参加を強くおすすめします」


 ディナ先生によると、教員の打合せでウィラー先生の使い魔を見せてもらったそうだ。


 これが非常に印象に残っているという話だった。


「使い魔って何ですか? 魔獣みたいなものですか?」


 魔法が好きな女子が手を上げて先生に質問した。


「使い魔を呼び出した人の魔力で作られた、魔法生物に近い存在です。正確には、ゴーレムよりは疑似的な精神生命体という話でした」


『ふーん』


 クラスのみんなは、魔法に関心が強い子を除けば、そこまではそれ程食いつきは良くなかった。


 だが、ディナ先生の言葉で態度を変える生徒が多く出る。


「加えて現段階で分かっているのは、呼び出した本人の適性や好みに合った動物の姿をしています。そして使い魔は、人間の言葉で喋ります」


『…………』


 ディナ先生の言葉があたし達に届いてから一拍おいて、みんなは叫んだ。


『え~~っ?!』


「先生、それって動物は選べるのか知りたいんだぜ?」


 マクスが挙手して問うと、同じことを疑問に思っていたのか、みんなはだまり込む。


 ディナ先生の言葉を待つみんなは、真剣な視線を向けている。


 まあ、あたしを含め、『闇神の狩庭(あんじんのかりにわ)』を使っているクラスメイトは、その辺りの事情は知っていて大人しくしてるのだけれども。


「基本的には選べないようです。いちど出てきた使い魔を引っ込めて、もう一度呼び出せば別の動物の姿で出てくる可能性はあるそうです」


 ディナ先生は、使い魔に名前を付ければ固定されることや、それを解除するには自分の記憶を闇魔法でいじる必要があることなどを話していた。


「先生、ウィラー先生とマーヴィン先生が担当するって言ってましたけれど、二人はどんな動物の姿をした使い魔だったのですか?」


 それはちょっと興味があるかも知れない。


 今のところどういう姿をしているか、法則とかは分からないんだよな。


「マーヴィン先生は細身で中型のサイトハウンドで、イヌ好きの先生たちが大騒ぎしていましたね。ウィラー先生はカササギでした」


『おお~』


 細身の狩猟犬と、カラスに似た白黒ツートンの鳥か。


 本当に法則とかよく分からないな。


 イヌの使い魔といえば、プリシラの使い魔がビーグル犬の姿をしている。


 名前はフリックだったとおもう。


 鳥はスウィッシュがチョウゲンボウだし、キャリルがソアという名の白いハト。


 アルラ姉さんがブリージーと名付けた白いフクロウで、ディアーナがフリットと名付けたツバメだったはず。


 ジェイクもミミズクだったかな。


 そうしてみると、鳥の使い魔が出やすいんだろうか。


 ナゾだけど。


「カササギか、王国だと縁起が悪い鳥だったか?」


「ええと、地域によるんじゃないかい? 神々の使いだとか、賢い鳥って伝わる土地もあるよ」


「サイトハウンドか、カッコイイなー。寮だとイヌ飼えないし、使い魔でイヌが出るならチャレンジしたいな」


『おれもだ』


 男子が何やら声を上げ始めたので、ディナ先生が苦笑いしながら窘めて、次の連絡に話題を変えた。




 午前の授業を受けてお昼になり、実習班のみんなと昼食を食べた。


 その後あたしとキャリルはみんなと別れて、『敢然たる詩ライム・オブ・ブレイブリー』の打合せに向かった。


 いつものように魔法の実習室に向かうと、レノックス様とコウとカリオは先に着いていた。


「ごめん、お待たせ」


「お待たせしましたの」


 あたしとキャリルの言葉にみんなは大丈夫だと言ってくれた。


 『敢然たる詩』としての打合せは直ぐに済んだ。


 先週は王都南ダンジョンに行っていないので、今週はダンジョンに行こうということになった。


「それで結局、『魔力暴走の汎用的対処法の研究』は、パーティーとしての参加希望は特に申し出なくていいな?」


「不参加でいい奴手を上げてー」


 レノックス様の言葉の後にカリオが仕切ると、全員手を挙げた。


「打合せが終わっちゃったねえ」


「話が早いのはいい事だと思うがな」


