さよなら
パチ…パチ、パチ――誰からともなく始まった拍手は、女性達を我に返らせ、その場に居た全員が万千に向け拍手していた。
それはとても力強く、発した言葉が聞こえなくなるほど大きくなった。
いつまでも止むことの無い拍手と、その中心に当然の様に居る万千に、私は言いようのない感覚に陥り、居ても立っても居られずクルマを降りた。
私を見るや否や拍手は収まり、皆が私に注目した。
私と万千の関係は、彼女等にとっては疎ましく、私は目の敵の様な存在だった。
そんな私が、大郷司家のクルマから降りて来たのだから、手も止まるだろう。
「万千、どうやら私はもう必要ないみたいね。これだけの人数が居れば心細くもない。私、もう行くわ――あぁそれと、もし貴女がこの国を治めると言うのなら、あれはどうにかして欲しいわ、『ライスカレー』。あれは高過ぎるわ。貴女の権限で安くしてちょうだい。じゃ、よろしく」
「おとめ…。わたくしは、魔法などという戯言を認めてはいないわ。ましてこの国に、デモクラシーに魔女は必要ない。貴女が魔女の力を使うというのなら、それはわたくしに弓引くという事。その時には貴女を――」
「否定はしないわ。易々と信じられるものでもない――唯、私は私の為に魔法を使う。もし、それを阻むというのなら、そのときは相手になるわ。万千」
万千は私が魔女という事を知っていた。
しかし、それでも万千は私をここへ連れて来た。
魔女である私を――。
「………」
「………」
彼女の瞳は今まで見たことの無いもので、それは私の心をチクリと刺し、何か靄の様なものを残した。
『さようなら、万千』。
私は、万千との視線を断ち切りその場を後にした。
『女性街』へ向かう為、夜音を助けに行く為に――。
――あれから随分経つが、私の体に異常は見られない。
それは夜音が魔法を使っていないということだろう。もし魔法を使っていたら、疲れや立ち眩み位しそうなものだ。
ということは、夜音はまだ捕まったままサーカスに居るに違いない。
女性街――。こんなに早くまた来ることになるとは…。ここには『オズ』への手掛かりがあるかもしれない。
出来ればその為に来たかった。しかし、今はそれどころではなかった。