「それより俺、使い魔の話が気になるんだけど?」


 カリオの言葉にあたし達は頷く。


 今日の昼食のときに、食堂では周りの生徒はみんな使い魔の話をしていた。


 たぶん学院全体で生徒に連絡がされたんだろう。


「じつは前にニナがジェイク先輩とアイリス先輩に協力してもらって、使い魔を出すための条件を試してたのよね」


「それはオレも初耳だな」


「あら、意外でしたわ。レノなら知っているかと思っておりましたが」


「学院内のことと言っても、何でも把握している訳じゃあ無いな」


 キャリルの言葉にレノは肩をすくめる。


「ジェイク先輩たちは成功したのかウィン?」


「ええ。確かジェイク先輩がミミズクの姿をした使い魔で、アイリス先輩が白いテンの姿をした人形みたいな使い魔だったわね」


『へー』


 その後もあたし達は、というか男子メンバーは使い魔の話で盛り上がっていた。


 昼休みも終わるころになってみんなで引き上げるときに、あたしはレノックス様から声を掛けられた。


「ウィン、『勉強会』の話は我が家で聞かせてもらった。手間をかけた」


「あ、全然気にしないで。あまり好き勝手にしてると怒られそうだけれど、あたしはあたしの理由で動いただけだから」


「そう言ってくれると助かる。ときに、オレの家とは直接関係無いのだが、叔父上が興味を持ったらしい」


 何の話だろうかそれは。


 あたしとしては反射的に面倒ごとの予感がした。


「ええと、光栄なのかしらそれは?」


「ふむ。オレがどうこう言える話ではない。だがそうだな……。あの場にいたという男爵や侯爵と『同じ意味』で、お前に興味を持ったそうだ」


 まじかー――


 貴族って面倒すぎるイメージしか無いんだけど。


 べつにあのレベルまで贅沢して生きる人生は望んで無いんですよ。


 ああでも、領地が無い貴族ならギリ、でも面倒そうだよね。


「……なんでそうなるのかしら?」


「オレに訊かれても知らんな。兄上から聞いた話だから確かだろうと思う。覚悟するなり、情報を集めるなり、何か考えておいてくれ」


 レノックス様としては情報をくれた立場だし、彼にどうこう言っても仕方がない話か。


「分かったわ、参考にする。といってもデイブに相談するくらいしか思いつかないわ」


「それでいいんじゃないのか? ウィンの父方の祖父の家は騎士だからな」


 そうなんだよね。


 ブルースお爺ちゃん達は、場合によっては貴族からの圧で迷惑をかけそうだし。


 あたしとしては色々と心配になってきたけれど、今すぐどうにか出来る話では無いと考えて頭の中にメモをした。




 午後の授業を受けて放課後になる。


 あたしはいつものメンバーで部活棟の前まで移動した。


 そこからあたしとニナとディアーナは附属農場に向かう。


 道すがら、あたしはニナからお願いをされた。


「それでじゃ、今回からそろそろ精霊魔法の特別講義も次の段階に入るのじゃ」


「次の段階か。前に言っていた説明だと、四段階あるのよね?」


 ニナが説明したのは『環境魔力中の精霊の感知』、『精霊のイメージ形成と出現』、『精霊に環境魔力を扱わせる指示』、『精霊に魔法を使わせる指示』だ。


「うむ。前回までは第一段階の復習がメインだったのじゃ。そして今回から第二段階の指導を行うのじゃ」


「それは分かったけれど、お願いって?」


 あたしが問うとニナは足を止め、あたしに向き直る。


「第二段階から、魔力暴走が発生するのじゃ。妾も注意しているし、いざというときは直ぐに対応するのじゃ」


「ええ」


「それでもウィンが危険だと判断したときは、割って入って欲しいのじゃ」


 ニナはいつもよりは硬い表情でそう告げた。


 具体的にどうすればいいのかは確認したいけれど、あたしの答えは決まっている。


「分かったわ」


 あたしはニナにそう告げて頷いた。



挿絵(By みてみん)

アイリス イメージ画 (aipictors使用)




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